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小説家になろうの需要の正体

 さて、ここまで「小説家になろう」の人気作品のお約束や王道、テンプレについて話してきました。

 しかし王道だのお約束だと私たちは言いますが、そもそも「小説家になろう」という場所が王道テンプレに飽きた人が読みにきている場所なのではないかと思うのですよ。


 友人からは

「なろうはアイデアを読むことを楽しむ場所なんじゃないかな」

 という痛烈な意見もございましたがね。

 これは多分、異世界で主人公が活躍することに対して、神からもらったスキルやチート、都合良く現代知識で文明の発展や強敵の打破などのストーリーにおいて、どんな工夫をできるか、ということではないかと思いますが。


 そんなことはさておき。何が「テンプレに飽きた」のかというといいますと、もう一度なろうのテンプレを思い出してほしいのです。

 主人公は普通の中高生、または大学生で、今までとは違う世界に飛ばされ、好きに生きる。でしたよね。

 まあゲーム世界だろうが、漫画世界だろうが異世界には変わりありませんしね。

 で、ハーレム要素を詰め込みますが、ハーレムを中心に描いた人気作品って複数のヒロインが全員主人公と結びつく、という展開があるんですよね。

 異世界転生で紹介し忘れた作品で、主人公が軍オタで現代兵器を作り出して女の子と共に戦うファンタジーがあったんですよね。

 あれでもそうなのですが、ライトノベルでとられがちな「主人公が好意に気づかずに複数の女の子と仲良くするも、誰ともくっつかずに終わる」という状態や、「どちらかが恋心を自覚して告白などをしてくっつく」という恋愛的ハッピーエンドの終わり方でないものも多いのです。

 ハーレムについて書いたときに、現代日本人の倫理観で、複数の異性と意図的に恋愛関係に至ることに罪悪感を抱く、ということを書いたと思います。(複数の同性についてはとりあえずおいておきましょう)


 しかし異世界という非日常、異文化がそれを許してしまうのです。


 これこそが、なろうにおけるテンプレはラノベや少女漫画の王道に飽きた人の需要ではないかという点です。

 今までじれったい主人公にイライラしていたのではないでしょうか。

 あんなにわかりやすいのに気づけないはずがない。

 フられた相手がかわいそうだ。

 複数ハッピーエンドがあってもいいじゃないか。

 複数のヒロインとくっつく、複数の女の子からの好意を自覚しながらもたった一人への愛を貫く、これらの展開はそれらぬるま湯ハーレムの隙を縫った、つまりは元のお約束を壊したところにある一つのお約束ジャンルとして確立していると思うのです。




 少し話を変えて、ライトノベルのヒロインについてでも話しましょうか。

 昨今の学園ラブコメといえば、


 ・ぼっちの主人公が変な部活に巻き込まれる。

 ・気の強い女の子が複数いて、とてもではないが甘い雰囲気には見えない。

 ・ヒロインは残念系美少女である。


 といった「周りに女の子が複数いるだけ」というハーレムラノベもありますよね。

 そうでなくとも、「残念系美少女」と「変な部活」は学園を舞台としたラノベにはよくあるお約束です。

 残念系美少女というのは、「見た目はいいが、性格に難が……」というわかりやすいアレです。

 もともと元気な、素直な可愛いヒロインから一歩脇道にそれて、率直でズケズケとものをいうキツめの子にすることで、「性格が悪いと思われているから見た目が良くてもモテない、またはモテても他の男とくっつく心配がない」という要素と、「性格が悪かったり変だったりするから自分とも一緒にいてくれる」という二つの主人公が女の子に囲まれる合理的な理由を作っています。

 個人的に、男性キャラも女性キャラも性格に難があるぐらいが好きなので、こういったキャラによるひねくれたやりとりなどは結構楽しいですけどね。


 一方、小説家になろうにおける異世界ファンタジーのヒロイン、その中でもハーレム系のヒロインは主人公を神聖視している幼馴染であったり、何でも言うことを聞くメイドや、奴隷から解放された感謝と尊敬でいっぱいの元奴隷の獣人などと主人公への好意を隠す気もない、積極的なヒロインが多く出ますね。

 前回話した男性のハーレムと女性の逆ハーレムについての話のように、価値ある異性に認められることで自分の価値を間接的に認めるという、恋愛とは一歩離れた感情も中には含まれているのではないかと電車で友達と話しておりました。

 そんなことを電車内で話すな? そんなことを友達と話せるのか?



 他にもお約束を壊していると思うところと言えば、悪役ポジ、ライバルポジ主人公でしょうか。

 これはおそらく少女漫画のお約束をぶち壊してできたジャンルでしょうね。

 天真爛漫で無邪気、好きな男の子に一途であったりetc……

 後宮だと田舎の成り上がり貴族の娘で、貴族社会のしがらみに疎かったりだとか、学園物だと中高一貫校の高等部に編入で入った学力だけの子であったりとか、借金の肩代わりにとある学園の寮暮らしだとか境遇もまた、やや一般的な不幸をスパイスに人の良さや悲劇のヒロインと化しております。

 そこに現れる主人公をいじめる高慢なお嬢様であったり、その取り巻きであったり……

 そんな紆余曲折の物語のエッセンスから引き抜いた、主人公がライバルポジだったら?というのがなろうにおける乙女ゲーだとか、BLゲーに少女漫画に転生から貴族のお嬢様に転生だとか、ですね。

 男性にも人気のある女性主人公の物語はやはり、主人公の女性が恋愛脳ではないことが多いですね。

 おそらく男性からすれば恋愛を中心にして周りが見えなかったり、恋愛成就のために賢く、あざとく立ち回れる女性に嫌悪感を抱くのかもしれません。

 そして女性からしても、男性をそういった手管で落とす主人公よりも、ありのまま振舞っていて好かれるというのも人気の要素なのでしょうし。


 それでも主人公が恋愛を価値あるものとしている主人公で人気のある作品はありますよね。

 そういうのって短編であったり、または主人公が恋愛を好きでもそれと同じぐらい友情とかを大切にしたり、悪役ポジながらも性格の良さで卑怯な真似もできずに恋愛にまで至らなかったりするものが多いのではないでしょうかね。


 まあ、あれですよ。何が言いたいかというと、小説家になろうというサイトで書く人たちの中にも、自分が今まで読んだ作品で気に入らない部分を改造して出す人がいるんじゃないか、そういった綺麗事しかなかった作品からちょっと下品だったり逆にそういった要素を省いたものを見たくてきている人もいるんじゃないかってことですね。

 こうして書くと、どこか二次創作的な部分もあるような気がします。


 私自身、同時更新の「弱者は正義を語らない」においては転生物にありがちないろんな部分、特に人気の部分を見事にすっ飛ばしていますからね。

 子供時代の周りの大人たちによる「そんなこと知らなかった!」「子供なのにすげぇ!」場面や、学園編、チート魔力とかお約束場面があらかたスキップされて青年期まで高速でいってますし。どちらかというと、幼少期からの訓練で得た人間としての中の上から上の下ぐらいの実力を現代知識の悪用によって押し上げている感じでしてね。

 自分で「これがなろうで人気がある!」「これが面白い!」と偉そうに書いておいて、自分は書いてないのかよ、そして批判していても書いてるのかよ、と二重の意味で罵ってくださ……じゃないや、これじゃあドMだ。その部分については棚に上げておきましょう。


 まあもしよければそちらの作品も読んでくださいな。「ああ、テンプレ異世界冒険物だわ」とでも「どこが王道なんだよ!」と叫ぶのも自由ですので。



 そして男女問わず、人気の要素として不遇からの主人公活躍という成り上がりやカタルシス物について感想でお聞きしましたので追記させていただきます。

 ここでのカタルシスと言いますと、主人公が悲劇的な境遇にあったものがいっきに解消されることですね。

 人はそこに、自分の現在の不満などを重ねて感情移入することで爽快感を得たりします。それまでの理不尽な環境が物語の伏線回収などで改善されていく様子は物語の中でも盛り上がるシーンとなります。

 異世界転生ならば、転生前にコミュ障やニート、無職などという設定がありますがあれはどうなんでしょう。ちょっと違う気も。

 異世界転移系に多いですかね。いじめられっ子やオタクでクラス内での立場が低かった子が異世界にイケメンやいじめっ子と一緒に召喚され、そいつらが勇者になるというのがまず不遇の部分になります。そして不遇ながらも努力や魔物を食べたり、能力を奪ったり心理戦やユニークスキルでそういう「表向きの主人公みたいなやつら」に対して優位に立つというのが人気ですよね。

 多分これって、特別でありたい、不遇な環境からこそ主人公の活躍が楽しいといったところでしょうか。他の理由としては勇者召喚が多くなって「勇者として召喚される」だけでは特別感を味わえなくなっているのかもしれませんが。その壊し方としての一つの手法でしょう。もちろん、勇者として召喚された先に個性を作る作品もありますので一概には言えませんが。




次回からは「好きな作品の見つけかた」や「なろうのユーザーの在り方」、「批判されている内容と、その理由、対策、そして魅力」などなど。

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