異世界転生、記憶を思い出す
異世界転生で記憶を思い出す、というパターンは三つの中では私が書くとすれば最も難しいものだと思いますね。
これのありがちな展開としては、前世の記憶を思い出した時にこれまでのことを覚えているか、気がつけば異世界の見知らぬ人間になっていたという記憶喪失型か、ですよね。
後者は憑依じゃねーの?というご意見もございましょうか。
今までの自分ではない自分が犯した所業について、恥ずかしさで悶絶したり、後悔したりしながら進むタイプが多いですね。
そんな中で紹介するのはもちろんこちら。
主人公が前世の記憶を取り戻した時、既に主人公は散々なことをしてきたという状況で物語は始まります。もちろんそれらは、主人公が一概に悪いとは言えないものの、第三者から見ると評判が落ちた状態、となりましょうか。
しかし主人公は決して不幸などではございません。求められているものとは違えど、才能はあるし、神からの祝福まであります。
周りの人たちはそんな主人公がやさぐれている間もいつか昔の立派な主人公に戻るはず……いや、期待をかけすぎたのがよくなかったのかもしれないと一歩引いて見る人もいたり、変わってしまってひどかった主人公をそれでも愛してくれる人もいました。
現代知識とそして前世の経験と、異世界で泥臭く努力して開花させた才能を存分に使った贖罪の物語です。
変わっても認めてはもらえなかったり、それでも愛されてまさに主人公補正とさえ言えるほどに優しい世界が物語全体を暖かくしています。
幼いころの青臭さや、負い目のある主人公特有の息苦しさが苦手な方もいるのでしょうか。あとは主人公補正というものを序盤からご都合主義としてではなく、それさえも負い目として出すような展開が嫌いな人もいるかもしれません。
ただ、自分に価値がない、生きるのが辛いという方は一度読んでみてください。
決して価値がないなんてことはない、きっと側で愛してくれている人がいる、そんな風に思える作品です。
今回はこのタイプで紹介するならこれだろ!と思いましての一作品絞りです。
というよりは、このタイプの作品はなろうの異世界転生ファンタジーでは数が少ない上に私自身も大量には読まないのであまりお約束だのとたくさんの作品が紹介できないのが残念です。
本来転生物というと、今まで普通に暮らしていた人が前世の記憶を思い出すという現在を基準に進めることが多いんですよね。
まあなろうに限らないのではあれば、某有名作品を推したいですね。
異世界の王は麒麟が選び、選ばれた王と麒麟は一蓮托生ーー運命を共にするという、そんな作品です。
あの作品こそ私がどうのこうの言えるようなものではございませんね。どこを見ても突っ込むところがないというか、完成された作品です。序盤のやや鬱展開さえ乗り越えれば練りに練られた世界観と豊かなストーリー、魅力的なキャラクターが織りなす全てにとらわれてしまうでしょう。
ただ、爽快感や感情移入のみを求める人には読みづらいかもしれません。
最初主人公が女子高生というのもポイントでしょうか。
次回は「幼少期編スキップ」について