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美人すぎる国会議員と行く異世界旅  作者: Y.イヨネスコ
第一章 異世界転移

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ジグロ


 黒鬼の名前はジグロ。

 開拓地に近づいたあたりからたびたび視線を感じるようになったという。

 そうジグロのエクストラは視線感知、ゲイズ・リンクだった。

 そして彼の息子クロトがさらわれた。アグネスと同じように気がついたら消えていたという。

 自分以外に向けられる視線は感知できないので防ぎようがなかったのだろう。

 そして開拓地にいるツノのない男を差し出したらクロトを無事に返すと言い残していったそうだ。

 

 俺に用があるのなら直接俺のところに来ればいいのになんともまどろっこしいことだ。

 このジジイの何をそんなに恐れているのだろうか? そして何が目的なのだろう?

 

「よしわかった、行こうじゃないか」

 

 俺は珍しく頭にきていた。子供を人質するなんて卑劣な行為を許せるわけなかった。

 ここまで腹が立ったのは消費税が導入された時以来かもしれない。

 

 一人で行こうとした俺に鬼族がぞろぞろとついてくる。一人で来いとは言われなかったようだがこれは追い返されるパターンだな。

 案の定「そこまでだ」と制止の声がかかった。たちまち鬼族から抗議と罵詈雑言が浴びせられる。


「マモルさんを一人で行かせられるか」

「臆病者の卑怯者が!」

「隠れてないで姿を見せたらどうだ?」

「俺はクロトの父親だ。約束通りツノなしを連れてきたぞ。息子を返してくれ」

「ではお前だけついてこい」


 あっさりとジグロの要求は通った。


「それとわたしに見せる姿はない」


 ジグロと二人で先に進むと気配が後ろからついてくる。


「ジグロさん、後ろにいますね」

「ああ、背中に視線を感じる」

「なあ透明さん少し話をしないか」

「……」

「名前は何というんだ?」

「……」

「どう呼べばいい? 姿はなくても名前ぐらいはあるだろう」

「ブギーマン」


 そんなタイトルのホラー映画があったけど俺は未見だ。

 たしか「いい子にしないとブギーマンが来るよ」という親が子供をしつける時の常套句だったはずだ。

 秋田の『なまはげ』や関西の『ガオーさん』みたいなもんか。


「もしかして俺と同じく異世界へ招かれたくちか?」

「……」


 威武岐のようにどこかのヌシになることなくミズク様のように放浪しているのかもしれない。

 さてブギーマンの弱点てなんだろう?


「どうしてこんなことをするんだ?」

「くふふ、子供が泣き叫ぶのが好きだからだ。恐怖にお漏らししながら母親を呼ぶ姿を見るのは楽しいぞ」


 隣のジグロさんが低く唸った。

 まだ抑えてくれ。


「そうじゃなくてなぜ俺みたいなロートル一人を呼び出すのにこんな手間ひまをかけるんだ?」


「知らん。知らんが前のヌシを追い出した新しいヌシを倒した今のヌシを用心している。知らんけど」


 なんか頭の悪い喋り方だ。でもブギーマン単独ではないとわかった。


「よぉ俺を直接さらったほうが早かったんじゃないのか?」

「無理、加齢臭くさいのは嫌だ」

「はあ?」

「ションベン臭い子供がいい」


 てめえ今特大の地雷を踏んだぞ!

 そんなこたぁわかってるんだよ。

 こっちにはいいデオドラントないし、そのためだけに大切なアポーツ使えんだろうが。

 開拓団は若いのが多いから気にしていたんだよ。

 こいつ絶対に殺す。

 隣のジグロさんが抑えろと咳払いした。


「あーそれで滝では誰が待っているんだ?」

「鬼神オオツノ」


 こいつペラペラ喋るぞ。なるほど鬼神か、ようやく読めてきた。ヌシの座を取り戻しに来たな。


「その鬼神オオツノさんはどんな奴だ、ですか?」

「わたしの(あるじ)

「ほうほう、主とは凄いねー、素晴らしい奴なのかな」

「気が小さくて体が大きくて、せこくて態度が大きくて、みみっちくて言うことが大きい、わたしをこき使って褒めてけなして親切で意地悪」


 ずいぶんぶっちゃけたな。ろくでもない奴ということはわかった。

 なるほどいきなり俺にぶつかってこないわけだ。


「迷っていたわたしを案内してくれた。お礼に見えなくしてあげると喜んだ」

「俺も見えなくできるの?」

「ジジイは駄目。加齢臭は首を洗って待っていろ!」


 ぶっ殺す!

 ジグロが肩に手を置いた。気を遣わせてすまない。


「よし休憩だ。もう歩けない」


 俺は座り込んだ。もう1ミリも動くもんかと好物の草餅をアポーツした。最後の食事になるかもしれないので出し惜しみはしない。覚えたてのアスポートで備えは万全だしな。


「んぐ……」

「どうした?」

「餅が喉に詰まった。あやうく死ぬところだったよ、あっぶねー」

「おいおい勘弁してくれ。クロトを返してもらえなくなるだろ」


 自営業の悪い癖で早食いが身に染みついているのだ。食べるというより流し込む。

 カレーは飲み物だとは我ながら名言だ。

 しかし最後の晩餐がとどめの一撃というのも情けない。以後、気をつけるとしよう。


 のんびり歩いて滝についた頃にはまたアポーツできるようになっていた。今までになく絶好調だ。

 気配を探ると滝の上に一つ強い力があった。


「言われたとおりツノなしを連れてきたぞ。クロトを返せ!」


 ジグロが叫んだ。

 すると20メートルぐらいの滝の上に縛られた子供が現れた。


「クロト!」

「お父さん、怖いよ、助けて!」


 後ろでブギーマンが「ふひひひ」と笑うのが聞こえた。

 クロト君が突き落とされた。


「やめろ!」

「ウワーン!」


 ミノムシのように宙ぶらりんとなりまた引き上げられた。クロト君は号泣している。


「ツノなしと黒鬼、二人で殺し合え。そうしたら子供は返してやる」


 滝の上から声が届いた。

 ジグロがためらいもなくすらりと剣を抜く音がした。

 そりゃそうだろ。

今のを見せられた父親ならそうするよな。




 

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