第一話「目覚めと妹とカバディ」
「ハッ!? ハァハァハァハァ....」
目が覚めると俺は大量の汗をかいていて、息も荒く、喉がカラカラだった。
まあ、こんな夢を見たんだから当然だろうな。
この夢は俺が今まで見た悪夢トップ10入り確定だ。
それぐらい、ひどい夢だった……。
それにしても.....、
「ハァ〜〜、久しぶりに見た夢があれかよ....」
俺はここ数年間夢を見ていなかった。
いや、本当は見ているのかもしれないが、少なくとも記憶にはない。
実際、人は見た夢の殆どを忘れてしまうらしい。
「何か変な夢だし、それに何か……妙に現実的な夢だったな、本当に起きそうな気が.....」
まさか、正夢とか!?
あんな事が起きたら俺死ぬじゃねぇか!
まだ死にたくねぇよ! とバカな事を考えていると、
ピピピ! ピピピ! ピピピ!
そんな思考を遮るように目覚ましが鳴り響いた。
俺は目覚ましを止め、時間を見ると、そろそろ学校に行く準備をしないといけない時間だった。
「そろそろ着替えないとな」
そう呟きながらベットから降りた俺は、汗でびしょ濡れになった服を脱ぎ、タンスからタオルを取り出し汗をふいて制服に着替えた。
制服に着替えた俺は諸々の用意と共に部屋のドアを開け、廊下に出て階段に向かって歩きだした。
その途中で俺は、朝から会いたくない人物ランキングナンバーワンである人物と遭遇してしまった。
「光......」
そう、自分の部屋から出てきた妹の大和光だ。
光は俺が高校三年生になってから口を聞いてくれない。
理由はよく分からんが、多分実の兄をキモいやらウザイやらと思っているのだろう。
というか俺の事を家族と思ってないんじゃないかと俺は思っている。
前なんか話かけただけで舌打ちをし、私に話かけるなという目で見てきた。
ひどい妹だ。
そんな事を思いながら見ていると、こちらの視線に気がついた光は、
「チッ!」
と舌打ちをし、案の定こちらを睨んできた。
本当にひどいなー、ちょっと見てただけじゃねえか。
と俺は寂しく心の中で呟きながら階段を降りた。
階段を降りた俺はリビングへ向かい、カラカラになった喉をお茶で潤した。
俺はテーブルの上にある朝御飯を食べてから学校行こうと思ったが、時計を見るとすぐに家を出ないといけない時間だった。
俺は朝食を抜かないといけなくなった事を悲しみながらテーブルの上に置いてあった弁当を一緒に持って降りてきていた鞄の中に入れてから玄関に向かった。
玄関に着いて靴を履いていると、リビングの方から母さんが、
「椋〜〜〜! 今日の夜は父さんも母さんもいないから御飯適当に食べてね〜!」
と呼びかけてきた。
でも作って食べるのはダルいし....と言っても今の俺はお金ないしな.........。
「分かった。でも金は置いといてくれよ、作るのは面倒だし」
「ハイハイ、考えておくわ!」
ハァーー、どうせ置いてくれてないな....。
そんな事を思いながら俺は家を出た。
俺が通っている学校は家から歩いて10分の所にある。
学校の名前は....あれ?忘れちまった。
まあいっか。知らないとダメって訳でもないだろ。
俺が通っている学校は基本的に自由な学校だ。
規則はあってもないようなものだし、授業中もうるさくしたりして周りに迷惑をかけないかぎりは注意されない。
つまり授業中寝ていてもいいし、ゲームをしたり、本を読んでいてもいいと言う事だ。
しかしそれで大学にいけなかったり、就職できなくても自分の責任だから学校側のせいにするなよ?という態度を学校側は取っている。
もう教育を放棄しているんじゃないか?
というか、もう学校の意味無くない?
そんなのでよく成立しているよなこの学校?と常々、折に触れるたびに俺は思う。
多分俺以外の、この学校に通っている生徒全員もそう思っている筈だ。
きっとそうに違いない。だけど、意外とこの学校人気があるんだよな……、何故だ?
そんなくだらない事を考えながら歩いていると学校に着いた。
俺は、朝から校門で説教を受けている不幸なやつを見つけてしまった。
朝から何をした奴がいるんだ?と気になった俺は、少し近づいて話を盗み聞きすることにした。
「全くお前は朝ぱらからカバディーー!! と叫びおって、一体何がしたいんだ!」
教師の方は呆れている様子だった。
そりゃそうだろ。
朝からカバディと叫ぶアホは世界に二人もいないしな。
しかもそのアホは、
「何って、カバディがしたいんです! カバディがしたくてうずうずしているんです! は、早く俺に...俺にカバディを〜〜〜〜!!」
「カバディって一人じゃできないだろ、大人しく教室に行け....」
「い、嫌だーー!! や、大和がきたらきっとで、できる! だからもう少し待ってくれ〜〜〜!」
このアホ、杉原拓也は大のカバディ好きだ。
だが、やるにしてもメンバーが足りないので俺を加えようと三年間ずっと誘ってきている。
いい加減に諦めてくれないかな......俺は心の底から思っている。
「うわあぁぁぁぁぁ!!嫌だ〜〜〜〜!俺にカバディを〜〜〜〜〜〜!!!!」
杉原は先生たちに強制連行され、校舎の中に消えていった。
本当にあいつアホだな.......。
先生たちにここまでされるのはこの学校であいつしかいないぞ.....。
「とりあえず俺も教室にいかないとな」
俺は少し急ぎ気味で教室に向かった。
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