表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/30

異世界召喚、クラス単位

 クラス単位での異世界召喚物の人気作品から幾つか例にあげてみましょう。

 クラス単位だと、元のクラスでヒロインがいたり、イケメン万能なやつや主人公につっかかる奴がいるのがお約束ですかね。


 最初にあげるくせに、王道ではあれどテンプレではない物語を一つ。

 この物語を読んで最初に思ったことは、「この作品は綺麗だ」ですね。

 あらすじを紹介するととても単純、異世界トリップしたクラスメイトの中の一人が元の世界に戻るために世界を駆け巡ってラスボスと対決し、そして戻るまでのお話です。

 ちょうど100話で完結しており、まあ実際は後書き1話を含めて100話となりましょうか。1話目から最終話を想定しているのが各部分にはられた伏線や構成から読み取れます。


 トリップでありがちな、異世界の人々からの賞賛も、ライバルとの激突や、主人公の理不尽な扱いなどもありません。主人公は最強ではないが、唯一無二です。

 そこにあるのは主人公の確固たる信念と目的であり、異世界召喚に浮き足立って異世界を満喫するクラスメイトとは裏腹に、一人世界の謎や自分たちが召喚された理由を探し求めるストイックな主人公がカッコいいです。

 異世界を一つの世界として見続けるクラスメイトも、その愚直な姿勢に感化されて時には主人公に協力したり、一人で背負うことはないと止めてくれます。そういった周りの適度な距離感が、最終決戦の時のカッコ良さに繋がっているとも言えます。ハーレムというにはやや異なる女子生徒の立ち位置も、キャラを記号化するのではなくしっかりと物語に噛ませているのが凄いですね。



 そこに挟まるクラスメイトの裏切りや、国同士の戦争が新たな事実を明らかにしていきます。

 ただ残念なのが、主人公が元の世界に戻るために異世界の人に興味を示さないことで、異世界の人や国家がどこかゲームのように無機質な印象を与えるところでしょうか。結末的にはそれさえも意識して書かれているのかもしれませんが。まああまりネタバレするのもよくないので、その理由の予想などを説明するのは控えておきましょう。

 ゲームシステムやトリップ、スキルなどを単なる主人公たちの武器としてではなく、物語のパーツとして組み込んだ鮮やかな結末に、無駄のないストーリー展開は見るものを引き込みます。

 ただのお約束をお約束で終わらせない、物語を完結させるとはどういうことかをわからせてくれる王道の異世界召喚物と言えるでしょう。





 次にクラスごと召喚で紹介するのがこちら。

 この作品は、クラスメイトの中で主人公が酷いいじめを受けているというお約束が使われています。そして、いじめや裏切り、仲間外れの結果として強力な魔物がうじゃうじゃいる場所に一人で取り残されるまでがお約束ですね。

 魔物に囲まれ、無力な主人公はその絶望の中で能力を覚醒させたり、偶然にも敵を倒したり、知恵と勇気でなんとかしたりして、安穏と暮らす同級生たちよりも遥か高みの力を手に入れるというテンプレ展開に突入します。

 そこからはギルドの依頼で周りを驚愕させたり、偶然出会った圧倒的強者を倒したりなどと巻き込まれてもなんだかんだで勝っていくややコメディー要素や、スキルを手に入れては装備がチート級になったりなどの細かいお約束と成長の積み重ねが物語の中盤となりましょうか。

 この展開テンプレの小説はややエタる※ことが多く、最初の爽快感とテンポの良いストーリー展開は楽しくても先が不安なジャンルの一つであります。

 実際この作品も完結しておらず、更新するのかなーと毎度のんびり待っております。





 そして最後に紹介したいのが、おそらくクラスごと召喚されるタイプでも一、二を争う人気のこの作品です。

 テンプレ通りにイケメンで万能型ハイスペックな王道勇者がいる一方で、主人公はありふれた職業で一般人程度のステータスしかありません。

 それでもその職業を工夫して頑張るのかと思いきや、不幸な事故とクラスメイトの嫉妬が重なり、主人公は奈落の底へと落とされます。

 そこからの見事なまでの成り上がりからの主人公最強は、圧倒的爽快感の戦闘へと繋がります。

 そこからはややコミカルな部分も挟みつつも、敵対するものはねじ伏せ、救いたい者は救うと自分の思うがまま、覚悟の赴くままに元の世界を目指して旅をします。

 予想できていてもやはり燃える展開から、周りの嫉妬の反応がうまく描かれており、感情移入して楽しみやすいものとなっています。王道勇者との再開からの、意見の押し付けを実力と結果、周りの反応でだまらせたり、侮っていたクラスメイトを歯牙にも掛けない堂々とした態度で見返すなどのスカッとするイベントの数々は、くるたびに「やっときた!」と叫びたくなります。


 ただ、最初に鬼畜タグをつけたからか、主人公がとにかく周りの意見など聞き入れずゴリ押しの俺様系を期待していた読者にとっては、思春期によるブレや、辛い経験で捨てた人間性を周りの人間に取り戻させられるような展開は、流されたりほだされたりしているように映るようです。

 ブレない主人公じゃなければダメだ、という先入観を持たずに読めば、主人公が周りに影響を与えるのと同時に、主人公もまた影響を与えられているのだという人間性に触れる描写は長所でもあると思うんですよね……。

 物語の趣旨がはっきりしており、安定した更新速度に不安のない作品ですね。

※エタる……未完結のまま放置されること。更新頻度が低いだけならそうではないが、半年以上更新されないまま、作者が別の作品を書き出した場合などはそうだと見てまず間違いないでしょう。一ヶ月以上更新しなかったことがない私にはあまり関係のない話でございます。


作中で紹介している作品で、「わからないけど読んでみたい」というのがございましたら、メッセージでも感想でも言っていただければ教えますよーと宣伝しておきます。


次回は数人の召喚のお約束と、具体的な作品を例にあげていきましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ