②利用価値
重い脚を出口へ向けたその時だった。フィンクスは急に態度を変える。
「おいヒロト! ちょっと待て。功労者のお前に最後の機会をやる。おまえも将来は自分のギルドを持ちたいんだろ。でも、ギルドを作るにはまず金が必要だよな。お前が得意にしている補助魔法は、ここ以外で稼げる場所は俺様が知る限りねぇぞ。だから。残りたいって言うならもう一度やり直すつもりでここにいることを許してやるが、どうする?」
フィンクスは俺の肩に手を置く。
現実を突きつけられてからなのか、一瞬だけ俺の顔が緩みそうになる。
だが、フィンクスがここまで言ってくるのは珍しい。
今までなら他の仲間のように追い出すようにギルドから追放している、
フィンクスはもしかして本当は俺の事を利用したいだけだろ。
ずっと俺の能力を気にしていたからな。
「そうね。私の教えにちゃんと従うことを誓いなさい。そうすればもう一度だけ機会をあげるわ」
ルーナは俺の教育係で最初にしたことは俺の過去を全否定するものだった。
俺は経験を積むためにここに来た。
それこそ最初は我慢して耐えてきたが、もう限界だ。
「いや、もうクビでいい。ルーナの教えなどただの耳障りだからな」
「耳障りですって⁉ ヒロトあなた、誰のおかげでここまでいられると思っているのかしら⁉」
明らかに苛立っているルーナの頭にポンとフィンクスの手が置かれる。
「ルーナ。落ち着けって、こいつは気が立っているんだ。だから多めに見てやれ」
「……仕方がないわね」
ルーナはフィンクスの言葉に従い鋭い眼光を俺に向けながら引き下がった。
「と、まぁ。ということで……どうだ、ヒロト。もう一度機会をやるって言っているのだが、どうする?」
フィンクスは俺の両肩に手を置く。
「俺の気持ちは変わらない。世話になったな」
俺はフィンクスの手を払いのけ、この日に最後に烈火の猛牛と関係を断ち、ギルドから出て行く。
「あーあ。本当に出ていちゃったわよ」
よかったの? と言いたげなルーナ。
「問題ない。この街からはヒロトは出られない。なんせあいつは金が無いから頭を下げて戻ってくるさ。もちろんその時は頭を踏んで二度と逃げ出させないようにしてやるけどな」
フィンクスの下品な笑い声は烈火の猛牛に響き渡った。
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