異世界転生
異世界転生物。私がこのエッセイと並行で連載しているのもこのジャンルです。このジャンルにもまた、多くの「お約束」があります。
その多くが異世界トリップと重なる部分もあり、それらをできるだけ省略しながら話を進めていきましょう。
まずは時系列の冒頭。主人公が普通に過ごしていて何らかの理由で死ぬシーンを一話目の最後に持ってくるか、気がついたら異世界に転生していた、というパターンが多いでしょうか。
そして異世界転生の始まりを私は三つに分けています。
まずはこれが一番しっくりくる、「赤ん坊、または幼児期(具体的には三歳まで)に前世の記憶を思い出す」パターンです。貴族や王族に生まれるパターンか、のどかな村の夫婦の元に生まれることが多いです。
こちらは、努力しなければ成功しない、しかしそれに気づいた時にはもう遅かった、そんな思いに共感しやすい展開です。
人のスペックを決める幼少期、通常の人はこれを基本的な思考力や運動機能を発達させるために使いますが、それだけで精一杯でたいていの子供は自分を磨こうなどと思って生活しません。それを記憶を持って転生することで、幼少期から優れた思考力と知識、技術を身につけるのです。
こうして高い能力を得た主人公は周りの大人から一目おかれたり、尊敬、嫉妬などの感情を向けられます。また、中でも貴族に生まれた主人公はその能力や現代知識から国の政治などに巻き込まれていきます。このタイプは子供時代、つまりは十五になるぐらいまでを濃密に描き、それだけで終わることさえあります。
村人として生まれた場合は、「こんな村にとどまっている器ではない」みたいな感じで冒険物にシフトすることが多いでしょうか。村に偶然来た凄腕の冒険者に才能(という名の現代知識と前世の記憶というアドバンテージ)を見出され、連れ出されたりすることもありますね。
どちらかと言うと、ほのぼのした主人公がハイスペックで周りに信頼された感じに物語が進みます。
これの亜種として、捨て子、つまりは親がいないだとか、疎まれて捨てられたなどのパターンがあります。
この場合は人間不信になって山の中で魔物、妖精などと暮らしたり、逆に復讐を企てたり……前世の知識があるからこそ、捨てられたことに特に恨みも持たないケースもあります。何にせよ、家庭がないという崖っぷちから成り上がるタイプの作風になりましょうか。このパターンもかなり好きです。あまりに人間がいないまま延々と物語が進むと寂しくなるかもしれませんが。
次に分類するのが、途中で記憶を思い出す、まるで憑依のようなパターンの物語です。
こちらは主人公がある程度の居場所を確保している際に置きます。学園に通っていたり、小さなころに一度死にかけるなどの衝撃的な出来事があったりといろいろ考えられますが、まあ二種類に分けましょう。
分け方とは主人公がそれまでの記憶を持っているかどうか、ですね。
主人公がこれまでの記憶を持っていない場合、物語はしばらくこれまでの自分の立ち位置を確認する作業となります。主人公が異世界の肉体の記憶を持っている場合、これまでの状況から自分のするべき行動をとる物語になります。
どちらも、主人公がどうこうしなくとも立場が出来上がっている状況からスタートというやや難しいもののテンポのよい展開となります。
最後に説明するのは、幼少期編スキップです。
別に作者が書いていないとかではなく、神様による転生にありがちな「肉体は死んだときのまま」か「若返らせておいた」の見た目も名前も変わらないようなタイプです。
これをする作者側の理由とは簡単で、死ぬという一番劇的なイベントを通じて神様に合わせることで異世界に飛ばしやすくなり、なおかつ子供のころの長い展開や、両親とのしがらみ、そして元の世界への執着などのいろいろを考えなくてすむというものです。
逆に読者側も、「子供のころのグダグダ感はエタりそう」、「いい加減主人公が尊敬されたり幼馴染がいるとか飽きた。熱い冒険が見たい」という要望に応えてくれるジャンルと言えるでしょう。
一番神様からの贈り物や、ゲームシステムチートなどのお約束が使われやすい転生でもあります。
だから私はこのタイプの作品の魅力は異世界トリップだと思っております。前世にしがらみのないだけの異世界トリップ、軽快なバトルを演出家しつつも、上二つよりも難しく考えずにすむ作品かと思います。
転生物。自分のこれまでを全てリセットしつつも、周りから決してズルで手に入れたわけではない「知識」というアドバンテージを活かして活躍する、ファンタジーの中でもどの年齢でも主人公になりうる感情移入型の物語です。
異世界転生の邪道物を書いております。もしよければそちらもどうぞ。
「他にもこんなお約束があるよ!こんな展開が好き(嫌い)」等あれば教えてくださると嬉しいです。
または「王道(非王道)のこんな話を書いています!」等教えてくだされば、読みにいくかもしれません。