唐突に訪れる死
公孫瓚の救援へと向かう劉備を追う道中、義賢に伝令が届く。
伝令「義賢様に伝令。公孫瓚が易京城にて、妻子と共に自害。曹操軍が大挙して徐州各地に侵攻。小沛城にて、趙雲様・張郃様・華雄様らが奮戦するもことごとく討死したとのこと」
ん?何を言ってるんだこの伝令は、100歩譲って、易京城で公孫瓚の自害はわかる。曹操軍が大挙して、徐州各地に侵攻して、趙雲殿と張郃殿と華雄殿だけでなく皆が討ち死にって。目の前真っ暗なんだけど。うん。本当に真っ暗って言うか。胸が苦しい。えっ待って待って、マジで喉が焼けるように熱い。そうか。今回の無慈悲な死に方は、公孫瓚の滅亡が早すぎて、毒死って感じかな。全く、またパラレル甘氏に会うのかよ。今回は上手いこと行ってただろう。寿春城を手に入れたのに。クソー。意識が遠くなり、永遠の眠りにつく義賢であった。
パラレル甘氏「オー劉義賢よ。死んでしまうとは情け無い」
義賢「はいはい」
パラレル甘氏「何ですか?その薄い反応は?」
義賢「毒ってあんなに辛いんですね。喉が熱くて熱くて掻きむしり、血まで出ましたよ」
パラレル甘氏「今回は近くに敵が居ませんでしたので、イレギュラーとなりました。刺される方がよかったですか?」
義賢「どっちもごめんです。死なないと戻れないのをどうにかしてもらえませんかね?」
パラレル甘氏「あら、痛みを伴わずに戻ろうなんて、覚悟が足らないのでは?もう諦めますか?いいんですよ。私は、ここで貴方が諦めるなら。別の人間に託せば良いんですから。勿論、貴方の死は真実になりますけど」
義賢「わかりました。わかりましたよ。今回の死の原因はわかってるんです」
パラレル甘氏「ほほぅ。成長してますねぇ。聞きましょう」
義賢「公孫瓚の滅亡が早かった」
パラレル甘氏「ピンポンピンポン。正解です。公孫瓚の滅亡が早くなるということは、袁紹に敵が居なくなるということです。それと袁紹が南下して、今の兗州の地盤ですら危うい曹操に防げると思います?無理ですよね。やはり、私の愛する劉備様の最大の敵は曹操で居て欲しいじゃ無いですか」
義賢「それは、俺も同感です。でもそうすると張郃殿・陳羣殿を引き抜いたのは不味かったのでは?」
パラレル甘氏「大丈夫ですよ〜。人材の宝庫曹操軍ですよ。1人や2人抜いたところで、大した問題にもなりませんよ」
義賢「はぁ、そういうもんですか」
パラレル甘氏「そういうものです。では、私の望む未来に向けて、ファイトです」
義賢「はい」
意識を取り戻すとそこは、袁術軍攻略作戦の軍議の場であった。
趙雲「劉丁殿、大丈夫ですか?急に倒れられて、心配しましたよ」
義賢「趙雲殿が看病を?申し訳ありません」
趙雲「いえいえ、私は小沛城の留守居を命じられたのですから。これぐらいは」
どうやら一通り命令を降した後らしい。すぐに変更しなければ、朦朧とする意識を揺り起こし、軍議へと戻る。
劉備「丁、無事で何よりだ」
張飛「腕がなるぜ。とっとと袁術の野郎を討伐しに行こうぜ」
関羽「翼徳。義賢も今起きたばかり。そう急かすでない」
義賢「兄上や義兄たちに迷惑をかけてしまいました。申し訳ありません」
劉備「なに、気にすることはない。丁が元気になったのならそれで良い」
前の世界線では、小沛城に曹操軍が攻めて来た。これは、恐らく袁紹が公孫瓚との雌雄を決した事により、袁紹との戦の訪れを予感した曹操の迅速な徐州奪取という考えに至ったのだろう。だが、小沛城に賊が攻めてきていたらしい。曹操は、停戦の盟約があったから賊を扇動したと考えるのが良いだろう。まぁ賊程度なら趙雲・張郃・華雄が討ち取られる訳がない。とにかく今回は、袁紹に公孫瓚が討たれないように動き様子を見てみよう。何が起こっていたのかを知らないと対策など講じることができないのだから。
義賢「兄上、大まかな作戦変更をしたいのですが。もう一度皆を軍議の場へと集めてもらえますか?」
劉備「一体どうしたのだ丁。いや、お前のことだ。何か考えがあるのだろう。分かった」
劉備により、もう一度主要なメンバーが軍議の場に呼び出される。その中に前回の軍議の時には参加していなかった諸葛瑾の姿があった。
義賢「俺の我儘で、もう一度集まってもらい。申し訳ありません。袁術討伐に俺は同行しません」
突然の義賢の言葉に固まる面々。
義賢「すいません。言い方が不味かったですね。袁紹の動きが気になるので、俺は公孫瓚の援軍に向かおうと考えています」
劉備「兄弟子の救援?そんなにまずい状況か?」
趙雲「公孫瓚は、殿の親族を人質に取り、意のままに操ろうとしたのです。袁紹に滅ぼされても仕方がないかと」
田豊「まさか、そんなことが。いやまずいかと。公孫瓚が滅べば河北にて、袁紹の敵は居なくなります。そうなれば必然的に南下政策を進めるでしょう。圧迫を受けた曹操は中原の制覇を急ぐはず」
沮授「そんなことになれば徐州だけでなく、これから攻めようとしている寿春も失うことになる」
田豊「えぇ、せっかく寄る地を得たとはいえ。我々は、まだ盤石ではない。ここに来て、それはあまりにも危険かと」
諸葛瑾「話を聞いていて思ったのですが。それならば公孫瓚が滅ばぬようにすれば良いかと。確か鮮于輔殿は、烏桓族と繋がりがありましたな?」
鮮于輔「あぁ。だが、アイツらが公孫瓚に手を貸すのは、絶対ない」
諸葛瑾「袁紹に手を貸すことは?」
鮮于輔「!?盲点だった。大いにあるな」
諸葛瑾「なら、そっちを調略で中立にさせるのです。公孫瓚の味方をさせる必要はありません。それなら可能では?」
鮮于輔「劉虞様に一筆書いてもらったのを渡すしかない。分かった。俺も劉丁殿と共に公孫瓚軍の救援に向かおう。気が進まないが、滅ぶとまずいのなら。この際、私情は捨てるべきだろう」
義賢「鮮于輔殿、助かります。それと俺の代わりですが趙雲殿に袁術討伐に向かってもらいます。兄上のことを頼みます」
趙雲「この身に代えて」
前回と違うのは諸葛瑾が軍議に加わったことと趙雲の袁術討伐軍への参加である。そして諸葛瑾からもたらされた提案により、戦の流れが大きく変わったと感じる義賢だった。
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