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冬なのに夏祭り 夏なのに冬祭り

作者: グミさん

いらっしゃい! いらっしゃい!

威勢の良い言葉が飛び交う夕暮れ。

そう今日は待ちに待った年に一度の夏祭り。

今回はお客ではなく売る側として参加する。

「うーん。ちっとも売れない」

大定番のかき氷にお客が寄り付かない。

それもそのはず。季節外れの寒気が関東周辺を覆っているのだ。

冷夏? いや違う! ただの冬日だ!

たこ焼きや焼きそばに並んでいるお客の大半はコートを着て温かくしている。

「あーあ! やってらんねー! 」

「おい! サボってんじゃねいよ! 」

隣のチョコバナナのサブがからかう。

「お前んとこは散々だな。こんな寒くちゃ売れないだろ。ははは! それでどれくらい売れた?」 

隣で見ていたのだから分かりきっているのに嫌がらせで聞いてきやがる。

「一つも…… 」

「ははは! 馬鹿だな! 早く帰れってんだ! 」

馬鹿はこいつだ。チョコバナナだと言うのにチョコが間に合わなかったらしくバナナのみで売っている。どう誤魔化しても無理だと言うのに中に練り込んでいると客に嘘を吐く。

「お前んとこだって同じだろ? 」

「うるせい! 親分が悪いんだ。俺のせいじゃない! 」

まあどっちでもいいけど……

「なあ賭けてみないか」

サブは先に売れた方に一杯奢ると言うつまらない遊びを思いつく。

暇だから付き合ってやることに。

「なあ明日はどうするんだ? 」

「チョコは明日には間に合うと思うぜ」

「ふん。季節外れの寒ささえ吹き飛べば楽勝だ! 」

そうこう話しているうちにサブの方にお客がやって来た。

「ふざけんな! 」

案の定罵声を浴びて逃げられてしまう。

当然だ。チョコバナナにチョコが無ければただのバナナだ。

しかもそのまま三百円で売りつけるんだから怒られて当然。

お客を何だと思っているのだろう。

「いらっしゃいませ! 」

ついにお客がやって来た。

「イチゴ? レモン? ブルーハワイ? ミルクなんてのもありますよ」

ついに訪れた一人目。熱が入る。

「すみません。トイレは? 」

「あっちです」

せっかく来たと思ったのに。まあこの寒さじゃ仕方ないか。

諦める。

陽が暮れると徐々に温度が下がっていく。

もう帰るかなあ。明日に期待するしかない。

「おいサブ! 明日の天気はどうだ? 」

「ああ? うるせいよ! 今聞いてるところだ! 」

サブはラジオのボリュームを上げる。

『ええ続きまして関東の明日の天気です。

明日は寒気の影響で雪がぱらつくでしょう』

「明日は雪だってよ。ははは! 」

「そんなバナナ! 」

「はい毎度! チョコバナナ一本お買い上げ! 」


                  <寒>





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