第1話 にじのかけら 15
犬の女の子、イヴとミルクが にじのかけらをさがして だいぼうけんに!
対象:小学校三年生位~
読み聞かせや癒されたい人にもおすすめ☆
「ほら、こんなのはどうだい。とってもかっこいいし、速く走れるぜ」
見るとそれは、まるでスポーツカーとキャンピングカーを
かけ合わせたような乗り物でした。
二人は紙をのぞきこんでいましたが、
先にミルクが言いました。
「ダメよ、車じゃねんりょうがたくさんいるもの。
わたし達ねんりょうを買うお金をそんなに持っていないわ。
それに人気のない森の中なんかで
ねんりょうが切れてしまったら、それこそこまるもの。
旅ではどんな所を通るか分からないのよ」
「そうかなあ、一番いいアイディアだと思うけれど」
とっておきのアイディアをけなされて、ケンはやや不満げです。
「このアイディアもすてきだと思うけれど、お金がそんなにかからない、
そして安心な、もう少し別のアイディアはないかしら。
むずかしいと思うけど、他でもないケンちゃんだったら
きっとすばらしいのを思いつくわ」
イヴがやさしく、最後の焼きがしを口に
ほおりこみながら、はげましました。
「そうだなあ、自転車ならお金をかけず
に楽しく旅ができるだろうけど、荷物はどうするんだい。
長旅なら、たくさんの荷物がいるだろう。
大きなリュックサックを、二人はせおって自転車をこげるかなあ」
ケンは図案をしんけんにながめながら、
かた手でおかしの入っていたバスケットをかき回しました。
けれども中身はからっぽです。
ケンはしかたなく指についた粉をなめて、コーヒーをひとくち飲みました。
「そうねぇ、まずお水や食べ物、
けがした時のためのお薬なんかがいるわね。
それにキッチンは持って行かなきゃ。
毎日料理をしなくてはいけないもの」
イヴが指を折って、数えながら言います。
「それから、本やぬいぐるみ、ベッドやおふろやなんかもいると思うの。
いくら旅先だからって毎日の生活を
おろそかにしたくはないものね」
今度はミルクが言いました。
「台所にベッド、それにおふろだって!
やれやれ、これは大変な仕事になりそうだぞ。
それって、ねぶくろでねむったり、火を起こして
表で料理をするんじゃダメなの?」
イヴとミルクは、大きく首をふりました。
「分かった、分かった。
でもそう考えると、やっぱり車のような
乗り物にした方がよさそうだぞ。
全く女の子ってどうしてこうなんだろう。
いやになっちゃうな。いや、しかし……まてよ」
そう言ってケンは立ち上がると、しょさいの階へ行きました。
そして色いろな資料がのっている本を取って、
また一階におりて来ました。
ケンが持って来た本には、シャワーやベッドのある船や、
キッチンのついている電車なんかがのっていました。
「例えばどうだろう。
この船や電車みたいに、
乗り物の中に
必要な部屋をそれぞれ作ってみては。
もちろん、一台では足りないから、
三つの乗り物をたてにつなげるんだ。
一号車は台所のある食堂に、
二号車はおふろとトイレをせっちしよう。
三号車はしんしつにするんだ。
まるで、しんだい列車みたいだろ。
でも、電車やトラムなんかじゃないんだ。
乗り物の下に、じょうぶなタイヤをつけて、
ふつうの道を走れるようにするんだよ」
ケンはゆめ見るように、せっけい図をどんどんえがきながら言いました。
イヴとミルクも、ケンの手が進むにつれて、
同じように、どんどんわくわくしてきました。
「とってもすてきね。
でも、ねんりょうの問題で車にはできないもの。
そこをどうしましょう」
イヴが言いました。
読んでいただき、ありがとうございます。
次回の掲載は2024年6月5日です。
注意:作者がコメント欄を読むこと、またいかなる場合もコメントへ返信することはございません。読者の方のコミュニティーとして節度ある使用へのご理解に感謝いたします。
注意:この作品は 『小説家になろう』、『カクヨム』、『Novel days』に、同時掲載しております。