客将たちとの別れ
1月10日 誤字報告ありがとうございます。修正しました。
洛陽へと無事に霊帝を護衛した劉備義勇軍に客将として参加していた趙雲・馬超・黄忠は、それぞれの主君の元へと帰り支度をする。
馬超「お前たちとは共に肩を並べたいものだな」
趙雲「あぁ、こんなにも息の合う経験は初めてでした」
黄忠「うむ。劉備義勇軍は精強じゃ。さらに雰囲気も良い。見習わねばならんやもしれぬな」
そんな3人の元に霊帝が挨拶に来た。
霊帝「3人とも客将として劉備・孫堅に協力し、洛陽の消火活動と民の避難をしてくれたそうだな。大義である。もう帝ではないゆえ。こうして労ってやることしかできぬこと申し訳なく思う」
馬超「こんな若輩者である俺に頭を下げるなど」
趙雲「霊帝様が生きておられて董卓として生きて辱めを受けたことに比べれば」
黄忠「御無事で何よりですぞ。劉丁殿から聞いた時は半信半疑でしたが本当に霊帝様であらせられたとは」
霊帝「馬超よ。特にお前の父には酷いことをした」
馬超「父上に?」
霊帝「うむ。韓遂に唆されて賊に加わったやつをコテンパンにしてしもうたからなぁ」
馬超「韓遂叔父上が父上を唆した?」
霊帝「うむ。韓遂は朝廷に対して不満を持っておる。そのための兵力として、馬騰を利用しておるのだ」
馬超「そんな馬鹿な!?」
霊帝「馬騰がこれ以上巻き込まれぬようにこれからの馬家の未来を担うお前がしっかりと手綱を握るのだぞ」
馬超「はっ肝に銘じます」
霊帝「趙雲よ。袁紹は今の朝廷よりも幽州・冀州制覇に乗り出すであろう。何か困ったことがあれば劉備を頼るのだ」
趙雲「はっ。そのようにいたします。今回のことでも袁紹に対して思うところがありました。きちんとケジメを付けるつもりです」
霊帝「うむ。その実直さ。ワシも見習わねばな」
趙雲「滅相もございません」
霊帝「黄忠よ。劉表も辿れば皇室に行きつく。辺な方向に進まぬように見守ってやってくれ」
黄忠「はっ。その任、心得ましたぞ」
霊帝「3人とも出立の準備のところ邪魔して悪かった。此度のことワシは忘れぬ。何かあれば訪ねてきてくれ。話し相手ぐらいにはなろうぞ」
馬超「霊帝様と茶飲み友達とは畏れ多い」
趙雲「霊帝様、どうか健やかに」
黄忠「霊帝様、いずれ必ずお邪魔いたしますぞ」
霊帝「うむ。3人の来訪を楽しみに待つとしようぞ」
3人は霊帝を見送ると世話になった劉備の元へ帰る旨を伝えに向かった。
劉備「そうか。3人とも帰るのだな。寂しくなるな」
趙雲が一歩前に出る。
趙雲「劉備殿、とても楽しい時間をありがとうございました。いずれ縁があればまた御一緒しましょう」
劉備「その時は是非」
張飛「おぅ。オメェはなかなか見どころのある若武者だ。今度手合わせしようや」
趙雲「張飛殿とやれば軽く捻られてしまうでしょう」
張飛「ハッハッハッ。そんな世辞まで言えるとはな。ここは、えぇその時は負けませんよって言っとくもんだぜ」
趙雲「そのようなことは」
張飛「良いってことよ。そういう真っ直ぐなところ好きだぜ俺は。まぁなんだ劉備軍はいつでもお前さんを大歓迎だってことだ」
趙雲「その時は是非」
趙雲が一歩下がると馬超が前に出た。
馬超「劉備殿、お世話になりました」
劉備「其方の父上にお会いしたことはないがくれぐれもよろしくお伝えくだされ。龐徳殿、馬超殿のことを頼みます」
龐徳「若様がお世話になりもうした。その傅役にまで声をかけてくださるとは過分なお心遣い誠に痛み入る。心得た」
張飛「おぅ。オメェもその若さで呂布相手に怯まなかった胆力、面白ぇ。いつか手合わせしてくれや」
馬超「是非、ですがやるからには負けませんよ」
張飛「ハッハッハッ。その豪気さ、少しは趙雲にも分け与えてやってほしいぜ」
馬超「趙雲殿には趙雲殿の良さがありましょう。それに分け与えられるものでもない」
張飛「確かにそうだな」
馬超が一歩下がると黄忠が前に出る。
黄忠「劉備殿、お世話になりましたぞ」
劉備「年寄りと侮ったこと申し訳ございません」
黄忠「ワハハ。40を超えましたがまだまだ若いものには負けませんぞ」
関羽「劉表殿に仕官して一年目というのが信じられぬ」
黄忠「ワシは狩人でしてな。今まではそれで妻とツツがなく暮らしてあったのですがこの歳で待望の子が産まれましてな。その子のためにも平和な世を切り拓いてやりたいと仕官したのですじゃ」
劉備「御子がそれはめでたい」
関羽「成程、狩人であったから身体作りができているのですな」
黄忠「ですが、弓はこの通り誰にも負けませんが近接となるとからっきしですわい」
義賢「黄忠殿の弓の腕前は凄まじい。この目でその神技の数々を見られたことを嬉しく思います」
黄忠「なんのなんの劉丁殿の弓の腕前も中々のものですぞ。何かしておられたのですかな?」
義賢「えぇ、兄上に隠れてこっそりと的当てを」
黄忠「そうでしたか。良き弟君をお持ちのようですな劉備殿は」
劉備「えぇ、俺には勿体無い弟です」
黄忠「では、いずれまた」
劉備「それぞれ別の道ではありますがまたいつか共に交われることを願っております」
趙雲「その時は是非」
馬超「必ず」
黄忠「この老骨で役に立てることがあるのなら是非」
3人は挨拶を終えるとそれぞれの主君の元へと帰っていった。帰り道での馬超と龐徳は少し会話をしていた。
馬超「龐徳。俺は何度もお前に助けられた。お前は俺の傅役など勿体無い。これから2人の時は友として接してくれぬか令明」
龐徳「若様、いえ孟起、心得た。それにしても此度は孟起にとって良き邂逅となりましたな」
馬超「うむ。あのような剛の者があんなにもおるとは。俺も一層の精進を重ねねばならんな」
龐徳「どこまでもお供いたします」
馬超「うむ。まずは帰って父上に霊帝様から聞いたことを忠告せねばな」
龐徳と馬超は帰路を急ぐのであった。
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