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異世界トリップ

 ひゃっはー。やってまいりました、異世界トリップのお約束の時間です。

 何故テンションが張っておるのかと申しますと、この異世界トリップというものは様々なご都合主義やお約束が働くので、紹介する内容も自然と多くなるのでございます。

 だから非公式のゆるキャラとさえ言い難いナシみたいなテンションなのです。




 異世界トリップといえば、定番にしてテンプレのゲーム的要素にスキル。

 ゲーム的要素、というのは、自分のステータスが何らかの形で見えたり、モンスターを倒すと経験値が溜まってレベルアップするという設定のことです。

 それらのお約束が使われる背景には、平和な日本で暮らしていた主人公は急に戦えるはずがないのを、強さだけでも速く引き上げようというものです。

 一年、二年と長い時間をかけたって、その世界で長年鍛えてきた人に勝てるはずもありません。それがレベルが上がるとなれば、偶然でもスキル頼りでも良いからとにかく強いモンスターを倒せばいいのです。

 私のよく知るお約束の一つに、異世界トリップがはるか空から落下しながらで、その途中または副産物として強いモンスターを倒して人外レベルのステータスを得る、という展開があります。


 ああ、忘れていました。異世界トリップは異世界の最初の場所のお約束として、三つあります。


 一つ、気がつくと魔法陣の上で、召喚されたパターン。この場合は召喚者が目の前にいて何らかの説明を述べることがあります。召喚された者から世界について説明されるため、導入部分で楽に説明を入れることができ、なおかつ召喚者の意図を使うことで物語の方向性を決めることも容易になります。一番多いのが「魔王や魔族と戦う勇者」でしょうか。異世界人は強いから、とか、あなたは選ばれた、とかですね。


 二つ、森や草原のど真ん中に一人佇んでいるパターン。比較的物語全体をほのぼのと異世界観光に使いやすい展開です。

 この場合は大抵、直後に魔物に出遭うものです。すると、異世界に行って得た特殊能力が覚醒して敵を倒したり、偶然通りかかった凄腕の人の良い冒険者などに助けられることが多いです。


 そして最後が、上空からの落下です。集団の場合はあまり見ません。大抵一人です。

 落下して大丈夫なのか?という疑問も、何らかの主人公補正で助かることが……って助からなければ話が始まりませんからね。

 この前見た完結済みの異世界転生という名のトリップ小説では、神様によって転生させられた瞬間上空から落下して死んで、チャンスをもう一度与えられていて、非常に笑った覚えがあります。こんにゃくで調べれば出てくるかと。

 少年期スキップは私的にはトリップの派生だと思うのですが、後々転生のお約束で話すとしましょう。


 異世界トリップの理由は幾つかありますが、多いのが「理由がない」または「今は何もわからない」というものがあります。

 一番目の跳び方では、跳び方は召喚者に呼んだで説明されますが、そうでない場合は何らかの跳ぶきっかけというのがあります。

 光に包まれたら、魔法陣が足元に浮かんで、黒い穴に落ちた、リアルなオンラインRPGとしてポイントを割り振った……よくあるのはこのあたりでしょうか。


 主人公を手っ取り早く強くする方法のスキルとレベルにはもう一つあります。

 剣技スキル、鑑定スキル、料理スキル、魔力回復……こういった通常技能の延長線上にあるようなスキルをレベルアップのポイントや行動によって得るパターンです。

 これは後述のお約束と組み合わせることにより、ほのぼの異世界ライフを満喫するためのものとなります。


 異世界トリップで召喚される時は人数が重要な要素となってきます。

 一人、四、五人、一クラスの三つが一番多いでしょうか。


 一人の時は、勇者として召喚した国を離れるかどうかで物語のテンポは大きく変わります。

 国から逃げた場合、身分を隠して異世界で生きていくことになり、泥臭く地味な苦労パートか、いっきに主人公を強くして無双冒険物にもっていくか、が多いでしょう。

 異世界を一人で旅を始めた場合の「テンプレ」に奴隷を買う、というものがあります。異世界のことを知るためとか、裏切らない仲間が欲しいとか、理由は主人公の脳内、または周りの勧誘によって説明されます。いろいろ言いながらも最終的には可愛い女の子の奴隷を買うでしょう。(たまに自分に正直すぎて、周りにヒかれてでも性欲目的で買う人もいますが)まあむさ苦しい男と可愛らしい女の子だったらどっちに側にいて欲しいかと言われると……異世界においては体格や身体能力が強さに直結するとも限らないため、戦闘力重視だから!と男性に走るよりも健全と言えば健全でしょうか。

 しかし主人公は日本の倫理観によって、買った奴隷に家族のように接することで、奴隷に心から感謝されて懐かれるところまでがお約束です。

 ここは異世界でしかできないハーレム要素の一つと言えるでしょう。女性に裏切られる展開は嫌だし、金と身分を盾に横暴なことをする悪役にはなりたくない、けれど心から愛されたいと願う作者そして読者の願望を投影している「なろう」のテンプレ展開の一つです。

 こうして得た奴隷美少女のことも、自分の仲間ということで効くようになったチートで超強化することによって立派に戦闘要員としてのキャラになります。これが、先ほどのレベルアップのポイント制のスキルチートを表すお約束、ということにでもなりましょうか。

 このお約束は無理に改変すると、主人公の人格が常人離れして、胸糞注意となる恐れがあります。人間不信からの奴隷少女の信頼による立ち直りなどを見せた見事な改変もありましたが、ここの改造は慎重にいかねばなりません。どちらにせよ本物の好意が一定量あった方がスムーズで心穏やかに話が進みそうです。


 四、五人または一クラスなどの集団転移、召喚における人気の作品にありがちな展開といえば、「主人公は勇者ではない」ですね。

 クラスまたは召喚された中には、主人公をいじめていた奴や敵視していた奴などの主人公にとって嫌な奴と、イケメンで成績優秀、スポーツ万能のモテモテの男かのどちらかがいることが多いです。クラス単位だと、その両方もしくはほとんどが前者という展開もあります。

 四、五人の時は、前者の場合は異世界という特殊環境を利用して復讐を誓ったりします。

 後者の場合は、一人のお約束と同じように「俺は勇者じゃないんだ。好きにさせてもらう」などと言って城を飛び出します。

 勇者ではない場合、他の召喚された人よりもステータスが低く、時には一般人より弱い時もあります。

 しかし、どちらの場合も、主人公が特殊な環境で覚醒するか、固有スキルを持っているかで、成り上がり系か俺様系に分かれます。

 最終的には主人公が召喚者の中で一、二を争う強さに、またはぶっちぎりの最強になります。



 俺様系、というのは非常に好みの分かれる小説でしょう。

 この小説の特徴は何より爽快感でしょうか。

 主人公は自分のしたいことをしようとし、それを邪魔する相手を圧倒的実力でねじ伏せます。誰にでも敬語を使わないことが多いのも特徴でしょうか。

 話し合いで抗議しようとしたり、情や倫理観などに訴えかけて、人助けに協力しろ、人殺しをするな、と言ってくる同郷の正義漢……先ほど言ったようなイケメン勇者系に自分なりの理屈で反論し、黙らせます。

 黙らせられた側は、

「僕が間違っていたのか?」

「あいつにも一理あるのかもな……」

 と反省したり、主人公を尊敬するようになります。

 正論がいつでも正しいとは限らない、自分の考えを押し付けるのは間違っている、そんな風に言うのです。

 読者はそれを見て、普段の鬱憤を晴らすのです。こんな風に誰にでも臆せずものを言えたら、間違った理論を感情で振りかざす奴らを黙らせられたら、そんな風に現実の自分にない堂々とした姿に憧れたり、爽快感を覚えるのがかの小説と言えるでしょう。


 これは好みが分かれる、と言いましたが、それは同時に叩かれやすい、ということでもあります。まあ叩く内容も時には一理あるというか、間違った意見などないというのが小説の感想に対する思いでしょうか。


 とりあえず、これを嫌う人の意見としては、

「目上の人に対する敬意も持たず、自分勝手に生きようとする主人公がガキすぎる」

「そんな主人公の目上からの説教で改心したり、周りが「凄い男だ。ただ者ではない」とか言って信頼したり尊敬しているのがわけがわからない」

 と言ったところでしょうか。他にもこんな意見もあったような気が。

「偶然得ただけの反則スキルをあたかも自分の実力のように誇示し、威張っているのがムカつく」

 まあ……なんとも言えませんね。


 作者側の意見で言うならば、こういった「俺様系」は、主人公を中心として描くことが多く、三人称にしろ一人称にしろ、周りのキャラの心情描写が難しくなってきます。

 こういう主人公には一度挫折を経験させて、丸くしてみたり、全員から尊敬させるのではなくて、一部から尊敬させるなど、ワンクッションおくことで緩和させられるでしょう。

 主人公自身が一人のキャラに入れ込むのも良いかもしれません。

 何もかも完璧のように見せるのではなく、抜けたところを作ることでややコミカルな雰囲気を出すこともできるでしょう。


 これと対をなすのが一人トリップの非召喚系における巻きこまれ系主人公です。次々と飛び込まざるをえない事件が起きて、その度に苦労しながらも解決してしまうのが鉄板です。

 これらは主人公が受動的であるのが望ましいでしょう。大切なのは仲間だったり、友達だったり、目の前で助けを求める人であったりと目的を持たずに旅をしていて、守れるものを守ろうとする主人公だったりすると、物語としてはスムーズに進みます。

 もっと後ろ向きで、事件が起きるたびに逃げようとして結局巻き込まれるのも面白いですけどね。

 こういった場合で、主人公が圧倒的実力を持ちつつ自信家ならば、「やれやれ系」と揶揄されることもあります。自信家ならば、事件に巻き込まれるのは目立ちたくないからだなどと言って、決して出来ないとは言わないからです。そうして、巻き込まれたあとは「やれやれ」といった風に事件をさくっと解決してしまいます。

 最近はあまり見ないでしょうか。それとも私が見ないだけでしょうか。


 異世界トリップとは、強い主人公の爽快なバトルや胸わき踊る冒険が見たいが、努力パートや深い過去編に関してはじっくり描写されるのが面倒くさいという方に需要があるジャンルですね。主人公には元世界への帰還を望ませたり、元世界でのしがらみを軸とすることで物語の目的を作りやすくできます。そこもVRMMOや異世界転生との違いでしょうか。


 言語などについては、後述の「魔法」の回で話す予定です。

 次回はVRMMOの時と同じく、名前を出さずにこのサイトでの人気作品を参考にしながら、非テンプレとテンプレについて話していこうと思います。

異世界トリップは復讐型、討伐型、冒険型、のんびり暮らし型などいくつもあるのでそれぞれにお約束があって困りますよね。

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