異世界召喚、トリップ。一人
異世界トリップ、召喚物の一人版です。
こちらは非常にお約束やありがちな展開というものが多いです。というのも、一人でいると周りに左右されずに行動することが多くなるからでしょうか。
多いチートスキルとしては、簡単にスキルが得られるとか、相手のスキルを奪えるとか多いですかね。魔法の才能があった!というのもよくあります。あとは創造魔法などの固有魔法と言われるものですね。
ゲームステータス系もよくあります。
まずはこちら。書籍化もしていて、見事に主人公最強物です。
主人公ともう一人の女の子が気がつけば異世界の草原にいて、魔物に襲われたところをベテランの冒険者に助けられる。ここまでがテンプレです。これにより主人公のしがらみをなるべく少ない冒頭にすることで、情報量を減らし、シンプルかつ入り込みやすい導入となります。
主人公と女の子には魔法の才能があり、大魔法使いに師事しながら異世界を冒険する物語ですね。一人ではなく二人ですが、性質としては一人のものに近いのでこちらで紹介します。ここでの一人とは、集団転移ではなく、召喚でもないといった感じですかね。
グダグダしやすい学園物で引っ張ることなく、途中で期間限定で突入させたところはお約束をうまく壊してかつ王道であったと思いますね。
一応、主人公たちに魔法の才能がある理由も、草原に召喚された理由も作中で述べられているのですが、全体としては「主人公が才能があった」系で、力押しで解決していくタイプです。私は頭脳戦や知略バトルが好みど真ん中なのでその点は少し好みとはズレますが。
ただ、主人公の性格はイライラするタイプではなく、安易なハーレムにも走らない、堅実な展開に主人公の強さの魅せ方がうまい作品だと思います。
戦闘描写に限らず、文章も正確かつスッキリとしていて非常に読みやすいです。魔法使いであるのに、強いのは近接戦闘というのもなかなかユニークで楽しい部分ですね。
まだ異世界冒険物は読んだことないんだ……という人は一度ぜひ、といったところでしょうか。
次も主人公一人が淡々と進む物語を紹介しましょうか。
こちらは、上空からのトリップの副産物として竜に激突して偶然倒し、上がったステータスでかろうじて命拾いするという物語です。
上空からのトリップの王道をひた走る物語ですね。
圧倒的なステータスによって、不意打ちから雑魚に囲まれるにいたるまでの様々な危機に対する不安感を払拭した物語です。
こちらも書籍化していて、かつ完結しているので安心して読める作品です。
一人の異世界トリップでありながら三人称で話がサクサク進み、主人公が強いからこその物語の根幹や、戦闘スタイルをあっちこっちつまみ食いしないのもなかなか。
うーむ。やはり力押しの戦闘シーン小説よりもアニメ化したのがみたい今日この頃。というか、なろう発の主人公最強物で力押しの熱いバトルで解決するタイプの小説の幾つかはぜひアニメ化してほしいものが幾つかありますよね。
あ、話がそれました。
上記の作品はゲームシステム的要素が低く、世界の思惑やらくにの思惑やらを巻き込むタイプの物語であり、奴隷のお約束やダンジョンに引きこもったりしない物語ですね。
主人公が肉体的に強い分、精神面での成長などに焦点が当てられているのも特徴でしょうか。
次に紹介するのが、これはやや異色の物語。
主人公が勇者として召喚されたところまでがテンプレで、そのあとはどこまでギャグにかませて強くなれるかの修行パートになります。
アホの子のお姫様に宰相ちゃん、血も涙もない政治家たち、悪鬼羅刹の師匠と個性豊かな登場人物が織りなす序盤は、召喚物にありがちな修行パートを全く読むのを苦にさせません。
しかもそれを単なるギャグとして終わらせるのではなく、全体の伏線として回収しきろうという作り込みが素晴らしいですね。
舞台が三つ以上の国を未だ出ない作品ではありますが、インパクトのあるタイトルに沿いながら裏切るという高等技術に思わず引き込まれました。
戦闘シーンも、ただ不遇属性の魔法に人格を持たせて、しかも修行パートの魔力、現代知識を絡ませながら少し邪悪な匂いのする結末に持っていくあたりが好みです。
そして残り二つが、こちらは長い人気作品のテンプレというか、こちら二つが異世界トリップのお約束をかなり多く孕んだ作品となります。
どちらもパソコンでキャラメイク的なあれで異世界に跳びます。
片方は上空からの大魔法、片方はポイント割り振りで圧倒的スペックと、ゲームシステム的チートを片手に異世界で淡々と勝ち続けます。どちらもゲームシステム的チートのしっかりとした作り込み、次々と明かされる情報とよくここまで書けるものだと思います。
ゲームシステム的なチートとは、レベルを視認できたり、ポイントが自由に割り振りできたり、アイテムボックスや移動呪文が得意だったりすることですかね、
さらには奴隷少女を買って、奴隷として扱わないことからの強い信頼関係のお約束まで扱っております。
前者はスキル取得が何かしら行動するたびに入るので、その点はやや目が滑るというか、そんなにぽんぽんとスキルが得られたら便利だよねぇと。
しかし文体の一人称的には凄く好きです。淡々としながら哀愁漂う主人公の一人語りはどこからか話しかけられているような錯覚さえ覚えます。
後者は単純、山なし谷なしと言われるように、主人公が強すぎ、慎重すぎる上にゲームシステムという法則の中で迷宮という権力も何もない場所を進み続ける物語ですので、主人公のピンチはまず見られません。
旅日記やゲームの実況を見るような、とは言い得て妙です。
あらすじは、異世界に跳ぶ、そしてお金を貯める、奴隷を買う、奴隷に強さを見せつけて「ご主人様すごいです」と褒められてからのベッドイン、そしてまた迷宮に潜ってお金を貯める、余裕ができれば奴隷を買う。この繰り返しです。とあるネット小説のお約束を逆手にとったコメディーでもこのように言われておりました。
これでかなり長い間続くのが凄いな、と思います。迷宮に潜るのが大半なのに、よくネタ切れしないものです。
確かに、異世界にトリップしてチートを得たからといって、その力で調子にのればあっという間に利用されたり巻き込まれたりと大変でしょう。
女の子とイチャイチャしながら、適度に強さを隠すことなく、冒険も楽しみながら平和に暮らすのが一番の幸せ、というのはそうなのかもしれません。
こういった小説が多大なる指示を受けるのも、「自分だったらこうしちゃうよねー」という共感や、強さを隠していて、たまに無双するスタイリッシュさに対して心をくすぐられるのやもしれません。
作品の設定こそゲームシステムという現実離れしたものが登場していますが、主人公の判断に対する徹底したリアリティーは見ていて安心しますかね。しっかりとした作り込みと、その設定が矛盾しないような安定感、好みであればおそらく途中でやめるということはないでしょう。
作品として凄い、真似できない、人気なのはこうだからだ、とわかることや説明できることと好きだというのはまあ違いますけど。好みど真ん中ではないだけで、凄いな、人気あるよね、と思っている作品たちですね。
※チート……本来はゲームにおけるあり得ない反則技やズルに対して使う言葉で意味としてはイカサマ、ズルといったもの。転じて、創作物においては、努力や才能とは違い、後天性または神から与えられたなどの理由がわからない強さをさす。固有スキルであったり、技能スキルが取りやすいこともここに含まれる。広義では身体能力の強化や魔法の才能もここに含まれる。