第四話「恐怖の昼休み」
そしてなんやかんやで時間が過ぎ四時間目の終わり一分前、この時間になると皆いつでも席から立ち上がり、クラスから逃げれる準備をしている。
そう、皆はこのクラスでは絶対に食べない。
もちろん弁当の奴もだ。
皆ある光景を見たくないからだ。
ある光景とは、俺がアルカトラズの五人に囲まれながら食事をすることだ。
授業中は見られるだけなのだが、昼休みになると見られるだけでじゃなくって、話しかけてきたり、弁当のオカズを取っていく。
この光景を通称「拷問」という。
皆は最初は仲がいいからそんな事をしてるのだと思っていたらしいが、俺が委員長になった日からその考えは変わってしまった。
俺の事を徐々に追い詰めているという考えに。
キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン
そしてチャイムが鳴り、終わりの挨拶を待たずに皆一斉に教室から逃げていく。
雨雲先生の場合は教室に残り、この人も俺に話し掛けてきたり、オカズを取っていくのだが、他の先生の場合は皆と一緒に教室から逃げていく。
やはりアルカトラズの5人の事を恐ろしいと思っているのだろう。
そして皆が居なくなってしまうと俺へのいじめ?が始まる。
アルカトラズの五人はこちらを向き、黙々と食事を初めた。
「「「「「ジィ〜〜〜〜〜〜〜〜」」」」」
くそ、やはりこの五人の視線に慣れる事ができねぇ!
やはりこの状況でまともに弁当食べるのなんて無理だ!
でも、教室から出ようとするときっと殺られる!!
俺は一体どうすればいいんだぁぁぁぁ!!
俺は弁当を鞄の中から探しながら心の中でそう叫んでいた。
「あれ?」
おかしい......いくら探しても弁当が見つからない。
まさか.......!?
「弁当を忘れただと.....バ、バカな.........確かに入れたはず......なのに無い...............」
なんで無いんだ!?
確かに朝、鞄の中に弁当を入れたはずだ!
なのに何故無い!?
これはまずい......非常にまずいぞ!!
今の俺は教室という檻から出られないというのに弁当を忘れただと〜〜!!
お、終わりだ......俺の体は今すぐに救援物資(弁当)を求めているのに...。
俺は椅子の上で体操座りをしながら絶望し始めた。
そんな俺を哀れだと思ったのであろう林山が、
「何?弁当忘れたの?じゃあ少しあげる」
と言って、自分の弁当箱の蓋の裏に、唐揚げや卵焼きなどのオカズをのせて俺にくれた。
今だけは女神に見えますよ林山さん....。
すると他のアルカトラズの四人も、
「私も....」
朝霧は焼き魚を.....
「ペットにはちゃんと餌をあげないとね」
高巻はウィンナーと芋の天ぷらを.....
「ハァハァ、大和くんこれをどうぞ!ハァハァ」
河ノ内は何故か息を荒くしながら割り箸と謎のドリンクを....
「少しだけなら分けてやるよ」
飛島はおにぎりを一つくれた。
なんだ?本当は皆優しいんだな....いや、待てよ!?
何か怪しい!?まさか何か企んでいるんじゃ!?
もしかして俺は弁当を忘れたんじゃなくて何処かに隠されているのかも!?
だっておかしいもんな!
今日、鞄に弁当を入れた記憶ある!
俺は弁当を絶対に持ってきたはずだ!!
という事は何か変な物を仕込んでいるんじゃあ!?
特に高巻がくれたウィンナーと芋の天ぷらと、河ノ内がくれた割り箸と謎のドリンクが怪しい....。
それにさ、この割り箸何故か濡れているんだけど........。
「なぁ、河ノ内さん.....この割り箸何故か濡れてるんだけど....あとこの飲み物は何?」
「ああ、それですか?それは使用済みだからですよ、いろんな意味で(はぁと)ドリンクは飲むと気分がよくなってたまらなくなる物ですよ、いろんな意味で(はぁと)」
「あっ、そうなんだ....」
これは駄目だ〜〜!!
この割り箸を使っては駄目だ〜〜〜!
このドリンクも飲んじゃ駄目だ〜〜!
今俺に分かった事は、この二つは確実に危険だといつ事だ!
特にドリンクを飲んだらほぼ確実に俺の貞操が失われるだろう。
恐ろしすぎるわ!!
という事は高巻がくれたやつも.....
「あの高巻さん....?」
「さより様....でしょ、大和くん?」
「はい....さより様......あの、このウィンナーと芋の天ぷらには何も仕込んでいませんよね?」
「............」
ニヤリ
「何言っているのよ大和くん、何も仕込んでないに決まっているじゃない」
「ハ、ハイ.....すみませんでした......」
な、なんだ今の危ない微笑みは!?
絶対に何か仕込んでいるよな!?
絶対に危ないよな!?
でも、食べなかったら高巻は何か酷い事をしてくるに決まってる.....。
でもどっちにしろ食べてもやられるか......。
この人絶対に楽しみながらやってるよな!?
もう勘弁してくれよ!
俺が一体何をしたよ!?
もう泣きそうだよ....グスン。
「いいわぁ〜その顔、ゾクゾクするわぁ〜」
「.......」
と、とりあえず他の三人は安全だろうけど....まさかな?
まず最初に一番危険性が無さそうな飛島がくれたおにぎりを食べよう。
こいつは何もしてないはず.....だよな?
「い...頂きます」
そう言って俺はおにぎりを口の中へ運んだ。
その瞬間、
「ウグゥ!?」
普通はしないはずの甘さが口の中を直撃した。
な、なんだこの口に広がる凄く甘ったるいのは.....?
もしかしてこれは.....
「いちご....ジャム....?」
いや、そんな筈はないよな?
おにぎりの中にいちごジャムが入っている訳が....。
勘違いだよな、勘違いであってくれ!
そう願いながらおにぎりの具を確認する。
だがやはり中にはいちごジャムが.....。
何故だ!?何故おにぎりの中にいちごジャムが入っているんだ!?
まさかのコイツが食べ物に仕込んでいたとは!!
アルカトラズの中では性格的には一番まともな奴だと思っていたのに!
そんな事を考えていると飛島は満面の笑顔で、
「それ、旨いだろ?私の一番のお気に入りのおにぎりなんだよ」
信じれない事を口走った。
旨い?一番のお気に入り?このいちごジャム入りおにぎりが?
よく見ると飛島は同じいちごジャムが入っているおにぎりを美味しそうに食べていた。
「あっ、うんそうだね、美味しいよ....」
こ、こいつ味覚が変わっているだけで、仕込んだ訳じゃないという事か...?
二年以上一緒(強制的)に居るが、こいつがこんな味覚がおかしい奴だとは知らなかった....。
今度こんな状況になっても飛島からは貰わないようにしよう。
無理だと思うけど、だって怖いから断れない....。
とにかく次だ!次!!
次は林山の唐揚げと卵焼きだな。
これはきっと大丈夫だな。
きっと大丈夫!!
俺は箸が危険なので唐揚げを手でつまみ、口に運んだ。
「おおっ!?」
普通に旨いぞ!
それに特に何も仕込んでなさそうだしな。
林山はセーフだな。
俺は卵焼きも口に運んだ。
やはり卵焼き美味しかった。
「林山さん、これ美味しいよ」
俺は正直な感想を林山に告げた。
すると林山は満面の笑みを浮かべながら、
「当たり前だよ〜〜、だって私が作ったんだから美味しいに決まっているじゃない」
と、エヘンと胸を張りながら言った。
なんだ?何故か妙に嬉しそうだな、何かいいことでもあったのか?
よく分からん、よく分からんけど林山以外のメンバーに睨まれてる....。
次は朝霧のくれた焼き魚だな。
でもこんな魚見たことないぞ。
なんか見た目と色がグロい....。
上手く表現出来ないけどとにかくグロい....。
まあ、朝霧も普通に食べているから大丈夫だろ....。
朝霧は飛島みたいに味覚は変わっていないはずだ。
そう信じたい。
心からそう信じたいです。
とりあえず俺は焼き魚にかぶりついた。
「こ、これは....!?」
う、旨い!旨いぞ!?
なんだ?この味、今まで食べた事のない味だ!
まるで天に昇るような味だ!
何言ってるんだ?と思うかもしれないけど、こういう表現しか俺には出来ない!
これ何の魚だ!?凄く気になるんだけど!?
「朝霧さん、これ凄く美味しいね!何ていう魚?」
気になって仕方がなかった俺は朝霧に魚の事を聞いてみた。
すると朝霧から意外な言葉が....
「知らない....」
「えっ、知らないって....冗談だよね?」
いくら何でも知らない魚を焼いて食べるような事はしないだろ。
だが朝霧は、
「冗談じゃない.....山の中で迷った時に見つけた魚だから分からない....」
信じたくないが、どうやら冗談ではないらしい。
朝霧はあまり嘘を言わない奴だから本当なんだろう.....。
「てっ、迷った!?」
「うん....急に霧が出てきてはれたと思ったら見たこともない湖があった....魚はそこで捕った......」
「それって....?」
それって、もしかして!?
「神隠しってやつなんじゃあ!?どうやって帰ってきたんだ!?」
いや、実際はどうなのかは分からないけどね!
俺、そういうの詳しくないから!
でも多分それは神隠しと呼ばれるアレだよ!!
「秘密....でも、簡単に出られた.......」
それを聞いた瞬間、皆朝霧を見てポカーンとしている。
ある2人を除いて......。
1人は林山、
「さすが悠子!惚れ直しちゃう〜〜(はぁと)」
実は林山は朝霧の事が大大大大好きらしい。
もう愛していると言ってもいいらしい。
でも朝霧は女の子をそういう目で見えないらしいく、林山の片思いだ。
俺的にはそのまま禁断の恋を成就させて二人でイチャイチャして俺の事を忘れてほしい。
そして2人目は高巻、
「あら〜凄いわね〜〜、私も神隠しにあってみたいわ〜〜!そして何かしらの危険物を持って帰って.......ウフフッ!!」
笑ってる、怪しい笑みを浮かべている!?
もうやろうとしている事が分かってしまった。
その危険物を持ち帰ってそれを使って俺をいじめようとしているんだと。
どうか高巻が神隠しにあいませんように!
あったとしても帰って来ませんように!
てか、さっき俺が食ったのはもしかしたらヤバい魚じゃあなかったのか!?
そ、そんな物を俺は....
バターンッ!!!!
俺はあまりのショックによって倒れてしまい、意識を失いかけていた。
「大和くん...大丈夫?」
「ちょっとこれ、保健室に運ばなきゃいけないんじゃあ....?」
「いいんじゃない?ほっといても」
「私が連れていきます!ハァハァ」
「あんたは危ないからダメだ!」
「........」
ここで俺は完全に意識を失った。
この後の事は何も分からない。
ただ分かることは放課後まで寝ていて、目が覚めると保健室のベットの上だった事。
そして何故かパンツ以外は何者かに全部脱がされていた事。
何故か服が綺麗に畳まれていた事。
しかも無くなっていた俺の弁当箱があって、しかも中身が綺麗になくなっていた事ぐらいだ。
多分あの五人の仕業なんだろうけど、何故俺は脱がされていたのだろう。
気になるけど怖くて聞けない......。
こうして、この事件は俺の人生で不思議だった事トップ10に入ることになった.....。
感想、間違いの指摘、アドバイスをお待ちしています