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えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。  作者: 揚惇命
3章 群雄割拠

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劉繇の死

 劉繇は揚州刺史だった。だが揚州北部の広大な土地寿春・蘆江は、袁術により半ば簒奪されていた。そんな目の上のたんこぶであった袁術が皇帝を僭称し、自ら身を滅ぼす道を選ぶと今度は、孫策という虎が揚州の制圧へと乗り出した。頼みの綱と期待していた曹操は、徐州攻略中に呂布により兗州を襲撃され、劉備と痛み分けする形で和睦。豫章・丹陽・呉を孫策に奪われ会稽にて、最後の時を待つしかない。孫策が揚州攻略を始めてから5年の月日が流れ、時は197年、曹操の兗州奪還まで残り1年となった。未だ会稽は落ちていなかった。


【会稽】


 虞翻「相手が先程の2倍となろうとも耐えるのです。耐えれば勝機が訪れます」

 民男「いつまで耐えれば良いんだ。孫策の統治は良いと聞くぞ。俺たちも降伏するべきじゃないのか」

 民女「そうよ。いつまでも城に篭って、勝機なんか訪れるわけないでしょ」

 兵士「もう、我慢できない。城を開け放つのだ」

 民男「そうだそうだ」

 民女「開けるのよ」

 民衆たちは、この長い包囲ですっかり意気消沈していたのだ。門を開け放ち孫策軍を迎え入れた。こうして3年にも及ぶ籠城に幕を下ろし、会稽は孫策の手に落ちた。

 孫策「とことん苦しませてくれたな劉繇!」

 劉繇「ヒィー命だけは命だけはお助けください」

 孫策「ここでお前の首を斬るのは簡単だ。しかし、お前も皇族に連なる者。そのようなことをすれば親父は、俺を許さないだろう。この場は見逃してやる。どこへなりといくが良い」

 劉繇「はひぃぃぃぃぃぃ」

 劉繇は一目散に逃げ出した。

 周瑜「あのような男にここまで籠城戦を指揮できたとは思えない。必ず誰か居たはずだ。探し出すのだ」

 虞翻は、民衆たちが自分たちで孫策軍を招き入れるとひっそりと家に戻り、籠った。そこに孫策の弟孫権が訪ねてくる。

 孫権「虞翻殿、居られるか」

 虞翻「やれやれ、私を捕らえに孫策軍のものが来ましたか」

 孫権「貴殿を捕える?兄上は、こう申しておりました。『まっこと苦労させられた。アイツのせいで無駄な時間を3年も費やされた』と。私には兄のような武を持ち合わせておりません。ですがこの国を守りたい気持ちは誰にも負けぬつもりです。是非、虞翻殿の力をお借りしたい」

 虞翻「やれやれ。貴方の兄君が苦労させられた。厄介だと申した男に頭を下げ、力をお借りしたいと頼まれるとは思いませんでしたよ。良いでしょう。出仕しましょう」

 孫権の説得に応じ、出仕することになった虞翻は、1人の男を推薦する。性を陸、名を康、字を季寧と書く。陸康季寧リクコウキネイである。しかし、陸康は、孫策に不遜な態度を取り、孫策の怒りを買う。怒りのまま陸康が軍師を務める蘆江へと進軍を開始する準備をする。

 虞翻「孫策様に刃を向けたこと深く陳謝します。そこで、1人推薦したい男が居ます。陸康と申す者で、謀略を嗜む者です」

 孫策「虞翻よ。そんなにかしこまるこたぁねぇよ。確かに苦労させられたがよ。でもお前だってここを守るために必死だったんだろう。そんなことで恨んじゃいねぇ。それよりも陸康か。会ってみるとするぜ」

 間も無く陸康が連れられてやってくる。

 陸康「ほほぅ。立派な反逆者の目をしている御仁じゃのぅ。虎ではなく狼じゃ」

 孫策「貴様ーーーーー俺が虎ではなく狼だと。舐めた口を聞きやがって、打首にしてくれる」

 陸康「おぉ怖い怖い。獰猛な狼に仕えるなど天地がひっくり返っても有り得んことじゃ。文句があるのなら蘆江へと攻めてくるが良い。お相手いたそう」

 孫策「その言葉後悔させてくれる。虞翻、貴様は俺をコケにするような奴を推薦したな。顔も見たくない。出ていけ」

 虞翻「お待ちくだされ孫策様。陸康は必ずやお役に立てるはず。何卒何卒、そのお怒りをお鎮めくだされ」

 孫策「あんな不遜な態度をとる奴を許せだと。我慢ならんわ。全軍、蘆江を攻めるぞ」

 周瑜「あぁ勿論だ伯符。(だいぶ遅れたが陸康が伯符を怒らせてくれたおかげでなんとかなりそうだ。劉備よ。貴様の野望打ち砕いてやる。覚悟しておくのだな)」

 周瑜は、劉備という飄々とした態度で労せずして領土を手に入れた男を毛嫌いしていた。そのため、何としても荊州への足掛かりを得ることを阻止したかった。当初の予定では、もう達成しているはずだった。会稽攻略に手間取りさえしなければ。劉繇が逃げた先もまた蘆江であった。しかし、蘆江を治める劉勲子臺リュウクンシダイ袁胤仲績エンインチュウセキにより、誅殺される。


【蘆江】


 劉繇「ハァハァ。助かった」

 袁胤「これはこれは、劉繇殿、どうされたのですかな?」

 劉繇「揚州を孫策により奪われたのだ。奪還するべく力をお借りしたい」

 劉勲「無理な相談だな。我らが帝に対し、揚州北部を返せと不遜な態度をとっていたお前がどのツラ下げて、助けてくださいなどと良く言えたものだな。介錯してやろう」

 劉繇「待て、待ってくれ。いや待ってください。孫策の情報ならなんでも渡しますから。お願いだから命だけはヒィー」

 袁胤「情報などは必要ありませんよ。我々は、この地を巡って劉備と孫策を対立させるのが目的ですからねぇ。ヒッヒッヒ」

 劉繇「そんなことすれば、民たちはどうなる?」

 袁胤「孫策如き下賎な血の者に領土を奪われ地に堕ちた者に言う言葉などありませんよ。せいぜいもっと踊ってくれるかと思っていたのですがねぇ」

 劉繇「その顔は、そんなまさか!?生きていたのか」

 袁胤「この顔を知られたからには生きて返せませんなぁ劉繇殿」

 無数の槍が劉繇の身体を貫く。

 劉繇「(じゃあ、死んだのは誰だったというのだ。影武者を使ったのか)クソ、え・◯・◯・つ、ガハッ」

 袁胤「最後の言葉は聞かないでおきましょう。さぁ、下賎な生まれでありながら皇族の血を引く者は、野蛮で下賎な血を引く男とどのように戦ってくれるのでしょうねぇ。ほほぅ。そうですかそうですか。◯◯も楽しみにしているそうですよ。せいぜい踊り狂って共倒れしてくださいよ。ヒヒヒハーッハッハッハッ」

 劉勲「(袁胤殿が出ていって帰ってきてからまるであの調子。一体誰と話しているのであろうか?その部分だけが聞こえぬ。しかし、これで我が帝に対して不遜な態度をとっていた男を1人は排除できた。今は亡き我が帝のため。劉備は必ずやこの手で仕留めてくれる)」

 蘆江を巡る戦いが幕を開けようとしていた。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

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