第ニ話「アルカトラズと囚人」
この学校は一年生からクラスが変わらない。
ようするに一年生からメンバーが変わらないということだ。
俺と杉原は最悪な事に同じクラスだ。
だから杉原によるカバディの誘いが休み時間中も、放課後もやってくる。
いくら殴っ.....お話しをしても懲りずに誘ってくるんだから迷惑な話だ。
後、生徒が座る席が決まっていない。
ようするに生徒の自由だ。
その日の気分によって窓際の列の一番後ろとか、教卓の前の列の後ろから三番目に座ってもいいという事だ。
ただしこのシステムのダメな所がある。
それは置き勉ができないという事だ。
なんて悲しいんだ!と他のやつは思っているだろうが俺は置き勉ができるのだ!
その理由は、
ガラガラ
教室のドアを開けた俺は指定席である教卓の前の列の一番後ろに向かった。
そう、俺はクラス公認で教卓の前の列の一番後ろに座れるのだ!
皆も座ろうと思えば座れるのだが、その席の周りに恐ろしい女子五人がその席を囲むように座っていてその席に他のやつが座ろうとすると五人一斉に睨んだり、脅迫みたいなことを言いだす。
俺が他の席に座ろうとすると同じ事が起きる。
だから俺はその席を動くことがなく、一年生の時に座った席をずっと座っている。
俺を囲んで座るこの陣形は通称「アルカトラズ」と呼ばれている。
そして俺の事は、
「おい、囚人が来たぜ....それにしてもあいつスゲーよな」
「俺だったらアルカトラズに耐えられーよ、もって一ヶ月ぐらい....いや一週間だな」
そう、俺はクラスの大半に囚人と呼ばれている。
俺の事を本名で呼ぶのは杉原のアホとアルカトラズの五人と先生だけだ。
多分だけど皆俺の本名を覚えてないんじゃないかな?
アダ名ばっかりで呼ばれていると本名を忘れられちゃうっていうあの現象が起きているんだよ。
俺は正直、囚人というアダ名は好きじゃない。
だって何も悪いこともしてもないのに囚人って呼ばれるのはおかしいだろ?
まぁ、ある意味で捕まっているけど.....。
俺が席に着くともうアルカトラズは完成していた。
俺の左側の席には朝霧悠子という無口で何を考えているかさっぱりな奴が座っている。
とにかく変わっていて、弁当には焼き魚しか持ってこない。俺はこいつが焼き魚以外を持って来ている所を見たことがない。
とにかく変わった奴だ。
そんな朝霧の唯一の理解者が俺の左斜め前の席に座っている林山香恋だ。
こいつは朝霧とは小学校からの親友らしく、朝霧が何も言わなくても朝霧の言いたいこと、やりたいことが大体分かるらしい。
本当、凄いスキルを持ってるよな。
そして俺の右側の席には高巻さよりが座っている。
こいつはドSで、最近の楽しみは俺を苛めることらしい。
もう本当に勘弁してほしい.....。
前なんか空き教室に俺を呼び出し、縄で縛りあげて鞭で叩いて遊び、幸せそうな顔を浮かべていたぐらいだ。
今度はもっと酷いことをされるだろう。
これって苛めだよね?苛めだよね?
それで右斜め前の席は河ノ内飛鳥が座っている。
こいつはとにかくヤバい。もうヤバいとしか言えない。
こいつが好きな人に告白して振られた時に慰めてやったらなんか知らんが付きまとうようになった。
それはもう激しく付きまとうようになった。
そしていろんな事をして既成事実を作ろうと迫ってくる。
今も息を荒くしてノートに何かを書き込んでいる。
多分何かの計画を考えているんだろう。
河ノ内は何をしてくるかが分からんから気をつけねば.......。
最後に俺の前の席に飛島エリカが座っている。
こいつは日本人とフランス人のハーフで父親がフランス人で、母親が日本人だ。
こいつは五人の中だと多分一番まともな奴だと思う。
ただ目付きが悪く、それで授業中とかチラチラ見てくるから本人は睨んでいるつもりはなくても睨んでいるようにしか見えないので俺は授業中ビクビク震えている。
それに他の四人もチラチラ見てくるので怖くてろくにノートも書けない。
誰か助けてくれないかな....無理か.......。
もう不登校になっちゃいそう。
そんな事を考えていると、
キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン
教室にチャイムの音が鳴り響く。それと同時に担任の雨雲舞が入ってきた。
雨雲先生はアルカトラズの味方で、通称「監獄長」と呼ばれている。
この人もアルカトラズと一緒に俺に恐怖を与えてくる。
俺何かしたかな?何かしたなら土下座して謝るから許して欲しいです....。
そして、ホームルームが始まる。
「起立、礼!着席!」
号令は委員長である俺がかける。
委員長は各クラスから一人選ばれることになっている。
普通なら俺よりも委員長に向いているがなるべきなのだが、何故か俺になってしまった。
それもこれもあのアルカトラズの五人のせいなんだ......。
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