VRMMO、極振りの人気作品
一つのジャンルのお約束を説明した後に、実際に人気作品を取り上げてその魅力と私が苦手とする部分の話をしましょう。
と言っても、実際にその作品の名前を出すわけではございません。そんなことをする許可を得ているわけでもないですし、名指しで批判したいわけでもございませんので。
しかし、説明を聞けばその作品を読んだことがある人なら「ああ!あの作品か!」とわかるように書いていこうと思いますので、ご容赦ください。
極振りについて、それを使った作品を二つほど紹介いたしましょう。
どちらもVRMMO小説の中でもかなりの人気を誇り、未完で現在も連載中の作品です。
一つ目は防御に極振りでしょうか。
これだけ聞いて、「ああ!」となった人はかなり読んでいる方でしょう。
この作品の面白いところは、現実のスキルを絡めてペナルティーのバランスをとっているところでしょうか。ゲームのスキルではありません、現実の超能力です。
多くのVRMMO物で、デスゲームや異世界行きでない限りは死んだときのペナルティーというのは経験値やアイテムなどに関わります。
しかし、スキルを導入することで、スキルとそれにまつわる記憶を失うことをペナルティーとしているところが絶妙な部分ですね。
半分異世界に飛ぶとする設定は、次々と現れるぶっ飛んだ登場人物たちに命を吹き込み、ファンタジー要素を出してくれます。
デスヒールなんていうのも心躍る主人公最強の要素ですね。
私がこの作品のやや苦手な部分は、途中のハーレム中断や、主人公のチートすぎるスキルでしょうか。ただでさえプレイヤースキルが最初からMAXなのに、超能力まで最強で主人公補正がかかっているのです。あまりに強すぎて、戦いの工夫だとか挑むという気概に欠けるところがあるような気がします。
他のVRMMO物でもよくあることですが、主人公が最強になりすぎるとゲーム内というのはマンネリになりがちです。
速い更新の一方で、ラブコメというかイチャイチャしているのが見ていて辛くなったあたりで読むのをやめてしまいましたが、今はどうなっているのでしょうか。
また暇があれば読み進めるのも悪くないかもしれません。
無双系のVRMMO物としては、物語として完結の形がありそうなので良い作品ではあると思います。
イチャイチャしなさすぎても、しすぎても辛いという自分が単に狭量なだけなんです。
この場合は、VRのテンプレである極振りに複数の要素を組み込んで、差別化をはかった、という感じでしょうか。
もう一つが、攻撃力に極振りですね。
これでデスゲームだったら勇気ありすぎだろ!と思うところですが、こちらはデスペナルティーはさほどなく、死に戻り前提の戦いをしております。
プレイヤースキル、ゲームスキル、称号、極振りの三種類の王道をひた走る主人公最強物です。
まあこちらも、上と同じく主人公が強くなりすぎて、ぶっ飛びすぎだろというところはありますが、もともとそういう部分を楽しむVRMMO日記のようなものなので上ほど気にはなりませんね。むしろこちらの無双の方が好みではあります。
こちらの苦手な部分は、最初からフラグたちまくりのヒロインのアピールを鈍感でガン無視して、ゲーム内でヒロインを通じて知り合った女の子と結びついた後、イチャイチャし続けているあたりですかね。
現代日本が舞台だと、ハーレムといっても誰か一人と結びつくエンドなのはわかりますが、横で健気に振る舞う準ヒロインが切なくなりますね。かわいそうすぎて辛い。まあ仕方ないか、となるのは主人公が最初からメインヒロインにゾッコンで他に目もくれないからかもしれません。
段階を踏んで両想いから結びつくまではきちんと描かれていて違和感はなかったです。
プレイヤースキルではどうしても上がらない攻撃力を極振りにすることで、爽快なアクションが体験できます。
こちらはお約束の掲示板の使い方が絶妙です。
周りの反応が生き生きとしており、いかに主人公が非常識かを第三者の反応からも見ることができますね。
こういった作品の王道として、主人公が真っ当な最強として扱われないところでしょうか。
素の脳の力とプレイヤースキルで、使いづらいスキルやギリギリの戦闘を可能とする主人公の化け物具合を魔王などと呼ぶようになるのが非常に楽しいです。
私は主人公がドン引きされているのが好きです。ただ尊敬されるより、軽く罵倒されたり怖がられたりする程度で丁度良いのです。
だからやもしれません。並行で書いていたファンタジーも主人公がやたらとアレなのは。
主人公が目立ってもいいから強い相手と戦いたい、というゲーム本来の楽しみ方にどっぷりと浸かる戦闘狂なのも楽しいです。
やはり主人公は巻き込まれ系もよいですが、こういったものだとむしろ嬉々として巻き込まれにいく主人公の方が作者としても話が進めやすいですよね。
VRMMOにおける極振りの特徴は一点集中するため他の人よりも優れた部分が出てくるというところでしょうか。欠点を長所で塗りつぶし、補う。そうすることで、個人で戦闘を完結させるのです。
ゲームにおいてパーティを組んだり使い分けたりできるなら特化というのはさほど珍しくもありません。
ではこうした作品で『最強』や『特別』として扱われるのは何故でしょうか。
それは『ソロである』もしくは『一人で戦闘に対応できてしまう』ではないでしょうか。補ってくれる仲間がいないから、その異常さが外から際立つのではないかと思うのです。
同時に『万能ではないから』こそのスリルと、それをねじ伏せていく主人公に魅力を感じるということかもしれません。