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13、開店中〜タオルお買い上げ〜

この作品はフィクションです。


「え?」


タオルの壁の向こう側から、彼の声が聞こえてくる。元々レジカウンターが狭いのも問題ではあるのだが、雑貨屋でこんな業者みたいな量を買われるとは思ってもいないのだから、仕方がない。


「あ、いや、その…。…お客さんの買い物に口出しするつもりはないんだけど………、どうするの?こんなに。」


営業トーンもどこへやら。すっかり素の口調に戻った私。それくらい驚いてしまったのだから仕方がない。


「どうするって…、使うんですけど。」


何を聞いてるんだ、的な口調で言い返された。いや、使うのはわかるし、それはそうなんだけどさ。


「いや、その………、量。」


私が気になっているのは量の方だ。


「これくらいないと巻けないんですよ。」


そうか…。まぁ、巻かなきゃいけないのなら仕方がない。人それぞれ、用途や事情は様々あるわけだし、迂闊に踏み込んだ、私の方が悪かったんだろうな、この場合は。





















……………………は?


「…巻く?」


当然の疑問が口をついた。


「はい。僕って、人よりもちょっと、体が大きいじゃないですか。」


ちょっとどころじゃない気もするが…。


「だから、巻こうと思ったら、予備も含めて結構な量が必要なんですよ。」

「………え、巻く、って…自分、を?」

「はい。」


当たり前じゃないですか。的なテンションで言い返された。


「そ、そう…。」


そんな言い方をされたら、それ以上は聞き返せない。とりあえず、彼自身には確固たるビジョンがあるみたいだから、あまり土足で踏み込むのも野暮というものだろう。




しかし……………巻くって………


大量のバスタオルを大型の袋に詰め込みながら、納得しつつも納得できない。そんな、微妙な感情の波に苛まれている私がいた。…ちょっと、詩的表現、だったかな?











「はい。お会計、15000円になります〜。」


一万円札1枚と、千円札5枚。きっちり受け取って、ノミクジラキーホルダーをちょこんと乗せた、バスタオルでぎちぎちの袋を渡す。


「どうも。」


荷物を抱えて、さらに息苦しそうな声で一言言うと、彼は動きづらそうに店を出ていった。






……………。






「…痩せようとは思わないのかな。」


彼の姿が完全に店から消えたのを確認して、ポツリと呟く。


いや、わかるのよ。痩せたい、痩せよう、って思うのと、実際に痩せるのは、難易度が遥かに違うってのは。


ただ、彼の場合は、あまりにも………ね。


そんなことを考えながら、私は塩キャラメルを口に放り込んだ。



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