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美人すぎる国会議員と行く異世界旅  作者: Y.イヨネスコ
第一章 異世界転移

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祈り


 妖精の声は風に溶けるほどか細かった。


「……さみしいの、一緒にいて……」

「もちろんだとも。もう離さないよ」


 俺はそっと妖精を抱きしめた。


(離れてマモさん。これはまやかしよ)


 シロミが俺の肩を揺する。


「パパ、私を守って」

「誰にも邪魔はさせないよ」


 二度とあんな思いはしたくない。

 俺はシロミに拳銃を向ける。

 だがそれより早く猪突アーマーが展開して着弾、火花を散らす。

 ならばこれだ。着火ずみの爆竹を顔の前にアスポートしてやる。練習した甲斐があったというもんだ。

 ひるんだ隙に妖精の手を取って逃げる。

 置き土産に手榴弾を何個か放り出す。爆発を回避するためシロミが後退した。

 逃げ切れるわけがないので距離が取れたところでパンツァーファウスト3をロックオンしてぶち込む。

 シロミは大の字になって倒れ込み動かなくなった。アーマーも解除されている。


「どんなもんだい」

「パパ凄い」


 妖精は小さな手を叩いて喜んだ。


「そういえばママはいないのか?」

「いるよ、ほら」


 むばたまの黒髪をした女性がいつの間にか妖精の後にひかえていた。


「やあ久しいな」


 美しい女性は伏し目がちに会釈した。

 そうだ俺はこの友人の妹と結婚して息子を授かったんだ。


「それちょうだい」


 妖精の息子が使用済みのパンツァーファウスト3をねだった。基本的に使い捨ての空薬莢みたいなもんだから価値はないも同然だ。


「これはもう使えないからもっと新しい素敵な物をあげるね」

「わーい!」


 俺がどれにしようかと検索をかけると妖精が覗き込んできた。


「うわぁたくさんある」

「どれがいい?」

「うーんとね、これ」


 あの影のように捉えどころのないアイテムを選んだ。


「これは難しいかな」

「これがいいの!」


 妖精は影に手を伸ばした。

 その刹那、影から光の矢が放たれ妖精の額に突き刺さる。


(目を覚ませ色ボケじじい!)


 強烈な思念が俺の意識を張り飛ばした。


「色ボケたぁ何だ! 俺の嫁と子供だぞ!」


 俺は自分の声で我に返った。

 俺は植物の根か(つる)のような物に拘束されていた。

 シロミがギガースの大剣で切り払っている。

 夢? 幻? 花の妖精も女性の姿ももうなかった。


「行くわよ」


 シロミに首根っこを掴まれ引きずられる。老人虐待はやめろ。

 美しかった花畑は季節外れのように萎れた花ばかりになっていた。

 すでに夜は明けかけている。

 アスポートでテント類を片付け急いで撤収する。

 ドン吉の背中から振り返るとそこには妖精どころか植物の気配すらなく、ただ白骨の散らばる荒地だけがあった。

 ただ地中を網目のように張り巡らされた地下茎の成れの果てが確認できた。

 その全体像は人間の脳を上下逆さまにしたような形状をしていた。

 今度から地中も探索してから結界を張ることにしよう。


 それにしても結婚も同棲もしたことないのに幻覚って恐ろしい。そんな奇特な女性がいたなら床の間に大切に飾っておくわ。

 子供と手を繋いだ感触がいまだに残っている五指を見る。錯覚というにはあまりに懐かしい感じがして切ない気持ちになる。


「シロミ」

「何よ」

「シロミもなにか幻覚とか見た?」

「別に」


 あ、これは見たな。


「正直に言ってごらん。聞いてあげるから」

「だから見てないって」

「そうかエッチなやつかー、そりゃ話せんわな」

「それはドン吉」

「え、ドン吉も夢見てたのか」

「これよ」


 シロミがドン吉の体験したらしい幻覚を視覚情報として伝えてきた。

 それは存在しない雌を相手に後ろからヘコヘコとエアプレイしている姿だった。


「「ぷっ!」」


 二人して大爆笑してしまった。

 これで盛りがつかなければいいのだが。



 ✳ ✳ ✳ ✳



 ※第三者視点


 シロミが起きるともなし寝るともなしにうとうとかしていると「敵襲!」というマモルの叫びが届いた。すぐにテントから飛び出しマモルの横についた。



「何者?」

「分からないテリトリーの内側にいきなり現れやがった」


 マモルの視線の先には花が揺れているだけだ。シロミの殺気感知、シャドー・ウィスパーにかすかな反応があった。それは強いて表現するなら飢え、渇きに近いものだ。


「止まれ!」


 マモルが89式を肩付けした。だがすぐに放り出して駆け出す。


「マモさん!」


 よくはわからないが何か悪いことが起きているのは確かだ。シロミは警戒しながら後を追った。

 しゃがみこんだマモルの前には誰もいない。だがマモルはそう思っていないようだ。

 接触テレパスで視覚を共有した。

 そこには花の妖精が微笑んでいた。


(離れてマモさん。これはまやかしよ)

(ありがとう。おかげで助かったよ)


 マモルは立ち上がると小舟をアポーツして指さした。


「うつろ舟だ。さあ元の世界に帰ろう」

「帰れるの?」

「これで日本は救われる」


 シロミとマモルは大歓声に迎えられて帰還した。

 様々な式典のあとすぐに総裁選があり立候補した。

 対抗馬はあのキンジローだ。

 多くの候補者から決選投票へと進み僅差で勝利した。

 次いで内閣での総理大臣指名選挙にのぞむ。

 これは圧倒的投票数であった。憲政史上二人目の女性首相が誕生した。

 さっそく組閣して小田野内閣が発足する。

 祝福の声に包まれいよいよ所信表明演説の日がやってきた。


 壇上のマイク前に登り、これは現実かと疑問符が浮かんだ。

 笑顔ばかりの会議場を見渡しその思いが強くなった。そんなはずがない。早く起きないと。

 焦燥するシロミの眼前を光の矢が横切った。


 目覚めると身体を蔓でがんじがらめにされていた。


「威武岐!」


 アミュレットが装甲化してそれだけでブチブチと蔓を引き千切った。

 起き上がって見回すとドン吉が盛んにヘコっていた。マモルもまた腑抜けた表情で拘束されている。

 お気楽な夢を見ていた自分にも対しても苛立ちマモルに思念を送り込む。


(目を覚ませ色ボケじじい!)

「色ボケたぁ何だ! 俺の嫁と子供だぞ!」



 ✳ ✳ ✳ ✳



「最大レベルの警報発令!」


 キンジローが真っ青になって叫んだ。

 たまたま官邸の人類存続対策本部に詰めていたら物部守も小田野銀鏡も花畑の中に倒れてピクリとも動かなくなってしまった。

 何が起きているのかさえわからない。

 物部と小田野、二つの映像はまったく同じ絵面を垂れ流しているだけだ。

 放送が続いているということは二人ともまだ死んではいない証拠だがこの先はわからない。


「状況に変化は?」


 駆けつけた武市総理が開口一番そう尋ねた。


「ありません。小田野さんが物部氏に接触テレパスを試みたようで、それからずっとこの状態です」

「専門家の意見は?」

「食虫植物のような生物の罠か、あるいはフィトンチッドのような防御システムの可能性があるとのことです」

「フィトンチッド?」

「森林浴で健康にいいイメージですが本来は殺菌や防虫のために発散しているそうです」

「遅くなった」


 そこへ麻生田本部長が現れる。


「全国の神社仏閣に加持祈祷を依頼してきた」

「私の方からも『ゲミニス渡航計画』に参加している陰陽師たちに協力を仰いだところ、破魔矢とか蟇目とかいう鏑矢の儀式を執り行ってもらうことになりました。少しでもご利益があればいいのですが」

「こちらからできることといったら今は祈る事だけですものね」


 武市総理はキンジローの報告に大きくうなずいた。


虚仮(こけ)の一念岩をも通すと申します。ひたすら祈りましょう」


 夜通し物部守と小田野銀鏡の加護を祈って日本と近隣各国および中東でも祈りが捧げられた。

 夜明け前、もはや静止画と変わりない画面に閃光が走った。

 小田野銀鏡が瞼を開き「威武岐!」と守護を叫んだ。

 蔓をものともせず立ち上がると大剣を振るい邪魔な蔓草を薙ぎ払う。


「よーし、やっちゃえー!」


 武市総理が拳を振り上げた。

 日本が揺れ、世界が快哉を叫んだ。


 後の解析で閃光は眩しすぎる一条の光であることが判明した。

 光線の正体は不明だが懸命に祈った人々は自分たちの祈りが『ゲミニス』に届いたと信じた。



新年明けましておめでとうございます

拙い文章を読んでいただきありがとうございます

今年もよろしくお願い致します

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