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批判、前半

 小説家になろうにおいて、異世界物やゲーム要素の強い作品が痛烈な批判を受けていることについてでも語りましょう。


 えっ? お前、異世界転生小説書いてるんじゃなかったっけ?

 そんな疑問を抱かれた方もいるでしょう。これまでの回でそんなことを言った覚えがあります。

 なんというか、とことんドMですよねえ。

 自分が書いているジャンルがボッコボコに言われている某大手掲示板のまとめサイトなんかに嬉々として足を運ぶ、というのは。


 いや、こういうエッセイを書く人って、「自分が王道の異世界転生物や召喚物、VRMMOが好きだから、書いているから擁護のために」という人や、「自分がそういうのに辟易しているから、マイナージャンルを書いているからそういうものも見てほしくって」などといった想いで書いている人が多いと思うんですよね。その中でもよりコメディーだったり、説得力があったりといったエッセイがよく議論の場になったりしているのではないでしょうか。


 だからどっちつかずの蝙蝠こうもりという立場から書きたかっただけなんですよね。きっともっと過激な書き方をした方が反論も賛成もしやすいのでしょうし、参考にもしやすいのかもしれません。あくまでダラダラと愛を込めて綴っていくエッセイということで。

 ああいった場所で批判する人って発言に責任を持たなくていいから好き勝手いいますよね。痛いところをついた批判や、具体例があげられるってことはそれだけ読んでいる証拠に他ならないんですけどね。いや、証拠も根拠もない感情論で批判されている人も大勢いますけどね。単なる嫉妬や、叩きたいだけでしょみたいな批判もよくあります。


 で、テンプレ、王道、お約束が批判される理由でしたっけ。


 四つに分けていきましょうか。

 一つ、ただ単に多いから。人気だから。

 二つ、異世界転生や召喚、VRMMOなどのファンタジーやSFそのものが持つ特性。

 三つ、内容やレベル、ストーリーや世界観の作り込みなど、そしてオリジナリティー。

 四つ、文章レベルなど。これは小説家になろうの作品全体に言える話でしょうか。


 エタるというのは置いておきましょうか。完結させられないまま終わる作品が比較的多いと言われましても、じゃあ完結してたら批判しないのかと言われるとそうでもないですしね。

 完結までのストーリーを考えないまま書き始めるのが悪いのか、それとも日間などで上がってきたクオリティーの低い作品にアドバイスではなく「よくこれを投稿しようと思ったな」などとボコボコにするのが悪いのか。

 いや、完結させないのを擁護するわけではないですよ。短編は書いたら完結ですが、長編は完結させたほうがいいに決まってます。



 一つ目の多いから。多いから、人気があるから叩いたり、嫌ったりするとはよく考えればごく普通のことなんですよね。

 日本人特有かどうかはわかりませんが、ランキングの上位を面白いと信じてランキングの上位から作品を見ていく人が多いのです。

 と、いうことは一番多く見るのが一番多いジャンルで、多い物を、人気のあるものを批判するのでなければ無意味なんですよね。

 批判する理由ってなんでしょうか、という話から始めましょう。

 自分が批判していることを見られたい、批判している内容を変えたいと思うのであれば、その内容が身近でないと効果がないのです。


 例えば、マナーについて論じる時に「電車の中で布団を敷いて寝るのは良くないと思う、やめるべきだ!」と叫んだとしましょう。

 それを聞いた人が、「はあ?」となりますよね。確かにそれは非常識で周りに迷惑をかける行為でしょう。しかしそんなことをする人を見たことがある人の方が少なく、むしろ話のネタにされるぐらいのものです。

 ではどんな意見が議題にあげられるのか。

 もちろん、「電車の中では携帯電話を使うべきではない」とか「優先座席ぐらい譲れば?」などといった軽いところから始めるべきなのです。例え、それが賛否両論であろうと、いや、賛否両論だからこそ議論の余地があるのです。


 つまり、これを置き換えると、「ゴリラと豚の異種恋愛で、途中から犬が入ったドロドロの三角関係になる恋愛物は読む人を不愉快にさせるからやめるべきだ!」と叫んだところで、そんなものがランキングの上位に上がったこともなければ、誰もそれが一番人気であると言った覚えさえないでしょう。

 もしもこれを読んでおられる人の中に、「ゴリラと豚の恋愛小説」を書いたり読んだりして楽しんている方がいれば申し訳ありません。むしろ書いているならば、ここでの議題にあげられるような小説ではないと言っておきましょう。むしろ読みたいかもしれません。オリジナリティーあります。自信を持ってください。

 で、小説家になろうで小説の議題にあげざるを得ないのが結局のところ、「異世界物がどうして流行るのか?」とか、「人気小説の作り方」、「テンプレはもう飽きました」などといった内容になってくるわけです。


 ふう。やっとここで「人気ジャンルに反対する」の理由が述べることができました。

 そして、多いから叩く、というのは後述のオリジナリティーに関わる問題なのですが、読んでいるうちに展開に見覚えがあったり、ほとんどパロディーじゃないか!という作品がちらほらと出てくることがあるかもしれません。これはたくさん読んだ人に起こりやすい話です。

 たくさんある、ということはレベルの格差と共に作品のクオリティーの平均が下がることがあります。これは、たくさん投稿されているから気軽に書いて、たくさん放置されたりしている結果なのかもしれません。


 つまり、たくさんあるということはたくさんの人気作品の陰に隠れたたくさんの面白くない作品もある、という方が批判するのでしょう。

 特定のジャンルが売れるということは、それさえ書けばいいのかよ、という書き手の投げやりな気持ちや読者を軽んじているのではないかという気持ちもあるのかもしれません。




 次に、これらが持つ特性そのものです。

 まずこれらのジャンルに共通しているのが、現実の自分の生活の放棄です。もちろん、主人公がそういう性格でわざと捨てた人ばかりだとは言いません。ですが、ゲームの中に閉じ込められるにしても、異世界にいくにしても、主人公がこれまでの生活を捨てている部分があります。転生に至っては、主人公の死を前提としています。

 こういった部分が、現実世界への絶望、これまでの自分の生活への諦め、自分の才能の可能性の枯渇などの疲れた人の現実逃避のように見えると言います。

 私はそこは全然構わないんですけどね。その理由については後述の話で述べます。


 主人公が元の世界では引きこもりだったり、オタクだったり、いじめられっ子、ワーカーホリックなどの不遇な立場であることが多いのもそれに拍車をかけていると言います。

 作者の自己投影丸出し、読者もそういう奴らばっかりなんだろう、などと無責任は人たちは叩きます。

 ここで「無責任」と「叩く」という否定的な言葉を使ったのは、そういった意見がまるっきり見当違いであることからですね。

 ここで異世界転生物を書いている人の中には普通に学校で付き合っている人がいて、勉強もそこそこしているなどという人もいるでしょうから。そして私の知る、そういった作品を読む友人も、オタクではあれど引きこもりでもなければいじめられっ子でもありません。正確な値こそわからないものの、学力だって平均よりはいくらか上の奴らです。

 つまり、何の取り柄もなくって今すぐに異世界に逃げたいと思っている人ばかりが読んでいるわけでも書いているわけでもないんですよね。

 見当違いである、ということともう一つ。どんな作品であれど、作者と読者の批判に移ることは「問題点のすり替え」であり、その批判そのものが見当違いの「叩き」という分類だと思っているからですね。

 どんなにテンプレなどのキーワードが嫌いでも、その作品そのものを批判する分にはいいですが、他の作品などと比べたり作り手にまで及ぼすのは一気に説得力を下げます。


 後、私は自己投影万歳です。

 一人称などの小説において、重要視される「感情移入」。この要素はいかに主人公の心情や行動に違和感を持たないかにかかっています。ならば、自分以上に自然に書ける人間はいないでしょう。自分をモデルに主人公を書くことは、自分がよほどな異常な感性の持ち主で、人の感情がわからない人でないならば感情移入させる一つの書き方です。


 まあしかし、異世界への逃避という前提が含まれた作品を、お題そのものが後ろ向きだという人の感性はわからないでもないです。

 そして、流行っているからと書き始めた物が、物語ではなく単なるメモ帳や日記帳みたいになるのも、読んでいる側からすればつまらないのでしょう。


 前回までに言ったように、嫌いならば、ありきたりならばマイナーで面白いものを発掘して是非とも応援してあげてください。たくさんのブックマークはつかずとも、読んで、評価してくれる人がいる、応援してくれる人がいる、それだけでマイナーな作品を書く作者も書き続けられることでしょう。それがこのサイトの作品が王道やテンプレだけではなくなる手っ取り早い方法です。何かのステマのような話になりましたね。




 三つめ、これらの作品のクオリティーの話です。

 自分が主人公が気持ちよく活躍しているだけの小説が好きだから、そういった作品があるならばそれを書けばいいじゃない。

 そんな思いと共に書き始めた作品について。

「どうして中世なのにそんなに文明レベルが低く設定されているのか」

「どうして主人公が異世界に行っただけで味噌や醤油を作れるのか。お前は異世界に行って何の資料もないままに大豆を発酵させられるのか」

「赤ん坊は生まれたては目が見えないだろ!」

 といった整合性リアリティーについて言及した批判エッセイはよくあります。

 かくいう私も、赤ん坊の頃からほいほいと周りを見て動き回って、挙句の果てに二歳で両親を殺すに至っています。二歳の肉体ではどうにもならないのか?という疑問は前世の記憶のおかげで発育が良かったから!という説でいってます。


 そして、そういった批判を逃れるがために「中世ではなくてそういう異世界だから……」とか一番便利なのは魔法ですね。大抵の不都合はこれでひっくり返せます。嘘判定の魔眼で主人公の真偽を見分けてもらって信頼してもらったり、魔法で空を飛んだりすることで移動速度の問題を解決したり、主人公が子供のころから大人をバッタバッタと倒すのに魔法を使ったり、数えるだけでもキリがないです。

 剣と魔法の異世界ファンタジー。ロマンですよね。強い魔物を強力な魔法と剣で倒していく。定番です。


 小説家になろう、では何より「キャラの魅力」と「主人公の強さ」この二つの描写が上手な作品の人気が出やすいですね。そこに合理性や整合性を延々と説明される回を入れられても読み飛ばしてしまう方もいると聞きます。私は説明回、好きなんですけどね。少なくともバトル描写よりは。


 でまあ、主人公が強いだけの個性のなさが苦手だというのです。

 伏線も、盛り上がりやピンチなどもなく進む物語は読んでいて飽きる、という人もいます。

 中には前述のように、異世界に逃げただけでダメだ、という人もいます。まあ楽しめる範囲が狭くなるのは損しているな、と思うのですが。


 そしてファンタジーというのはとても大変です。

 何も経験や知識がなくても書けるから、と始めた人は単なるゲーム実況みたいになると言われるのはこのあたりにあります。

 なんせ自分の脳内にもう一つの異世界を作るわけですから。

 だから、一つの国に力を入れてその国の中でのみ活躍するというのもありますが、それでも大変です。

 文化の違いと言語の違いまで意識して書いた日には、とてもではないが普通の現実世界を舞台にするより労力がいるかもしれません。インターネットでは調べられない知識と想像力、常識が必要になるのですから。


 ただ言えるとするならば、せっかく流行、つまりは見てもらえるジャンルに手を出すのならば自分の作品だけの魅力などを追求しようとはしないのか、といったところでしょうか。

 まあここは無料投稿サイト。規約にさえ触れなければ主人公が踊るだけのオチなしコメディーだろうと投稿したって構わないのです。

 私自身、頑張って書いているつもりではあってもどれだけ整合性の取れたご都合主義の排除のできている作品として仕上がっているかはわかりません。奇を衒うとより歪さがでる一方で、魔法から便利性をギリギリまで排除した結果、主人公勢以外の魔法使いの魔法がゲームみたいな魔法になっていたりしますし。


 付け加えるとするならば、小説を書くという行為は自分の中の伝えたいことを伝えるためのものだという意見でしょうか。

 異世界物に手を出す時、それがないから中身がない、スカスカとおっしゃる方がいます。これはラノベを批判する時におっしゃる方も多いですが。

 これには一応正面から否定させていただきましょうか。


 読みとるものがない、のではなく、読んでそう批判する人が読みとれていないのです。


 作品の登場人物に行動をとらせるとき、計算してか無意識かは別として必ずどこかに理由があります。それは物語の構造上や、過去や立場からくる心情、能力などによります。

 つまりは、書いているうちに作者の何かしらに対する考え方というものは滲み出るものだと思うのです。

 私がこれまで、お約束やテンプレと言われがちな展開や要素について語ってきたのもそういうことです。苦手な作品、質の低い作品であっても読みとれることがあります。人気ならば人気の理由が、質が低いならその改善点が、好き嫌いがあるならその理由が。

 きっと、ただ批判している人は異世界物に手を出した人の中にも「食育」であったり、「家族の絆」や「他の異世界物への皮肉」など伝えたいものがある作品があることから目を背けているに違いないのです。

 もちろん、少し工夫した独自設定の他は同じ場面で同じ判断をくだす主人公がいるかもしれません。中に込められた意思は「異世界でかわいい女の子といちゃいちゃしたい」かもしれません。イケメンに養われたいとかもあるでしょう。

 

  別にいいじゃないですか。もしもそのいちゃいちゃしたい相手がどんな相手かによって、その人の人に対する理想が見えるのも楽しもうじゃないですか、と。

 何も考えずに読めて、それでいて読んだ後に何かが残っている作品でもいいじゃないですか。

 オリジナリティーは何も物語の外側にばかり表れるものでもないでしょう。

 むしろ、そういう表面上は何も考えずに読んで楽しめる作品から読みとるのも一つの読む能力であると思う今日この頃。




 あ、文章について書ききれなかった。

と、いうわけで次回はネット小説の文章、表現について。

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