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16、開店中〜スーツ来店〜

この作品はフィクションです。


「はいどうも〜。ありがとう〜。」


翌日。営業スマイルで業者を見送って、私は棚にタオルを並べ始めた。


タオルが売れて出来た隙間には、結局タオルを並べることにした。だって、それが一番普通でしょ?。出ていったものと、同じものを、補充する。これ、基本。


………考えるのがめんどくさかったからとか、そんな理由じゃないからね?






とにかく。


タオルを並べ終えて、再び見映えのよくなった棚に満足すると、私はレジカウンターの中に戻った。そして、今日のおやつを取り出す。今日のおやつは塩ドーナツ。


…また塩入りかよ、って、思われたかもしれないが、それは仕方がない。好きなんだから。


塩が入ることによって、甘さが引き立つ。これこそ、ソルトマジック!塩と砂糖の背反するコラボレーション!


あれね。性格が真逆で普段はいがみあったり反発しあってる二人が、いざとなったら抜群のコンビネーションを発揮する、みたいな感じね。


名前は何がいいかしら…。…そのまんまだけど、佐藤、と………、塩原?もしくは塩田。設定的にベタなのは刑事のコンビかしらね。


佐藤が大雑把で豪快。細かいことは気にしないタイプで、神経質な塩田は、それが気に入らなくていちいち注意する。それを佐藤は鬱陶しく思っているんだけど、いざという時には、塩田の細かい観察眼と、佐藤の思いきった行動力が遺憾なく発揮され、数多の難事件を解決する。


まさに、調味署の奇跡を呼ぶ二人!











…などと、人物設定及び世界設定及び相関図を、手元のメモ帳に書いていたときだった。その、人の気配を感じたのは。


客だろうか?それとも、後輩くん?


う〜ん、レジカウンターの中から外が見えるようにリフォームするべきだろうか。窓かなんかつけて。…でも、お金かかるよなぁ…。工事の発注もめんどくさそうだし…。


などと考えているうちに、その人物は店内へと入ってきていた。




「………。」




またもやタイプの違う人物が現れた。


スーツ姿の30〜40代くらいの男性。一見、雑貨屋に来るようなタイプの見た目ではない。


が、ここは雑貨屋は雑貨屋でも、妄想雑貨屋。妄想は、見た目に惑わされてはならぬもの。この堅苦しいスーツ姿の中に、一体どんな妄想が潜んでいるのか。蓋が開くまでわからぬものなのだ。




「……………。」




店内をゆっくり見渡しながら奥へと入ってきた男性。そして、


「…すいません。」

「あ、は〜い。いらっしゃいませ〜。何かお探しですか〜?」


営業スマイル全開の私に、その男性は、


それは私に対する挑戦状か?


と、思えるような一言を放ったのだった。





















「海は、ありますか?」



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