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美人すぎる国会議員と行く異世界旅  作者: Y.イヨネスコ
第二章 湿布怒濤篇

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水禍の襲撃

ようやく生活リズムが通常に戻りました。

二、三日おきぐらいのペースでのんびりと投稿を再開します。


「川から禍獣!」


 リンリン騎士団が騒然とする。


「止まるな、駆け抜けろ!」

「馬車を守れ!」


 襲撃されたのは反対側が切通しというもっとも禍獣に襲われたくないチョークポイントだ。

 安全なルートじゃなかったのかよ。

 やはり禍獣を操る術があるのかヌシの権能におびただしい数の反応がある。

 カワクモがミズスマシのように川面を滑って並走してくる。ナゲナワグモのように粘球のついた糸で獲物を川に引きずり込む習性がある。

 マウンテンバイクに何本か絡みついたのをクモキリの大鎌で切断する。

 これは査定に出さなかったので何級か不明だが使用者の意のままにサイズを変化させられる如意棒のようなレリックだった。

 今は片手ハンドルでも扱えるちょうどいい長さと刃渡りに調整してある。


「止まれー! タコアシが行く手を塞いでいる!」


 ホムラのエクストラだろう火柱が前方に何本も屹立した。

 足が止まったところに水面を突き破って巨大な影が襲いかかる。

 大ワニガエルだ。

 でかくて速くて凶悪な牙がびっしり並んだワニ顔が迫りくる。


「どっせい!」

「えいっ!」


 大鎌を巨大化させて切り裂く。

 シロミも大剣で一刀両断にしている。


「うわーっ!」


 騎士団員の一人が叫び、カワクモに引きずり込まれそうになっていた。

 すると川面を縦横無尽に白波が疾走した。リンリン団長だ。またたく間にすべてのカワクモを葬り去ってしまった。

 神速だと水の上を走れるんだ。妙に感動してしまった。

 まだまだ水中には多くの禍獣が潜んでいた。

 川面にいくつも波紋が広がりその中心から水の矢が射ち出された。元世界のアーチャーフィッシュ、いわゆるテッポウウオみたいな禍獣なのだろうが威力が桁違いだ。


「うひーっ!」


 俺はクモキリの大鎌を幅広の刃にして盾代わりとした。砕け散った冷たい水飛沫がかかる。首筋からひんやりとした水滴が流れ込んだ。

 やべっ、オシッコしたくなっちゃった。


 馬車は無事かと見れば魔工品という触れ込みの車体はびくともしていない。輓馬はシールドのエクストラ持ちの御者が守っている。他の乗馬も岩陰や盾に守られているがジリ貧だ。


「ピカモン!」

「川に近づけない!」

「このままだとさすがに馬車が保たんぞ」


 ピカモンは驟雨のような水の矢のためその場に釘付けにされていた。

 ホムラの火弾も水面下の相手には効果がないようだ。


「俺が隙をつくる」


 あまり手の内を晒したくないがこの状況では致し方ない。手榴弾を取り出して投擲した。

 派手な爆発に水柱が上がりウォーターアローが沈黙した。禍獣め衝撃波に目を回したか。


 駆けるピカモンのハゲ頭が光って電撃が何度も川に放たれた。

 プカリプカリと大量の禍獣と魚が浮かび上がってくる。どれがアーチャーフィッシュかよくわからん。

 タコアシは脚そのものが胴体のようで吸盤のついた線虫みたいなのがいくつも流されていく。


「やったわね」


 シロミが力を抜いて声をかけてきた。

 全滅させたと安堵の空気が広がるが俺の権能には依然として脅威が反応していた。


「まだだ! 油断するな!」


 声を張り上げた俺をシロミが戸惑ったように見つめた。騎士団や冒険者も「こいつなにビビってんだ」という態度だ。

 そこへ川霧がそよそよと押し寄せてきた。

 濃くはないがドライアイスのスモークのように足元を包みあたりは朧となり果ててしまう。

 霧の奥に黒い影が生えてきた。


「敵意を感じない……いや、シャドー・ウィスパーが使えない」


 シロミの声に焦りが混じる。


「団長、電撃が出せません!」

「わたしの神速も発動しないわ。みんなエクストラは使える?」

「だめだまったく発火しない!」

「くそ、エクストラが消えちまった」


 そこかしこから絶望的な報告が届く。

 俺のアポーツも反応なしだ。

 だがヌシの権能は有効みたいなので結界を張ってみる。いつもの範囲型ではなく身体に纏わりつくような結界が張れた。

 よし、アポーツに手応えありだ。

 ああ、尿意が……。


「川のヌシだ」


 リンリン団長がつぶやいた。


「いかにも」


 黒い影が応え俺に向かってくる。

 すかさずシロミが割って入る。

 黒い影はまるでウナギの集合体だ。ぬらぬらと蠢く体表に感情の読み取れない目がある。


「邪魔だ」

「きゃっ!」


 体表から黒い触手がほとばしった。ウナギだかドジョウだかわからん蠕動するものがシロミを蹂躙する。


「ちよっ、いやーっ!」


 威武岐アーマーの隙間から潜り込んだ触手がシロミに悪さをしているようだ。

 なんと、うらやまけしからん!


「やめろ!」


 俺もとっさに助けるべくシロミにとりつく。タイミング悪くその瞬間に威武岐アーマーはアミュレット化して思いきり巨乳を鷲掴みする形になった。


「あっ」

「やっ」


 思いきり張り飛ばされた。


「己は水蛟(みずち)精の川姫と申す。汝が名はいかに?」

「いたた……も、物部守」

「おう、おう、物部か。これは相手に不足なし」


 いやいや、なに喜んでやる気になっているんだよ。というか女だったのか。

 たしかに武士(もののふ)の語源という説もあるけどさ。こいつもミズク様と同じで過大評価するのか。

 古代物部(もののべ)氏の栄光は物部(ものべ)姓の俺と無関係だから。


 チョロッ。

 まずい、括約筋め仕事しろや!

 小便の出だしは不調でキレも悪いくせにこういう時だけ節操なく漏れやがる。


「この男を置いて立ち去れ」


『おいてけぼり』の怪談みたいだ。水妖のポピュラーなモチーフらしいが。


「そんなことができるか!」


 シロミや騎士団が色めき立つ。

 ホムラパーティーは反応なしだ。


「俺に任せて先に行け」


 俺は悠然とジャバジャバ川に踏み込んだ。


「さすが、いい度胸だ」

「マモさん!」


 引き止めるな、膀胱が限界突破してんだよ。

 振り向くことなくバイバイと手を振る。ようやく腰の高さまで深くなった。

 放尿。

 至福である。

 霧が濃くなり音が消失した。



 

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