10、開店中〜男性来訪〜
この作品はフィクションです。
翌日。
「ん〜。今日も平和で何より何より。」
うららかな午後のひとときを、私は塩キャラメルと共に過ごしていた。昨日と口にしているものが変わっただけじゃないか、というツッコミは、この際無視する。
塩キャラメルの、しょっぱさの絡まった甘さ。それを、ゆっくりと口の中で転がしながら、私は店内を見渡した。
昨日と変わらない、色とりどり、形様々、用途色々な雑貨たちが、ところ狭しと並べられている。
これら全てが、誰かの妄想の一助となり、輝かしき妄想ライフが拡がっていく。
その素晴らしさを想像すると、
「………んふふふふ〜。」
自然と笑い声が零れる。これが、理想を実現させていく充実感、というものだろうか。
とはいえ、
店内は今日も平和。それはつまり、お客さんがいないことを意味する。
う〜ん、やっぱり妄想の同志は内気な子が多いから、こっちから手を引いてあげないと、こういう場所には来れないのかな。
ホームページでも作るか。私には知識がないから後輩くんに任せることになるけど。
ん?
となると、なんか、回線引かなきゃダメなのかな?今は光でネットに繋げられる時代らしいし、引かなくても出来るのかな?でも結局、何かしらの契約的なものは必要なのかな?
「う〜ん。」
仕方ない。全部後輩くんに聞いてみよう。
私がそう決意した、その数秒後。
「ん?」
入り口に、なにやら人の気配。後輩くんかな。それとも昨日の彼女がまた来てくれたとか?
さぁどっちだ!?
選択肢を勝手に二択にして入り口を見守っていると、
「……………。」
入り口から入ってきたのは、第3の選択肢。つまり、それ以外の人物、だった。
しかも、これまた、「いかにも」、な風貌の男性。
小太り。
眼鏡。
汗かき。
何かのキャラクターTシャツ。
リュックサック。
古ぼけたジーパンに古ぼけたスニーカー。
………典型的な二次元的趣味人、って感じ。
いや、偏見が混じってるのは重々承知ではあるけどね。あるけどさ。
一般人がイメージする、いわゆるところの、二次元的趣味人、って、こんなような風貌だと思うのよ、多分。
…でも、それが普通に目の前に現れたら、やっぱりちょっと、おぉ、ってなるわね…。
そんなことを考えながら彼の動向を横目で探っていると、
「あ、すいません。」
声をかけられた。妄想の同志にしては積極的なタイプか?
一体、何を言うつもりなのだろう。…少々緊張する。




