袁紹に対抗するため袁術と結ぶ公孫瓚
劉備義勇軍が韓馥軍の迎撃に向かってすぐ公孫瓚は袁紹との対立は不可避と考え、河北を平定するため袁紹との対立を深めていた袁術と誼を通ずることにし、信頼できる従兄弟の1人公孫越を使者に対袁紹同盟の締結を画策する。
公孫瓚「越よ。この大役務めてくれぬか?」
公孫越「兄上、顔をおあげください。俺も範も、従兄弟でありながら本当の兄弟のように可愛がってもらいました。その大役立派に務めましょう。範、俺のいない間兄上のことを任せたぞ」
公孫範「しかと心得た」
公孫瓚「越、気をつけるのだぞ」
公孫越「はっ」
この頃の袁術は董卓の死後、孫堅が玉璽を手に入れたことを兵士から聞き妻子を人質に孫堅を手駒とすることを考えていた。だが、これは孫堅の息子孫策という暴れ武者のお陰で露と消えた。そして、あろうことか孫堅が訪ねてきたのである。
孫堅「袁術、貴様には恨みしかない。汜水関の戦いでは我らの兵糧を断ち孤立させ、此度は俺の留守中に息子を攻め立てるなどふざけるのも大概にしろ。そんなにコレが欲しいならくれてやる。だがな2度と俺たちには関わらぬと一筆書いてもらおうか?できないというのならこちらにも考えがある。袁紹と対立を深めているそうだな。俺は袁紹に付くことになるかもしれんな。そうすれば劉表と共にお前を挟撃するぞ」
袁術「孫堅よ。何か手違いがあったようだ。すまない。朕はお前の妻子を保護しようとしただけなのだ。わかったお前には2度と関わらぬ故、玉璽をくれぬか?」
孫堅「良かろう。ホレ」
孫堅は袁術に玉璽を投げつけるように渡した。
袁術「それは天子となるためのものなのだぞ。手荒に扱うでないわ。コレだから野蛮人は困るのだ。約束通り、我らはお前に2度と関わらぬ故何処へなりといくが良い」
何故、孫堅が袁紹から奇襲するように言われていた劉表から何事もなくここに辿り着けたのか。それは、劉表軍が攻撃を仕掛けてきた時のことだ。孫堅は義賢の申す通りになったことを悟り、劉表と交渉したのだ長沙城の無血開城である。劉表は実を取りこの話に乗り兵を引いた。こうすることによって、孫堅は城を持たぬ流浪のものとなった。袁術に玉璽を投げつけた後、義賢から万が一の時の護衛にと託されていた徐栄と華雄に別れを告げ、家族共々揚州平定へと向かうのであった。いつかこの命を救ってくれた恩人である劉備義勇軍の良き盟友となるため。密かに壮大な孫堅の計画が進行するのだった。公孫越が袁術を訪ねたのはそんなことのあった後のことだ。玉璽を手に入れた袁術は次の皇帝は自分だと酔いしれており、そうなれば袁紹よりも上に立つ。だから全く袁紹のことなどどうでも良くなっていた。
公孫越「御目通りが叶いまして、感謝致します。主君の命で袁術様にお伝えしたいことが」
袁術「何じゃ。公孫瓚のところの者か。如何した?朕は今機嫌がいい故聞いてやるぞ」
公孫越「はっ。袁紹と交戦を開始した我が主君を援護してもらいたいのです」
袁術「ふむぅ。朕に従兄弟殿を倒す兵を貸して欲しいと申すか?」
公孫越「はっ。聞いたところ袁術様は袁紹と揉めているとのこと。幸い北の端と寿春と離れています。近くの敵と対するために接していない国と誼を通ずるのは常道。どうか」
袁術「残念じゃのぅ。少し前の朕なら喜んで引き受けたじゃろう(ワシが皇帝となればこの国全てがワシのものだ。袁紹よりも上に立つのに今更やり合う必要などあるまい。無駄に兵の消耗などごめんだ)」
紀霊「ということだ。聞こえなかったか?同盟は結ばぬ。その旨を公孫瓚殿に伝えられよ」
公孫越「しかし」
袁術「煩い羽虫じゃのう。公孫瓚が自ら拝謁しにくるのならまだしも、こんな下っ端を寄越して、同盟を結んでくださいなど」
公孫越「ぐっ、ですが」
袁術「くどい。同盟は結ばぬ。そう申しておろう。それとも何か公孫瓚と同盟を結んでワシに何の得がある?手土産も美味しい話も持って来ずに同盟を結んでくださいなど片腹痛いわ。とっとと帰るが良い。紀霊、豚がお帰りだ。とっとと追い出せ」
紀霊「はっ」
公孫越は紀霊に追い出されたのである。
公孫越「待ってください。まだ話が」
紀霊「すまぬが我が殿はもはや誰とも同盟など結ぶ気はない。今はコレしか言えぬ。今のあのお方は何をするかわからぬ。機嫌が良い日で助かった。公孫越殿も辛かろうが」
公孫越「紀霊殿でしたね。わかりました」
公孫越は足取りを重く公孫瓚の元へと戻った。
公孫瓚「袁術は何故同盟を結ばぬ!袁紹と対立しておったのではないのか?当てが外れたわ。こうなれば韓馥軍の迎撃の完了した劉備義勇軍をこのまま袁紹領へと進軍させ盾として乗り切るしかあるまい」
公孫越「このような結果となり面目次第もございませぬ」
公孫瓚「良いのだ越よ。無事によく帰ってきてくれた。この堅牢な易京城の防備を頼むぞ。今の間から近くの村々から兵糧も取り立てておけ」
公孫範「そちらは俺にお任せを」
公孫記「では俺は冀州から略奪して参りましょう。袁紹のものとなった土地からならどれだけ奪っても良心が痛みませんからな」
公孫瓚「ハッハッハッ。頼もしき同族たちを持ったものよ。皆励めよ」
越・範・記「はっ」
このことをたまたま外で聞いてしまった趙雲は公孫瓚に幻滅した。
趙雲「(俺を助けたのも袁紹から戦力を削ぎ尚且つ捨て駒として使うためであったか。それにこのままでは劉備殿がこんな奴の盾として葬られてしまう。それだけは避けねば、至急合流するといたそう)」
趙雲は静かに易京城を抜け出すと愛馬である白龍に乗り、劉備の元へと急ぐのであった。
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