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美人すぎる国会議員と行く異世界旅  作者: Y.イヨネスコ
第一章 異世界転移

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カットベア

 食事のメインはしばらく三つ首蛇トリスネクだった。

 でかいだけあってなかなかに肉厚で脂分たっぷり、美味かった。

 ぜひ次は蒲焼きでいただきたい。

 焚き火で炙って燻製ぽくなったトリスネクをかじりながら最後尾を歩く。

 彼らの旅の同行者となってから元の世界の食品類は全くアポーツしていない。

 それよりもダイから仕入れた情報をもとに異世界の脅威に対抗すべく様々なアイテムを現出させていた。

 そのうちの一つ安全ヘルメットが俺の頭には鎮座していた。

 本当はバイク用で目ン玉も保護できるフルフェイス型などシールド付きが欲しかったがサイズ的にまだ力不足だった。

 ヘルメットはハゲるとかいうので最近とみに淋しくなった髪の毛のために被りたくはないが仕方ない。

 ヘルメットはポリカーボネート製でたしか防弾にも使用されているという耐衝撃性に優れた素材で……アウッ!


 頭や首に強烈なショックを受けて膝をついてしまう。

 同時に武器や防具を蓄えて膨れ上がった背中の毛布から中身が散乱した。

 振り返るとそこにはクマもどきの怪物カットベアが二本足で立っていた。こいつのツメに切り裂かれたらしい。

 クソ、目まいがするぜ。

 クラクラする頭を理性に全振りして腰に装備してあったクマ避けスプレーをすかさず構える。

 夢の中のはずなのにメッチャ頭が頭痛だ。


 日本中を騒がせたクマ騒動のせいでこういった護身グッズを目にする機会を得ていたのは俺にとって僥倖といえるだろう。

 至近から唐辛子の辛味でもあるカプサイシンを主成分とした液体を噴射する。

 顔面を直撃されたカットベアは咆えてツメをめちゃくちゃに振り回した。

 トリスネクの毒液の成分は知らないが異世界でも目潰しは有効ということだ。しかもこのスプレーは呼吸器官などにも激しい刺激をもたらす。

 そして拳銃を取り出してはみたものの明らかにストッピングパワーに欠けている気がする。

 どうしたもんかとためらっていたら隙だらけのカットベアに駆けつけてきたダイが一瞬でとどめを刺してくれた。

 これもエクストラの一つで間合いにさえ入っていれば威力を強化できるオーバーエッジという能力だそうだ。


「やっべぇー」


 俺は被っていたヘルメットを確認してゾッとした。後頭部あたりから天辺までバックリと割れていたのだ。


「今夜はカットベアづくしだな」


 ダイが髭面をほころばせ俺は苦笑を返した。

 さっそくその場で解体作業が始まった。

 血抜きが終わり俺も参加すべく愛用のフィッシングナイフを取り出す。やや出刃包丁よりのデザインなのがポイント高い。普通の出刃包丁と違って錆びにくく柄が樹脂製というのが異世界向きかも。

 するするとナイフを滑らせバラして骨を抜いていくと子供たちが拍手をした。


「すごーい、父ちゃんより上手だよ」


 いまだ手元のよく見えないチュウさんの息子がはしゃぐ。チュウさんの本業は猟師だという。


「へえ、マモルさんは肉屋でもしていたのかい?」

「まあそんなところです」


 魚から始まり牛、豚、鶏肉もお手のものだ。調理だって道具や調味料さえあればかなりの料理ができる。芸は身を助くだ。


「おっとこりゃ当たりだ」


 毛皮と内臓を担当していたダイさんが声をあげた。

 見ればぬらりとした黒っぽい塊をつまみ上げていた。


「それは何ですか?」

ヴェノムストーン(クマノイ)


 んん?

 言葉がおかしかった。クマノイは胆嚢だぞ。該当する概念がなかったのかね。


「薬の材料よ。錬丹術で霊薬を作るの」


 首をひねった俺にアンズさんが教えてくれた。この世界まだまだ知らないことばかりだ。


「これでいいかしら?」


 アンズさんの妹のスモモさんが破れた毛布を縫い合わせくれたようだ。

 スモモさんはチュウさんの奥さんでトリスネクの毒液を浴びなかったもう一人だ。


「どうもお手数をおかけしてすいません」

「ついでに背負いやすいよう紐も付けておいたよ」

「こりゃ何から何まで申し訳ない」

「こっちも直ったよー」


 見ればケンちゃんがヘルメットを修理してくれたようだ。

 よくわからん接着剤と蔓草の装飾にカットベアのツメをツノのように付けられて兜のようになっていた。強度が落ちているだろうが捨てるという選択肢はこれでなくなった。

 ありがとうねケンちゃん。


 次の夜営地はありがたいことに小川のすぐ近くだった。

 もう10日は風呂に入ってないし慣れないブッチャー作業でかなり汚れたので、ダイと毛皮の処理をしたあと衣服の洗濯や体を洗ったりした。

 ダイの上半身は筋肉モリモリの胸毛モリモリで鬼泣かせの的みたいだ。ボールを命中させたら景品くれるかな。


「マモル、背中のそれはタトゥーか? それともアザなのか?」

「何の話? そんなのないよ」


 ダイが妙なことを言うので背中の模様をなぞってもらった。右の肩甲骨から胃の裏側までかなりの大きさだ。

 でもくすぐったいぞ。


「いったいどんな形?」

「ちょっと待ってろよ、写すから」


 川原の砂地に小枝で模写してくれるダイ。

 俺はポカンと口を開けてしまった。


「なんでこんなもんが俺の背中にあるんだ?」


 俺は日本列島を背負っていた。






 

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