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00:00:03~着地からの三秒間~

作者: D[alliance]blue

公園で弁当を食べていた。

目の前にはサッカーグラウンドほどの池。

そこから手前に進んでいくと10mほどの幅の芝生、2,3人用のベンチ、5m幅の舗装された道、さらにもう一つのベンチ、そこに俺が座っている。

膝の上にタオルを敷き、弁当のふたをのせ、左手に弁当箱、右手に箸を持ち、池を見ながら食事を進めていた。

池を見ている理由はない。強いて言うなら、俺の隣から視線をずらしたかったからだ。


俺の隣には今、一人女性が座っている。

肩にかかる黒い髪、赤ぶちのメガネ。服は白を基調にしている。細かい種類は分からない。

手には文庫本。さきほどからずっと読んでいる。

題名を見ると「とうもろこしの爆破にサトウキビは必要か?」ちょっとまてそれ何の本だ。すごい気になる見せてくれ。

とは言いだせないので、仕方なく弁当を食べ続ける。

個人的にはぜひとも目の前にあるもう一つのベンチに移ってほしい。


どのくらい経っただろうか。

早く食べ終わってこの場を去りたい気持ちとスローペースで食べて女性が帰ったところで解放感の中で弁当を食べたい気持ちとが葛藤し、結局箸が止まっていた。

ちらっと女性の文庫本を見る。あとがきに差し掛かっていた。

さて、この人はあとがきを読む派か、読まない派か。

どうやら読まない派のようで、本を閉じた。胸を撫で下ろす。そして文庫本の最初のページ開いた。

えっ、リピート?

表情には出さないが(ひょっとしたら出ているかもしれない)すごく絶望した。

仕方なく、急いで弁当を食べ、早々にこの場を立ち去ることにした。


俺の弁当を食べるスタイルは、まず全種類半分ずつ食べる。その後、食べた順番にもう半分を食べる。

いわゆるローテーションだ。そして俺は今、一週目を追え、二週目に入ろうとしていた。

まずは唐揚げひとつ。

口に運ぼうとして、箸から滑ってしまった。そして地面に落ちる。


それを認識するのに0.5秒。

拾い上げるのに0.5秒。

息を吹きかけ、おざなりにも汚れを落とすのに1秒。

一瞬ためらい、口の中に入れるまでに1秒。

3秒ルールだ。大丈夫。


知ってるか?家のありとあらゆる床とトイレの座る場所。後者のほうがきれいだから落とすならトイレの座るところでな。

まあ便所飯とはいえ、便器に座ってるからそこには落とせないが。


まあそういうわけで落とした唐揚げを食べ、再び食べ始めようとしたところで、隣の女性が体勢を変えていることに気がついた。唐揚げに集中してて気がつかなかった。

そしてなぜか、俺の方に寄りかかってきた。なんだ?フラグってやつか?

ふたたび女性のほうをチラ見する。


遠くからでも、どんな人でも分かるぐらいに死んでいた。

胸……心臓の位置にナイフが2本刺さっている。


反射的にベンチから立ち上がり、3歩ほど進み振り向く。弁当は死守していた。こんなときに。

女性はベンチで横になっている。「キレイな顔してるだろ?こいつ死んでるんだぜ?」って言いたくなる死相だ。言ってもむなしくなるだけなのは知っている。

周りを見渡す。この公園は非常に見渡しがいいが俺と彼女以外には誰もいない。

兎に角、一般市民の俺には何もできるわけではなく、携帯を使って警察を呼んだ。

死体には触れないように、とのこと。

何の好奇心か、体に触れないように調べることにした。


まずは顔色。

すこし血の気が引いている気がするが、やはり先ほど死んだらしい。

何度も言っている気がするが、素人意見だ。

ついでに胸の傷を見た。心臓に刺さった割に出血が少ないのが気になる。服にしみたのか?


そして気になったのが、胸に刺さっている2本のナイフ。

このナイフ、持つべき部分に滑り止めの溝がなく、とても素手では扱えそうにない。

しかし、俺はミリオタの端くれ。このナイフ、およその予想がつく。

……スペツナズナイフ。バネの力で射出することができるナイフの刃と見た。

ソ連の特殊部隊「スペツナズ」が使っていたことから名がついたが……まあその辺は各自調べてくれ。


しかし、さらなる問題が出た。

このスペツナズナイフ、射程距離は普通なら10m。目の前には身を隠せるような場所はない。

後ろから……と思っても、そもそもナイフは前から刺さっている。

結局進歩なしか。

とさっきからまあ、女性の胸をその気がなくとも凝視してる自分が恥ずかしくなり、その後は目の前のもうひとつのベンチに座りながら警察を待った。


ほどなく、パトカー三台がたどり着き、先頭のパトカーからスーツ姿の女性が出てきた。

20代半ば、髪は茶髪で短め。そして手には手錠。

「あなたが第一発見者ですね?」と言ってきたのでうなずいた。

どうやら先ほど電話で出た人と同一人物らしい。警察手帳を見るとこの人の名前は「手毬 香織」というらしい。「てまり かおり」か?

ところで、いきなり手錠をかけられるのは非常に遺憾だ。

抗議しようとしたが、突拍子もなくボディチェックをしてきた。ジーパンのポケット前後ろ、Tシャツの中、靴の中。余すところなく調べつくされた。


現場検証が始まった。

さすが警察。凶器のスペツナズナイフに気が付き、発射元のグリップをさがし始めた。

同時に刀身の指紋を調べるが、どうやら出なかったらしい。

そして結局グリップは見つからず、ボディチェックでも出なかったので容疑者から関係者にランクが下げられた。よかった。


手錠を外され、当時のことを話すために警察署まで来てほしいらしい。

俗に言う任意同行というやつか。

弁当箱を片づけ(るのは鑑識の人にお願いした。念のためだ)、手鞠さんのパトカーに乗り込み、現場を後にした。


右手には池が広がっている。景色はあまり変わらない。

飽きてきたのでなんとなく下の名前で呼んだら「かおりではありません。かおるです」と訂正された。


再び戻ってきた沈黙。

先ほどのことを思い返した。


地面に目がむいていた3秒間。

その3秒間でいつのまにか殺されていた女性。

見晴らしのいい公園。

目撃者一人。

出血の少なさ。

スペツナズナイフ。


素人の脳では、何も分からなかった。

まあ、自分は何もしていないのは確かだ。

警察の人に任せよう……。


そう思い、車の揺れに身を任せた。

完!……おっと、石を投げるのはよしたまへ。


終わってません。多分もう一つ短編を書くと思います。

解決編?推理編?的な感じで。


お楽しみに!(投

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― 新着の感想 ―
[一言] とっても面白いです!! 「なんかフッとみたら人が死んでいる」って 肝っ玉小さい私だったらぶっとびますケド。 続き、楽しみにしておりますvV
2011/03/07 00:38 退会済み
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