蘆江を巡る戦い(結)
孫策軍は、矢印の形で、突撃を開始した。リスクも大きいが突撃に特化しているという蜂矢陣である。孫策を必ず敵の総大将へと届けるため先頭に1番負荷のかかるこの陣の先頭を周瑜が務めた。武芸にも優れ知略にも優れる周瑜だからこそ任せられると判断したのだ。孫策にとっても周瑜にとっても、簡単に引ける戦いではない。この戦いに劉備軍が勝利すれば、揚州北部における影響力は無くなるのだ。実質袁術により揚州北部を好き勝手されていた劉繇の二の舞となる。それだけでなく劉備により荊州への足掛かりの確保にも繋がる。そんなことを許すことはできない。例え父である孫堅に弓を引くことになろうと孫策には、天下を取るという大望がある。そのために揚州北部という肥沃な土地の確保は欠かせないのだ。
周瑜「伯符、必ずお前を敵総大将の元に導いてやる」
孫策「公瑾、頼む。これが最後だ。負けてばっかじゃいられねぇ」
孫権「兄上、俺も最後まで供を致します」
孫策「権、おうよ。劉備軍に俺らの力を見せつけてやろうぜ」
周泰「、、、影となり主を守る」
蒋欽「俺たちの力見せつけてやろうぜ」
董襲「簒奪者共に天罰を」
陳武「俺の相手はどいつだ」
孫河「孫策様、どうか勝ってください」
呂範「やれやれ、孫策様といると退屈しませんな」
孫策軍の突撃に対して、迎え撃つことになった劉丁軍の陣形は、V字型の陣形。そう鶴翼の陣である。蜂矢の陣を受けきり、包囲殲滅の構えである。両軍の雌雄を決する戦いは、周瑜の思惑通りに進んだ。それぞれが敵の将を抑え、敵総大将の元に孫策の刃が届いたのだ。
周瑜「まさか私が天下最強と言われる貴殿の相手をせねばならないとは、やはり来ていたのだな呂布」
呂布「退屈していたところだ。相手をしてもらおうか周瑜」
周瑜は巧みに呂布の攻撃を受け切り、足止めの役目を全うする。
蒋欽「ジジイが戦場に出てくんじゃねぇ。とっとと帰って、寝てろ」
黄忠「やれやれ、世間知らずな若者に伝授してやるわい」
蒋欽も弓の扱い方が上手かったが黄忠の弓はそれを軽く上回り、遠距離戦は不利だと判断した蒋欽は、接近戦へと切り替えて、打ち合うのだった。
董襲「陥陣営などと呼ばれている男か、相手にとって不足はない」
高順「受けは得意ではないが役目は果たさせてもらうぞ」
武では、高順のが上なのだが背水の陣で向かってくる敵の勢いは凄まじく、打ち合いが続くこととなる。
趙雲「ここからは先には行かせん。この趙子龍がお相手致す」
周泰「、、、主は先に。周幼平、参る」
先を急ぐ孫策たちの前に女将軍が立ち塞がる。
樊玉鳳「どこにも行かせませんよ」
孫河「孫策様・孫権様・陳武・呂範は、先に行ってください。ここは俺が防ぎます」
孫策たちは抜け出ることに成功する。
田豫「これ以上は行かせん」
陳武「えぇい、次から次へと蛆虫どもが。孫策様、ここら俺に任せてもらうぜ」
田豫を陳武が引き受ける。
太史慈「まさかここまで来ようとは、これ以上は行かせぬぞ。この太史子儀が相手をしてやろう」
孫策「ここで太史慈だと!ここまで人材が豊富となりつつあるか劉備」
1人の男が孫策の後ろから飛び出し、太史慈と対する。
孫策「鄧当!?何をしている?」
鄧当「時間稼ぎ程度ならできるでしょう。この戦い、孫策様が敵総大将を討てば、我らの勝ちです。さぁ、行かれよ」
孫策「すまん」
太史慈「逃げるのか孫策!」
孫策「今はな」
孫策は、孫権と呂範を連れて、劉備軍の総大将を務める男の元に到達した。
孫策「貴様が総大将だな」
義賢「お初にお目にかかります。この軍を預かっています劉丁義賢と申します。奇襲にもめげず。蜂矢陣にての突撃お見事です。鶴翼で受け切り、包囲殲滅の構えでしたが見事にしてやられました。ですが俺もこの軍を預かるものとして、負けられない。お相手いたそう」
孫策「その心意気は、買ってやる。だが貴様を討てば、この戦いの幕だ」
張遼「落ち落ち寝ても居られませんな」
甘寧「徹夜だが仕方ねぇ。ここまで攻められて軍師殿を見捨てるわけには、いかねぇからな」
張遼の姿を見て震える孫権。
孫権「(震えるな震えるな。兄上の助けとなるんだ。張遼を俺が食い止める。そうすればきっと兄上がアイツを討ち取ってくれる)」
呂範「その鈴の音は、忘れはしないぞ。貴様だな凌操を殺したのは?」
甘寧「あのオッサンか。まぁ、俺の任務は焼き討ちだけだったんだが追撃されちゃ仕方ねぇよな」
呂範「許さんぞ」
呂範が甘寧へと向かうのを見て、孫権も張遼へと向かっていく。
張遼「貴様は、昨日の奴はどうした?俺の前に立つということは覚悟があるのだろうな」
孫権「煩い、僕だって、虎の子だ。やられっぱなしで終われないんだ」
張遼「良いだろう。相手をしてやる」
義賢の読みは、甘かった。孫策は昨日の今日で突撃をしてくるとは考えなかった。昨日の被害を見て、今回は諦めるだろうと考えていたのだ。この見通しの甘さが徹夜明けの張遼や甘寧までを動員する結果となり、それでも一枚足りなかった。孫策を抑えうる存在がいたら結果は変わっていたのだろう。小覇王と称される孫策を相手に義賢が叶うわけもない。できるだけ距離を詰められないように遠距離にて弓での致命傷への攻撃を試みるが孫策は、それを弾き飛ばしながらじわりじわりと義賢へと迫り、その首を討たれたのだった。
義賢「黝廉、できるだけ距離を取ってくれ」
黝廉「ヒヒーン(わかったわ御主人様)」
孫策「弓の使い手か!そのどれもが的確に急所を狙ってきている。すごい腕前のようだが。全て、弾き落とせばなんの問題も無い」
義賢「化け物かよ!(普通、致命傷へ何度も執拗に攻撃されたらビビるもんだろ。ためだ、俺の畏れが黝廉にも伝染している!しまった)」
孫策「捉えたぞ。敵将、劉義賢。孫伯符が討ち取ったー」
義賢の討ち死にに動揺した劉備軍は瓦解し、甘寧・太史慈は捕らえられ、呂布らは散り散りに逃走し。趙雲と黄忠はなんとか寿春へと戻るのが精一杯だった。あと1人、将が居たら戦局は大きく変わっていただろう。こうして、劉義賢の物語は、幕を閉じるのであった。
???「ちょっとまちなさーい。何勝手に終わらせようとしてくれてるのかしら。はい、巻き戻しね」
この隣でパリピーな格好をしている女性に怒られたとある男は、渋々、巻き戻しするのであった。
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