プロローグ
ガッシャーン!
交通事故のような派手な音を立ててロースケルトンが吹っ飛んでいく。
「ヒャッハー!」
シルバーアーマーをまとった女が長い手足を振り回すたびアバラ骨が砕け頭蓋骨が粉々となる。
女の名前は小田野銀鏡、れっきとした日本の国会議員だ。
混血っぽい白肌の西洋人形めいた顔にはキリッとした眉に高い鼻、長い睫毛とパッチリとした瞳。
どうひかえめに表現してみ美人さんだ。
高身長に加えメリハリのあるボディもあいまってモデルかアスリートのようだ。
しかもまとっているオーラが半端ない。
これはどこへ行っても人の前に立つべくして立つ存在ですわ。
「マモさん、いつまで休憩してるの!」
シロミから叱咤がとんだ。
マモさんとは俺のことね。
物部守、当年とって65才のいけてないジジイだよ。
「よっこいしょういち」
さえないかけ声とともに立ち上がりフレイルを振り回す。
フレイルとは身体が衰弱した状態を指す医学用語だがこの場合は武器の名だ。衰弱状態ってのはあながち間違いじゃないんだけどね。
モーニングスターのように長い柄の先に棘付きの金棒がぶら下がっていてこいつで打撃を食らわせるわけだ。
狭いダンジョン内では使い勝手が悪いけどここは廃墟だ。
あと少しで町を出るというところで襲われてしまったのだ。
「いっきに駆け抜けるわよ!」
「へいへい」
ロースケルトンを蹴倒したシロミのでかい尻を追う。速いよ、もう少し年寄りを気遣えって。
「お尻ばかり見るな!」
振り向きもせずシロミが怒る。
おっといけない、慌てて視線を広い背中にうつした。こんな異世界でもセクハラやらコンプラに気を使わなくてはいけないとは世知辛いもんだ。
町を抜けしばらくしてから俺たちは見晴らしのいい丘陵で腰をおろした。
ペットボトルのお茶をあおって俺は大の字に寝転がる。
シロミは大剣を杖がわりにして周囲を警戒している。さっきそれを使えばよかったのになんで殴ったり蹴ったりするのかね。
そよ風がシロミの髪をなぶる。異世界に来てしばらく経つからちょっと伸びたかな。
なんだか来たときより若くきれいになった気もする。
俺はなんとはなしにそもそもの始まりを思い出していた。




