県令として赴任する
1月9日 誤字報告ありがとうございます。修正しました。
ついて行きたいという者たちを宥め、県令として赴任することになった安熹県へと向かう劉備一向。その中には母の看病のため残ると当初は言っていた田豫や簡雍のそばに似ても似つかわしく無い美女の姿もあった。義勇兵も増えて、今や500人規模となる。新しい場所での治安維持を手伝いたいとのことで共に向かってくれるらしい。心強い限りだ。着くと県令の手足として働く役人たちが迎えてくれる。
役人「貴方が新しい県令の劉備様でいらっしゃいますか?」
劉備「あぁ」
役人「役人一同首を長くして、お待ちしておりました。こちらの書類の沙汰をお願いします」
劉備「うむ」
劉備は役人に確保されてしまったので、ここでも先立つものを稼ぐために義賢が各々に命じる。
義賢「張飛殿はここでも肉屋をお願いします。但し今回から肉の調達もお願いしますね。関羽殿はその補佐をお願いします。田豫殿は治安維持と新しく入った義勇兵の練兵を。簡雍殿は人脈作りをお願いします」
張飛「おぅよ。肉切るだけでなく調達もできるなんてラッキーだぜと言いたいとかだがよ。俺は店を離れねぇ。龔都、お前らに肉の調達を任せるぜ」
龔都「へい。お任せくだせぇ」
劉辟「腕がなりやすぜ」
何儀「逃げる獲物を追うのもまた一興か」
黄邵「さてさて、頑張るとしますかね」
何曼「張り切りすぎて必要以上に皮を傷つけちゃダメっすよ」
関羽「某も兄者の側に控えて、翼徳の補佐に徹するとしようぞ。周倉、廖化、裴元紹よ。お前たちも黄巾から心を入れ替えた身、働きを某に見せてもらうぞ。商隊の護衛任務を命じる」
周倉「我々にお任せください」
廖化「関羽様に恥じぬ働きを」
裴元紹「頑張りやす」
田豫「義賢、了解した。兵の調練は俺の得意とするところ鍛え上げる」
簡雍「人脈作りは得意ってもんだねぇ」
麗「劉義賢殿、お初にお目にかかります。御挨拶が遅れて申し訳ありません。この度簡雍様を公私共にお支えすることになりました麗と申します。お見知り置きを」
義賢「簡雍殿にこんな綺麗な方が」
簡雍「なり行きだねぇ」
パチーンと鋭い音が聞こえる。簡雍が頬を抑えていた。
麗「あらごめんあそばせ。ホホホ。旦那様がひどいことを言いましたのでつい」
義賢「ハハ。まぁうん。簡雍殿頑張れ」
早速尻に敷かれている簡雍を見つつも麗嬢を歓迎するのだった。各々が職務をこなして、劉備は、公平な沙汰を行うことで民からの信頼も厚い優秀な県令として知られた。しかし、1年ほど経った時、都から監察官が訪れると自体は一変する。
監察官「安熹県の県令である劉玄徳だな。朝廷から貴様の監察を仰せつかった。見せてもらうぞ」
劉備「はい。監察官殿、よく来てくださいました」
資料に目を通す監察官だが全く読む様子もなく。劉備を見て、チラチラチラチラ人差し指と親指で丸を作り見せている。それに気づかないと見ると監察官はため息をつく。
監察官「はぁー劉玄徳殿は監察官に対する礼儀が全然なっとらんな」
劉備「どういうことでしょうか?」
監察官「都からはるばる見に来てやったのだ。わかるだろう。ほらアレだよアレ。俺に言わせるのか。わかるだろう」
首を傾げる劉備に痺れを切らした監察官が叱りつける。
監察官「えぇい貴様はよっぽど無知と見えるな。それも当然か片田舎の出身なら礼儀など弁えてる訳もなかったな。朝廷への報告を楽しみにしておけ」
そばに居た役人が劉備に耳打ちする。
役人「劉備様、監察官様は賄賂を要求しているのであります」
それを聞いた劉備は顔を真っ赤にして怒り、監察官を捕まえると木にくくりつけビシバシと200回も小枝で打ちつけたのである。
監察官「貴様、俺が誰だかわかっているのか。朝廷の監察官なのだぞ。こんなことをしてタダで済むと思うなよ」
劉備「貴様こそわかっているのか。民を守るのが朝廷であろう。それをよりによって賄賂の要求だと。貴様に払う金など無いわ。それでも漢の監察官か。民の暮らしを良くするのが仕事であろう。それを権威を傘に着て賄賂の要求をするなど恥を知れ。貴様のようなものはこうしてくれるわ」
監察官「何をするのだ。ヒィーーーー」
劉備「これでもわからぬか」
監察官「うぐっ。ヒィーーーーーーーーーー」
劉備「まだ足りないようだな」
監察官「ぐふぅ。ヒィーーーもうやめて痛い痛い。申し訳ございませんでした」
騒ぎを聞きつけた張飛と関羽が駆けつける。
張飛「兄者、大兄者を止めねぇと。ありゃ漢の監察官だぜ。あのままじゃ殺しかねないぜ」
関羽「翼徳。少々強引でも兄者をお止めするぞ」
張飛「おぅよ」
関羽と張飛が劉備の両腕を取り必死に呼びかける。遅れて義賢もやってくる。
関羽「兄者、もう御心をお鎮めくだされ」
張飛「大兄者、これ以上は監察官が死んじまうぜ」
義賢「兄上、お気持ちはわかります。ですがこのクズに兄上の貴重な手を煩わせる必要などありません。代わりに俺が」
劉備「雲長に翼徳、すまぬ離してくれぬか。義賢、もう良い。頭に血が上り冷静では無くなっていたようだ。このようなことをしたのだ。この地でもう県令は務められぬな。皆にも合わせる顔も無い」
役人「いえ、劉備様は戦ってくださいました。それに貴方の治世は、とても公平かつ適切で安心させてくれました。我々も貴方にお供いたします」
劉備「お前たちのような優秀な役人を得られるとはこの上ない喜びぞ」
役人「勿体無いお言葉です。劉備様」
劉備は監察官の首に県令の印綬をかけるとその日のうちに皆を連れて、安熹県を去ったのだ。
ここまでお読みくださりありがとうございます。




