袁胤の野望?
取り敢えず大喬と小喬の話を聞くため、義賢は一度本陣に戻る。
大喬「保護していただき感謝致します」
小喬「貴方が劉備様?」
義賢「これは、名も名乗らず失礼いたしました。この軍の総大将を務めております。性は劉。名を丁。字を義賢と申します」
大喬「劉丁様?劉?はっまさか」
義賢「お察しの通り、我が兄上が劉備玄徳です」
小喬「へぇ〜弟なんだね。私たちと一緒だね。だね」
大喬「こら小喬、そんな口の聞き方をしては」
義賢「構いませんよ。それよりも何故、劉勲に仕えている橋玄の娘である貴方たちが兵たちに追われていたのか教えてもらえますか?」
大喬「はい。実は、うっうっ」
いきなり涙をポロポロと流し始める大喬。姉の涙に釣られたのか小喬も泣き始める。義賢は、弱っている2人につけ込む形で慰め、劉備の側室を増やしたいと一瞬思ったがそれが後々もたらす事の災いを考えて、何もできず見ているしかできなかった。やがて落ち着くと語り始めた。父が劉備軍への降伏を説き、劉勲に反論は許さぬと刺し殺されたこと。姉妹2人を兵の慰み者として捕えようとする袁胤。
義賢「わかりました。ですが、こちらは侵攻軍、敵の娘である貴方たちの話を全て鵜呑みにすることはできません」
小喬「何よ。それお姉ちゃんが嘘ついてるって、そう言うつもり」
大喬「やめなさい小喬。劉丁様の懸念ももっともでしょう。私たち姉妹が怪しい動きをしたと感じたのならこの首をお取りください」
義賢「全く、お淑やかに見えても芯の通った女性ですね。わかりました。一時的でよければ保護しましょう」
大喬「感謝します」
小喬「疑ったこと、許さないんだから」
義賢「(これで良いであろう。小喬殿は、俺に対して、不信感を持ち。姉である大喬殿も突き放した。赤壁が起こった際に、孫策たちの手伝いが要らぬほどにできていれば良いが、未来のことがわからぬ以上、危ない橋は渡れない)」
大喬と小喬を兵たちに見張らせると義賢は、蘆江城の奪取に戻る。その頃、蘆江城内では、狂った袁胤が暴れ回っていた。
袁胤「ヒッヒッヒ。もう一度、陳が皇帝になるのじゃ」
劉勲「袁胤殿、何を言って?」
袁胤「ヒッヒッヒ。ヒッヒッヒ。ヒヒャヒャヒャヒャ」
劉武「袁胤殿、御乱心か」
袁胤「お前、朕になんて口の聞き方をするのじゃ。散れ」
劉武「うぐっ」
袁胤は、突然劉武を斬り、刀についた血を舐め取る。
袁胤「美味じゃ。蜂蜜よりもなぁ」
劉勲「何故、兄上を?袁胤、貴様ーーーー」
袁胤「朕を呼び捨てにして良いとでも思ってあるのか劉勲」
劉勲「何だこの姿はまるで、袁術様?」
袁胤「ようやくわかったか。地獄の底から舞い戻ってきてやったわ。こやつの身体を使ってな」
劉勲「馬鹿な!死んだ人間は、蘇ることなどないのだ。袁胤」
袁胤「ワシをその名前で呼ぶな下民が」
劉偕「従兄上、危ない。グワァーーーー」
劉勲「偕ーーーーー。どうして、こうなった。何が袁胤をこうさせているというのだ」
袁胤「もっとワシに血を飲ませるのだ。この血がワシを今世に舞い戻らせるのだ」
劉勲「見た目は袁胤なのだが、この溢れ出る高貴な物は袁術様のそれだ。一体何があったというのだ」
劉勲が見た先には、物言わぬ状態の橋玄が居た。
劉勲「橋玄殿、お逃げくだされ!」
袁胤「最高じゃなぁ。この力は、お前が橋玄を殺したというのになぁ」
袁胤は、橋玄の亡骸に近づくと首筋に喰らい付き血を啜り始めた。
袁胤「まずいまずすぎる。こんな老人の晩年からあんな美しい娘が産まれるとはなぁ。やはり、あの若い血が欲しい〜ワシをこの世に舞い戻してくれる若い血が血が欲しい〜」
劉勲「俺が、橋玄殿を殺した?なっ何を言っている?一体、、俺の身に何が。どうして動かない」
袁胤「お前は、ワシのためよく働いてくれた。その働きに免じ、見せてやろう」
袁胤は、劉勲に近付き、腹のそれを見せる。
劉勲「袁胤、貴様ーーーーーーーー。袁術様に何をしたーーー」
袁胤「冥土の土産に教えてやろう。この身体は袁胤じゃが。その意識は、このワシ袁術なのじゃ。だが、現世へと意識を留めるためには大量の血が必要でなぁ。馮・燿・紅姫。待っていろ。父が必ずお前たちをもう一度この手に取り戻してやるぞ。ヒヒャヒャヒャヒャ」
劉勲「(俺はどこで間違えた。紀霊、お前ほどの男が劉備に降った時に、俺も袁術様の家族を守るため降るべきだったのだ。袁胤の口車に乗り、劉備が袁術様を殺したと決めつけ、その結果がこれか。こんな男に血を全て抜き取られ死ぬ運命だと。ふざけるなと言いたいところだが、もう意識を保つこともできそうにない。橋玄殿。謝って許されることではないだろうが、申し訳ない)」
袁胤「美味。美味。美味。流石、ワシを信奉していただけはある。お前の血もワシの野望のため使わせてもらうとしようぞ。孫堅・曹操、劉備の次はお前たちだ。ヒヒャヒャヒャヒャ」
門を守る陸康の元に袁胤がやってくる。
陸康「袁胤殿、どうされたのです?」
袁胤「ちとお前に用があってな」
陸康「はて?何用で。いきなり何を」
袁胤「血を吸わせてもらおうと思ってな」
陸康「うぐっ。血迷ったか袁胤」
袁胤「朕を呼び捨てにするでないわ。下民風情が」
陸康「グワァァァァァァァァァァァァ」
陸儁「袁胤、貴様よくも父上を。陸績、子供達を連れ、すぐにここから離れるのだ。コイツは、様子がおかしい。こんなことを言いたくないが、人でありながらまるで人ならざるもののようだ」
陸績「兄上は?」
陸儁「ここで時間を稼ぐ。皆、死地に突き合わせてしまいすまない」
陸家の兵「我々とて、陸康様をやられて黙ってなど居れますまい。死地までお供しますぞ陸儁様」
この日、蘆江にて、多くのものが亡くなった。そのものたちは、全て血を抜かれていたようだった。袁胤は、従兄弟である袁術を信奉するあまり、袁術の墓から亡骸を掘り起こし、顔の皮を剥ぎ、腹に縫いつけ。袁術をこの世に顕現させるために、血を欲した。袁術を復活させる。これが袁胤の野望であった。そう、袁胤は文字通り狂人と化し狂ってしまったのだ。
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