キャラバン
湯屋の前の広場で威武岐の鎧兜、猪突アーマーをシロミさんが捧げ持つと一瞬でアーマーは光の粒子となり全身にまとわりついて装着完了となった。
宇宙刑事かよとツッコミをいれたくなる。
威武岐さんよ、おかしくないか。俺の時はそんな機能なかったよな。しかも羽衣のように軽いという。
絶対に依怙贔屓だろ。
なんとか言えよ、威武岐ちゃんよ。
銀色の猪突アーマーに包まれたシロミさんは
目隠しをして木剣を握った。
対するは黒鬼ジグロさんだ。ジグロさんも目隠し状態だ。
二人はいきなり激しく打ち合った。
ジグロさんはまだわかる。なんで国会議員のシロミさんが対等に稽古できるの?
息子のクロト君を手もなくブギーマンに攫われた反省からジグロさんは視線感知のゲイズ・リンクを鍛えることにしたのだ。
そして練習相手に選ばれたのが敵意感知、シャドー・ウィスパー持ちのシロミさんだ。
どちらのエクストラも感覚を研ぎ澄ますとこんな達人めいたことができてしまうのだ。
「突いてもらえるか」
距離をとってジグロが求めた。
「行きます」
シロミさんが応じるやいなや神速の突きが放たれた。
乾いた音がしてシロミさんの木剣が俺の前まで飛んできた。あっぶねえな。
「これだけ離れた間合いでようやくか」
ジグロさんは不満なようだがそんなに離れていたかな。というか見えない攻撃を弾いたことが凄いと思うぞ。目で見ていないから出来る芸当なのか。
シロミさんが木剣を取りに来て立ち止まった。木剣が見当たらないのだ。
「あれ? マモルさん私の剣は?」
「手品するよー、手品するよー」
俺は手の平から木剣を生んだ。
「えーっ!?」
ふふふ、俺だってレベルアップしているのだ。自分がアポーツした物以外でもアスポートできるようになったのだよ。
「マモルさんの成長速度は異常だ」
ジグロも目を丸くしていた。
もっと褒めてくれ。
実はこれだけではないのだ。
ヌシとしての権能、気配察知の範囲が日々広がっているのだ。
現在は半径4キロメートルほどだ。
およそ水平線までの距離と同じぐらいだな。
解像度は悪いので二人のように打ち合うなんて不可能だが鬼ごっこぐらいは出来るぞ。
その俺のテリトリーに何者かが侵入してきた。けっこう大人数のようだ。
するとシロミさんが勘づいたようだ。
続けてジグロさんも反応した。
ヌシの立場がないんだけど。
「おやおや、お客さんかい」
いつの間にかハミコ様が湯屋から出てきていた。あんたもか!
やって来たのは隊商だった。
馬に似た駄獣ウマシカなどを連ねてニューオオガに来てくれたのだ。
脚の太いばんえい競馬の馬みたいのやロバサイズなどの駄獣に荷物を山盛りだ。
商人だけではなくて護衛らしきいかつい連中もいた。
その中でもすらりとスマートな美男子がひときわ目を引いた。
燃えるような赤髪に深紅の瞳。
角の色まで朱色だ。
「そんな……まさか……そんなはずがない」
珍しくシロミさんがうろたえていた。
あんた二次元大好きじゃなかったのか。
三次元の男には見向きもしないとかなんとか。
「……様」
え?
「アスラー様」
恋する腐女子がそこにいた。




