第1話:深夜のカップ麺と、体内の緊急最高幹部会議
不摂生な男子高校生、佐藤。彼が知らない体内の裏側では、可愛い病気美少女たちが、彼(と自分たちのWi-Fi環境)を守るために毎日ドタバタの会議を繰り広げていた――!画面には可愛い女の子しか出てこない、世界一健康的な(?)体内すれ違い日常コメディ、開幕です!
宿主の男(17歳・高校生)の視界は、ひどく狭くなっていた。時刻は午前2時。明日は期末テストの最終日だというのに、机の上には全く頭に入らない世界史の教科書が広がっている。「……腹減ったな。夜食、食うか」男は重い体を揺らし、キッチンへ向かった。手にしたのは、背徳感の塊のような『特盛・濃厚にんにくマシマシ豚骨醤油ラーメン』。ポットの熱湯を注ぎ、三分を待つ。男がそんな「おめでたい不摂生」を始めようとしていた、まさにその瞬間。彼の体内にある、ピンク色で統一されたファンシーな作戦本部――通称『健康管理(?)室』では、サイレンがけたたましく鳴り響いていた。「緊急警報! 緊急警報! 宿主、本日三度目の炭水化物および塩分の過剰摂取行動を確認! 繰り返す、にんにくマシマシが来ます!」モニターに映るカップ麺のパッケージを見て、部屋の隅のコタツでジャージを着て丸まっていた少女が、びくりと肩を揺らした。「……無理。にんにくマシマシとか、脳のキャパ超える。宿主くん、もう諦めて一緒に寝よ……? 私が布団を十倍重くしてあげるから……」彼女の名前はうつ病ちゃん。いつもネガティブで部屋から出ないダウナー系の美少女だが、その「人間をベッドから一歩も出さなくする能力」は、過労死から宿主を守るための最強の防衛手段でもあった。「ちょっとうつ病ちゃん、まだ寝る時間じゃないわよ!」そう言って、作戦本部のセンターにあるマイクをひったくったのは、赤と白のアイドル衣装に身を包んだ少女――インフルエンザちゃんだった。ツインテールを揺らしながら、彼女はモニターを睨みつける。「宿主のバカ! 明日テストだからって、睡眠時間二時間でそんなギトギトのラーメン食べたら、明日の朝には免疫力がガタ落ちじゃない! 私たちのマイホーム(宿主)を壊す気!?」「まあまあ、インフルちゃん、そう怒りなさんな」そう言って、のんきにポテトチップスを齧りながらコーラを飲んでいるのは、ぽっちゃり体型が可愛い高血圧ちゃんだ。「塩分と脂質が来るってことは、うちらのフェス(お祭り)の時間ってことでしょ? 血流スピード上げて、血圧アゲアゲでサイリウム振っちゃうよ〜?」「あんたはいつもそれなんだから! だいたい、宿主が死んだら、この部屋のWi-Fiも切れてサブスクでアニメ見られなくなるのよ!? 私たちも一蓮托生(いっしょに消滅)なんだからね!」インフルエンザちゃんがガミガミと怒鳴り散らしていると、ガサガサと画面のノイズが走り、モニターが強制的に切り替わった。映し出されたのは、真っ黒なゴスロリ衣装に身を包み、包帯を腕に巻いた中二病全開の美少女――過激派『人間撲滅病隊』の幹部、ペストちゃんだった。『ふははは! 愚かな穏健派どもめ! 宿主の免疫力が下がった今こそ、我が黒死の呪いを解き放つ絶好の機! この男を絶命させ、人類滅亡への第一歩としてくれるわ!』「出たわね過激派のロリ中二病!」インフルエンザちゃんが机を叩いて立ち上がる。『フン、何を言うかと思えば! 私が本気を出せば、この男など三日で――』「はいストップ。三日で殺したら、あんたの分のYouTubeのサーバーも消えるよ。推しの配信見られなくなるけどいいの?」『え……?』ペストちゃんがピキッと固まる。「あんたたちが勝手にウイルス送り込んできたら、宿主が死ぬ前にうちらが消えるの! 迷惑だから、今日のところは引っ込んでなさい!」インフルエンザちゃんは容赦なく通話切断ボタンを押した。そして、キリッとした表情で、体内の全細胞(可愛い女の子たち)に向けて通信マイクを握る。「全美少女細胞、および穏健派病気ちゃんたちに通達! これより、宿主の『強制シャットダウン作戦』を敢行します! 高血圧ちゃんは、ラーメンを食べ終えた瞬間に血流を限界まで緩やかにして! 血糖値スパイクを起こすのよ!」「はーい、お安い御用!」「うつ病ちゃんは、男がベッドに入った瞬間に、脳内に最高級の『強烈な睡魔』をリリースして!」「……ん。がんばる。宿主くん、おやすみ……」「よし! 宿主をたっぷり十二時間睡眠させて、明日の期末テストは寝坊で遅刻させるわよ! 学校なんて休めばいいのよ!」「「「おーーー!!」」」画面の向こうの女子だけの世界で、少女たちは一致団結して拳を突き上げた。やっていることは「寝不足の男をただ寝かしつけるだけ」なのだが、彼女たちの表情は、世界を救う救世主そのものだった。◇「……ぷはぁ。食った食った」スープを飲み干した男は、自分の部屋に戻ってベッドにゴロンと横になった。その瞬間。「……あれ? なんか、めちゃくちゃ眠い……」いつもならコーヒーを飲んで踏ん張れるはずなのに、今夜は泥のように体が重い。抗えないほどの、優しくて、どこか過保護なほどの睡魔が、全身を包み込んでいく。「だめだ、五分だけ……目を閉じる……」男はスマホのアラームをセットすることすら忘れ、深い深い眠りに落ちていった。外の世界では、ただの男子高校生が夜食を食べて寝落ちしただけ。しかし彼の体内では、今夜も可愛い女の子たちが、彼の命(と自分たちのアニメ環境)を守るために、大騒ぎの完全勝利を収めたのだった。(第1話・完)
第1話をお読みいただきありがとうございました!宿主の佐藤くんをなんとか生かすため、今日もインフルちゃんたちは独自の健康管理(という名の嫌がらせ)に励んでいます。学校は遅刻確定ですが、命は助かりました。もし「面白い!」「この病気ちゃんたちの日常をもっと見たい!」と思ってくださったら、ぜひブックマークや評価(☆☆☆☆☆)で応援していただけると嬉しいです!励みになります!次回、翌朝に大慌てした佐藤くんが「風邪薬」を飲んだことで、体内にお堅い風紀委員キャラがやってくる……!?どうぞお楽しみに!




