連合軍本陣の大混乱
呂布が虎牢関に1人で仁王立ちすると聞いた面々は、納得できないといった表情を浮かべていた。
張遼「呂布殿、正気か?」
高順「殿、あまりにも無謀です」
呂布「お前たちには頼みたいことがあるのだ。合流した牛輔軍と共に連合軍本陣への急襲だ」
張遼「!?確かに猛将の呂布殿さえ討てば勝てると考えている連合軍は、兵力を集中するだろう」
高順「そこを俺たちと牛輔軍で左右から急襲するってことか」
張遼「確かに理にかなっているといえよう。承知した」
呂布「世話をかけるがよろしく頼んだぞ2人とも」
張遼「お任せを」
高順「はっ」
董白の手紙で誘い出された牛輔軍は、虎牢関が全然大丈夫な事に文句を言っていたが呂布からの手紙を見て、考えを改める。
牛輔「董白様は何処をどう見て、危ないのだ」
李傕「しらねぇよ。箱入り娘様のいうことなんざ」
郭汜「董卓様の孫娘じゃなきゃ殺してるぜ」
賈詡「(まさか!?董白様は既に敵の手に落ちているのか。だが連合軍が我らを虎牢関へ呼ぶ理由とはなんだ?分散していた兵力を集めるなんてことを何故する。全くわからぬ)」
張済「流石の賈詡でも、良い案が浮かばぬか」
賈詡「張済様、すみません。考え事をしておりました」
伝令「呂布将軍より書簡です」
牛輔「ほぅ。これは面白い。賈詡よ。お前も見てみるが良い」
賈詡「!?(これを武一辺倒と言われる呂布殿が考えた。理にかなっているどころではない。上手くいけば連合軍を壊滅に導けるだろう。武だけの馬鹿ではないのか。それとも入知恵した人物がいる?考えても仕方あるまい)牛輔様、この策、乗るべきです」
牛輔「うむ。全軍、これより連合軍本陣へ急襲を仕掛けるぞ」
董卓軍による油断している連合軍本陣への急襲作戦が始まった。その頃、連合軍本陣は、呂布と大立ち回りをしている奴等を食い入るように見ていた。完全な油断である。
袁紹「ほほぅ。(あの拾い物、よくやるではないか)」
袁術「くっ。(袁紹の武将が活躍してあるのではないか)」
劉表「ほぅ。(勝手に飛び出した時は罪に問うてやろうかと思ったが存外やるではないか。愉快愉快)」
公孫瓚「ほぅ。(劉備めまた目立ちおって)」
陶謙「良いですなぁ。(流石は劉備殿。やはり徐州に何かあれば頼るべきは彼しかおりませんな)」
孔融「ほぅ。(北海城を救援していただいた時も思いましたが素晴らしい武勇ですなぁ)」
韓馥「あんな化け物とやり合える劉備義勇軍を抱えている公孫瓚殿に降伏した事に間違いはない)」
王匡「へぇ。(そのまま押し切ってくれ。とっとと帰りてぇんだ)」
劉岱「イケイケ。(呂布を討ち取ってくれさえすれば洛陽まで一瞬だ。もう少しで終わる)」
橋瑁「ヒック。(酒はもう飲めんぞい)」
連合軍の兵士「敵襲だー」
李傕「へへへ、連合軍の兵士共を殺せ〜」
袁紹「一体何処から?」
袁術「袁紹。今だけは協力するぞ」
袁紹「仕方ない。切り抜けるまでの共闘だ」
郭汜「逃げようとしている奴がいるぞ。追いかけろ〜」
王匡「俺は知らん。もうこんなところからはおさらばさせてもらうぜ」
劉岱「ヒィーーーーーーーー。もう嫌だー」
牛輔「こんなところにまだ残っているとはなぁ。橋瑁だな。その首貰い受ける」
橋瑁「ん!?飯か。グフッ」
陶謙「孔融殿、御無事ですか?」
孔融「陶謙殿、助かりましたぞ」
太史慈「武安国・宗宝、そちらは片付いたか?」
武安国「あぁ、なんとか」
宗宝「こっちもだ」
太史慈「良し、孔融様・陶謙殿、こちらへ我々が御守りします。戦場を脱しましょうぞ」
孔融「太史慈・武安国・宗宝、無理するでないぞ」
太史慈「はっ。(呂布との一騎討ちに加勢したかったが嫌な予感が当たってしまった。なんとしても陶謙殿と孔融様を御守りせねば)」
陶謙「お世話になります」
公孫瓚「韓馥、無事か?」
韓馥「何とか」
公孫瓚「共に無事に幽州まで帰るぞ」
韓馥「はい」
劉表「よもや。油断していようとは。黄忠とは離れてしまったが仕方ない。この場は荊州まで撤退する」
張遼「張文遠参る」
高順「陥陣営の名は伊達ではないぞ」
劉表の兵「敵か。殿を守れ〜。グワー」
劉表「我が兵の半数を失ってしまったが何とか帰れたな。あの男何者だ。董卓軍には華雄と呂布以外にもあのような猛将がいるというのか」
慌てふためく連合軍本陣、王匡と劉岱は真っ先に飛び出し逃げた。酒に酔って取り残された橋瑁は牛輔に首を切られた。陶謙と孔融は旧知の仲といったこともあり、太史慈たちに守られる形で戦場を無事に離脱。袁紹と袁術はいがみ合っている場合では無いと反撃を試みるが一度態勢を整えるべく下がった。公孫瓚と韓馥は共に切り抜け、幽州へと撤退。劉表は私兵の大半を失うが無事に荊州へと撤退した。
牛輔「良し、大勝だな。全軍洛陽へと撤収する」
李傕「へへへ、ご馳走様でしたってな」
郭汜「逃げる兵共から金目のものを強奪してやったぜ」
賈詡「(やはり董白様のお姿を見つけられなかった。十中八九敵の手に落ちていると見て間違いないだろう。そして連合軍は大敗をした。我々を呼んでいなければここまでの大敗は無かったであろう。だからこそ。全く理解できぬ。だが考えてもわからぬ。今は洛陽に凱旋するとしよう)」
張済「賈詡よ。ずいぶん考えていたみたいだな」
賈詡「張済様、申し訳ありません」
張済「良いのだ。お前の知謀とても頼りにしている」
賈詡「勿体無い御言葉。俺のことを見出していただき感謝しています」
張済「うむ」
張遼と高順率いる部隊は呂布の元を目指し、牛輔軍は洛陽へと凱旋するために進軍を開始するのだった。
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