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11、開店中〜タオル〜

この作品はフィクションです。


「は〜い、なんでしょうか?」


若干の緊張感を押し隠し、営業ボイスで対応する。


「え〜と。」


鼻がつまったような、というか、喉が脂肪で圧迫されているような、というか…、なんと言えばいいのか。とにかく、ストレートに発声が出来ていないような感じの声。あまり、気持ちのいい声ではない。


「あれ、ありますか。タオル。」

「タオル?」





















意外だった。


超意外だった。


見た目からして、何かよくわからない二次元的専門用語でも言われるんじゃないかと思っていたのだけれど、それが、まさかのタオル。


正直、タオルなら雑貨店じゃなくて寝具店に行った方がいいんじゃないか、と、思ったけど。


ここは妄想の同志の集いし場所。その辺りにも、抜かりはない。




「タオルなら、あちらの棚に並んでますよ〜。」


淡い色彩に占拠されている一画を指し示してそう伝える。


…それにしても…、普通に売ってるタオルって、何故か色が薄い、っていうか、ぼんやりしてるのが多いわよね。色がバシッ!って決まってるのは、カラータオルって呼ばれてて別扱いみたいになってるし。…私の偏見なのかな?




「あ、ども。」


ぺこりと一礼して、棚の方へと、のたのた歩いていく彼。見るからに体が重そうだ。




………。




まさか、その場で包装破いて汗拭きだすんじゃないだろうな。


もし金も払わずにそんなことしようもんなら、怒るぞ。仮に妄想の同志だったとしても怒るぞ。自分で自分に引くぐらい怒るぞ。




緊張感を感じているためか、塩キャラメルも全くしょっぱさを感じない。気がついたら、三個まとめて口の中に放り込んでいた。


横目で、注意深く、彼の様子を監視する。




「……………。」




彼は棚の前に立っている。両手は、下に下ろしたまま。…とりあえず、破る気配はなさそうだ。


棚の上から下まで。じっくり吟味しているようだ。なんだろう。妄想に適した色や大きさというものがあるのだろうか。


妄想には、こだわりが現れる。妄想には制限がないから、全て自分の理想通りのものを産み出すことが出来る。だから、そこにはその人のこだわりが色濃く現れるものなのだ。


その媒介となるべきアイテムをじっくりと吟味するのは、非常に真っ当な行為と言える。言えるのだが…、




「……………。」




そんなにタオルを眺め続けていて、一体何を妄想しようとしているのだろう、と、疑問に思うのも、また事実だった。


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