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第五十二話 『越えるべき壁』

 ある日の放課後、オレはフィナに呼ばれて研究部棟前の廊下へと来ていた。

 今は研究部の活動が終わった後の、夜に差し掛かろうかとする時間帯。


 渡り廊下の窓からは生徒達が下校する姿が見える。

 夕陽の残光が差す中で魔術の教本を読んで時間を潰していると、見知った金髪ボブカットの女子が駆け寄ってきた。


「ごめん、ちょっと遅れて」

「オレが時間を無駄にするのが嫌いなこと知ってるだろ。大いに反省しろ」

「研究部が長引いちゃったんだよ~! 許してぇ~!」

「嫌だ。じゃあ、部室の方に向かうことにするか」


 オレとフィナの同棲関係がバレてからというものの、今までのように知り合いなことを隠す必要はなくなった。

 それでも一緒にいると何かと良くない噂を立てられてしまうため、学校で話すことは少なかった。

 だけど、今回はフィナの方からお願いがあるとのことで、こうして放課後の学校で顔を突き合わせることにしたのだ。


「魔術戦の試合観てほしいんだろ?」

「うん。この前の一年生大会のメンバー決める模擬戦で上手くいかなかったから。どこが悪いのかオーラルドからアドバイス聞きたくて」

「アドバイスなんて先生や先輩がくれるんじゃないか? どうしてオレなんだ?」

「クルシャさんがオーラルドのこと、将来有望なすごく強い魔術師だったって言ってたから。私の戦いの癖は一番知ってるだろうし、オーラルドにアドバイスもらった方がいいかなぁって」

「そんなこと、あいつ言っていたんか。オレが魔術戦で強かったのは昔の話だぞ?」


 確かに貴族時代のオレは同世代の魔術師の中でもトップクラスの実力はあった。

 だけど、今は異世界転生者を倒すべく無詠唱魔術の研究に集中している。


 データ馬鹿のフレディにここ二年の魔術戦の試合を観せてもらったおかげで、一応直近の魔術戦環境は把握している。

 けれど、マイナーな試合はチェックしていないため、新しくメタになりそうな戦法などの考察はできていないときた。

 昔の魔術戦オタクだった自分だったらいくらでもアドバイスできたであろうが、今の自分じゃ魔術戦研究部の講師や先輩より有益なアドバイスができるとも思えなかった。


「他の奴にアドバイスもらった方がいいように思えるけどなぁ……」

「オーラルドがいいんだよ。やっぱり私の先生って言ったらオーラルドだから」

「まあ、フィナが満足ならそれでいいか」


 時間を無駄にすることが何よりも嫌いなオレだが、フィナの頼みとあらば無下に断るのも悪く思えた。

 二人して人気のない廊下を歩くことにする。


「魔術戦研究部の部室に行けば、模擬戦の試合動画って観れるんだっけ?」

「うん、録画機で撮ってあるから」

「あと遅くまで学校にいれるよう先生に申請出しておいたよ。オーラルドは?」

「ユネに言って、泊まれる申請出させておいたわ」


「誰、その女の子の名前?」

「うちの研究部の部長だよ、部長」

「いつもとオーラルドと一緒にいる?」

「そうだよ。なんでちょっと不機嫌そうなんだよ」

「別にぃ~」


 口元をむすっとさせながら、そっぽを向くフィナ。

 なんというか面倒くさい奴だ。


 なんだかんだ独占欲強いよな、こいつ。

 こいつの変な嫉妬のせいで一緒に住んでいることがバレたわけだし。


「いいだろ? こうしてお前とも学校に泊まることにしたんだ」

「それはまあ楽しみだけど……」

「いつも一緒の家に泊まっているのに、なんか学校で一晩過ごすとなると違和感すごいよな」

「明日とか絶対友達にいじられるだろうなぁ~。フィナが夜な夜な男を部室に連れていたって」

「それはオレに頼んだお前が悪い」


 そんなこんな話しているうちに魔術戦研究部の部室までやってきた。

 さすがは学園一の人気研究部。部室は一つだけでなく、三つ存在するらしい。

 その中の一つに入っていくことにする。


 中に入ると、映像機器や書類で埋め尽くされた教室一個分以上の広い空間が待ち受けていた。

 これ以上の部屋があと二つあるとは。

 どっかの廃部寸前の研究部とは大違いである。


「とりあえず模擬戦を撮った録画機用意してもらっていいか?」

「うん。いくつもあるけど、どの試合観てもらおうかなぁ~」

「全部用意してもらっていいか? 一つだけ観てもよくわからないから」

「私の試合全部ね。わかった」

「違う。お前以外の奴も含めて全部の試合だ」

「えっ、すごい数になっちゃうよ?」


 時間は一晩あるのだ。

 数に関してはそこまで問題じゃない。


 他の奴の試合を観ないと、現在のフィナの実力が同世代の部員の中でどの位置に存在しているかわからないしな。

 周りの奴らの実力を考慮しないで、アドバイスをするのは難しいように思えた。


 それに魔術戦研究部の部員の魔術戦を観れる機会なんて早々ない。

 魔術戦魔導師ではない学生特有の、何かオリジナルな戦法が観れるかもしれないので、個人的にもチェックしておきたいところだった。


「ああ、それでいい。どうでもいい試合は倍速で観ればいいだけだ」

「そういうことなら、全部探すのに時間がかかっちゃうかもだけど、待っててね」


 こうしてこの学校の魔術戦研究部一年の模擬試合をチェックしていくことにした。




    *




 夕食休憩を挟んで、早四時間。

 日付も変わろうかとする頃合い。

 やっとのことですべての模擬試合を観戦し終えた。


 フィナは途中で観疲れて、半目になって無言でいた。

 ぼーっとしている彼女の肩を叩き、指示を与えることにする。


「なあ、この模擬試合ってリーグ戦だろ? その勝敗がまとめられた試合表ってあるか?」

「あるけど、そんなの必要なの?」

「ああ、ちょっと気になることがあってな」


「わかった!」と言って、部屋の外に出るフィナ。

 しばらくすると、彼女は戻ってきた。


「これがリーグ表だよ。勝敗も全部かかれてるから」

「ありがとう」


 フィナから大判の紙を眺めることにする。

 やっぱりか……。

 オレは口を開いた。


「正直言って、一年全部員の中でフィナは四、五番目くらいの強さは持っていると思う」

「本当っ⁉ でも、六位だったよ⁉」

「じゃあ、なんで六位だったと思う?」

「う~ん、それがわからないからオーラルドに訊きたいんだけど……」

「答えは簡単だ。お前は落としちゃいけない格下との試合で負けてるからだ」


 試合表の一マスを指さす。


「たとえばこの試合。フィナは負けたよな?」

「うん、あと少しで勝てそうだったんだけどね……」

「でも、この試合の相手の成績は結果二十位以下だ。要するに簡単に勝てるはずの試合だったんだよ。それをお前は落とした」

「相手が強いか弱いかなんて関係あるの? どれも負けちゃいけないんじゃないの?」

「一位を目指しているならな。でも、今回はレギュラーメンバーになれる五位以内が目標だろ? リーグ戦なんて格上相手に勝っても、格下相手に勝っても同じ一勝なんだ。だったら、簡単に取れる勝利は確実に取っておかなくちゃいけない」


 フィナには散々魔術戦のことを教えてきたが、こういう大会形式の戦い方のノウハウは全く教えていなかった。

 学校に入って自分の経験で学んでいけばいいかと思っていた。

 けれど、やはり大会を経験していない身では、小さい頃から魔術戦大会の経験に富んだ貴族達にしてやられているようだった。


「たとえばだけど、ジャンっていう奴いるだろ?」


 三馬鹿のうちのノーマル馬鹿でお馴染み、ジャン・ハンバーである。

 彼も魔術戦研究部に在籍していた。


「私より一つ順位が上だった人だ」

「ああ、そうだ。正直、こいつは観た感じフィナより実力があるわけじゃない。直接対決でもフィナが勝ったしな。でも、順位はこいつの方が上だった」

「そうなんだよね……。なんでだろう?」

「こいつは格下相手との試合を一回も落としてないんだよ。だから、格下相手との試合を二回ほど落としたフィナに順位で勝つことができた」

「なるほど」


 フィナが大きく頷いた。


「要するに負けちゃいけない試合で負けたのが駄目だったと」

「そんな簡単な話じゃない。こいつは知り合いで、いつも馬鹿っぽい言動をしているのを見ているんだがな。こと魔術戦に関してはめちゃくちゃ小狡い戦い方してるよ。フィナを含め格上相手との試合は負ける前提で流して、格下の奴には徹底的に相手の戦い方を研究してマークしてる」


 格上相手と格下相手との試合の落差が一目瞭然だ。

 格上相手との試合はもうちょっと粘れよって試合ばっかりなのに対して、格下相手との試合は作戦勝ちで完勝しているのがほとんどだった。


「こいつとこいつに勝てば五位に入れるってのがはっきりわかってるんだろうな。昔にオレと戦ったことがあるみたいだし、大会慣れしているんだろう。どうやったら自分の実力でいい成績を残せるか、理解している立ち回りだ」

「でも、チャレンジ精神があった方が良くない? 強い人に本気で挑み続けた方が後々強くなりそうじゃん」

「それも一理あるが、やっぱり勝つことは重要なんだよ。だって、こいつは大会に出れるんだろ? 要するにさらに場数を踏めるってことじゃないか。魔術戦の世界では、勝つことができなきゃ、強い奴と戦う機会も与えられない。とにもかくにも勝たなきゃいけないんだよ」


 魔術戦の大会を経験してきた者は皆そのことを知っている。

 フィナと他の貴族では勝利にかける思いが違うのだ。

 その思いの強さでフィナは負けたといってもいい。


「お前はまだ勝つことへの貪欲さが足りない。どんな手を使っても勝つ。それくらいの執念が必要なんだよ」

「オーラルドもそうだったの?」

「ああ、オレなんてその勝ちにこだわる典型的なタイプだったよ。自分はあまり才能がなかったからな。勝って、誰よりも場数を踏んで、強くなっていった」


 大会で勝ち続けたことによって、ジュニア世代の国代表とかにも選ばれてたしな。

 他の国の強い魔術師とも戦うことができたのも、とてもいい経験だった。


「まずフィナは格下との戦い方を覚えていくべきだな。オレと手合わせしてたおかげで強い奴に一矢報いるのは得意だが、逆に勝っている局面で勝負を上手く終わらせられないシーンが目立っている。お前、多分研究部でも強い人とばっかりしか手合わせしてこなかっただろ?」

「うん、強い人と戦った方がいいと思って――」

「それも大事だが、弱い奴と戦う経験も大事だからな。どんな相手にもオレと戦うときのような警戒をしているせいで無駄に試合時間伸ばしているんだよ。決められるところで決めないと、逆に相手に捲るチャンスを与えてしまうしな。当分は強い奴との手合わせは禁止」

「ってことは、オーラルドは今日手合わせしてくれないの?」

「ああ、駄目だ。やるだけ逆効果」


 これは指導を行ったオレの責任でもある。

 自分一人を相手にさせすぎたせいで、オレと戦うときの癖が抜けないようになってしまった。


 魔術戦というのは相手の得意戦法や癖を読んで戦っていくことも重要だ。

 相手の戦い方を研究して、その対処法を考えていく必要がある。

 それにも関わらず、誰相手でもオレと戦うように挑んでいたら、勝てるのも勝てるはずがない。


 って言っても、オーギスにいた頃は他に魔術戦ができる相手もいなかったしな。

 こればかりはしょうがないのかもしれない。


「あとは相手のことをもう少し勉強しろ。お前と戦ってる貴族達はほとんどお前の戦い方を研究して、突破口を探そうとしてたぞ? それにも関わらず、お前は相手の得意分野や苦手分野をよくわかってないで戦ってるだろ? 事前に試合する奴の稽古の姿とか、こういう試合動画を確認したか?」

「すみません……してません……」

「ということで、これからの時間はそういう自主勉強の方法を教えてやる。学び方さえわかれば、こうして一々指導しなくても勝てるようになれるだろ?」

「本当に助かります。オーラルド様」


 両手をすり合わせて頭を下げるフィナ。

 これも今まで教えてなかったオレが悪いんだけどな。


 学校に行けば周りの人達の見よう見まねで勝手に覚えるだろと思っていたが、そこまで要領のいいタイプでもなかったことを忘れていた。

 オレと出会う前は魔術戦魔導師になるために、ただひたすら魔術の発動だけを練習してるっていう滅茶苦茶酷い勉強方法をしてた奴だったしな。


 言われたことを完璧にこなすのは得意だが、自分でやり方を考えるのは苦手ときた。

 自分でやり方を考えるのは得意だが、人に言われたことに素直にできないオレとは正反対の性格である。


「このリーグ戦の何人かの試合を観て、こういうところに着目したらいいって教えるから、それを参考に後半は自分で分析してみろ」

「うん、わかった。で、誰から観るの?」

「それが迷いどころなんだよな……」

「オーラルドがこの人の戦い方が好きって思った人から観てみれば?」


 フィナの提案に顎を擦りながら考える。


「戦い方が好きなのはさっきも名前出したジャンなんだけどな」

「そんなお気に入りなんだ」

「知り合いだから面白く感じるってのもあるんだろうけど……。あいつは戦いへの臨み方が面白いだけだから、最初に観るには適してないんだよな」

「えっ、ジャンくんと友達なの?」

「友達ではないと思う。勝手にこっちの机に来て絡んでくるだけだ。あとグゲスとかも」

「エロ大魔王と友達なの⁉」

「今、なんて呼んだ?」


 すごいワードがフィナの口から飛び出てきた気がする。

 エロ大魔王だとか、なんだとか……。

 思わず訊き返してしまった。


「エロ大魔王だよ。いつも変なこと言ってばかりだから、研究部の女子の中でそう呼ばれてるんだ」

「あいつ、研究部でもあんな感じなのかよ……」


 救いようのなさに頭を抱えたくなった。


「ちなみにフィナは変なこと言われてないよな?」

「うん、今のところは」


 良かった。安心した。

 この前一度フィナに手を出さないよう釘を刺していたが、念のためもう一度強く脅しておくことにしよう。


「グゲスもなぁ。こいつは男相手の試合だと泥臭く粘って、良い勝ちを拾えてるんだけど、女相手だとあからさまにかっこつけてるからな。これじゃあ、勝てねえだろ……」

「だよね。エロ大魔王と戦った女の子が、戦いの途中にウインクされたみたいな話聞いたことがあるし」


 マジであいつ何やってるんだ?

 まともに魔術戦を勉強する気あるんだろうか?

 まあ、グゲスのことだから、女にモテるために魔術戦を勉強しているとかあり得そうなんだけど。


「そうだな。一番オレがよく知ってるクルシャの戦法について取り扱っていくことにするか。あいつが一番強いし」

「魔術戦研究部のエースの子だね。すごい魔術戦魔導師のお父さんを持つ」


 クルシャはこのリーグ戦でも全勝を収めて、一位の成績を取っていた。

 まさに魔術戦研究部期待の星とも言える存在だろう。


「こいつの得意魔術は父親と同じく氷魔術だな。前に言っただろ? 魔術戦ってある程度強くなるだけなら、一つ戦法を極めていった方が手っ取り早いって」

「うん。それで私もオーラルドに接近戦中心に教えてもらったんだよね」

「ああ、そうだ。それでクルシャは同じことを氷魔術で体現したような奴だ」


 自分とは正反対のタイプの魔術師と言えるだろう。

 オレは扱う魔術や戦法の数を武器とした器用貧乏な魔術師だとしたら、彼女は氷魔術特化型の魔術師。

 いくらオレの方が強かったといえど、氷魔術に限っては昔でもクルシャの方が上回っていた。


「特に二つの魔術が強力だな。刺突方向に寒波を放つことで、万物を凍らせるレイピア型魔道具、輝剣アイシクルペインを使った剣撃。そして、大きな翼型の氷を背後の地面から発生させ、後ろの広範囲を凍らせる魔術、氷墓之翼(アイスウイング)。この二つの練度だけは他の追随を許さない。というか、大体決め手はこの二つだけだ」

「確かに私も後ろに回ったときの氷墓之翼(アイスウイング)でやられちゃった」

「そうなんだよな。前はアイシクルペイン、後ろは氷墓之翼(アイスウイング)でっていう感じで補い合っているから。意外に隙がないんだ」

「そうそう! それそれ!」


 フィナは何度も大袈裟に頷く。


「この二つを食らわないとなると、一番良いのは距離を取ることなんだ。けれど、その対策として氷面世界(アイスフィールド)で地面を凍らせて、滑走(スケーティング)っていう魔術を使って猛スピードで滑り近づいてくるんだよ」

「ちゃんと弱点への対策をしているんだね」

「大体戦法を絞って極めてる奴はそんな感じだよ。自分の得意魔術が上手く活かせない状況を想定して、それに対応する魔術や戦法もブラッシュアップしていく。だから、クルシャは遠距離の魔術の撃ち合いも得意だぞ。滑走(スケーティング)で上手く近寄れなかったときに備えて」


 接近戦ができる相手には自分の得意なアイシクルペインの刺突と、氷墓之翼(アイスウイング)で。

 距離を取ってくる相手には氷面世界(アイスフィールド)からの滑走(スケーティング)で接近し。

 それでも近づけないくらい遠くに離れていく敵には、遠距離魔術の撃ち合いに持ち込む。


 シンプルだが、非常に凶悪な組み合わせだ。

 しかもその戦法に撃ち込んでいる時間が長い分、付け焼き刃の対策では容易に崩すことができない。

 なんとも手強い魔術師である。


「ねえ、そんな相手にオーラルドだったらどう勝つの?」


 フィナは純粋な表情で尋ねてきた。


「昔は色々穴があったからそこを突けたんだけど、この二年で弱点を潰して仕上げてきてるしなぁ。今のオレだったら難しいんじゃないか?」

「えっ、オーラルドでも?」

「当たり前だ。二年間のブランクがあるんだぞ? 昔みたいに色々と情報を集められるっていうなら、マイナー魔術を使ってわからん殺しをするんだろうけど、今はそれもできないしな。割と厳しいと思う」


 もちろん、無詠唱魔術を使えば簡単に勝てる。

 けれど、純粋なこの世界の魔法技術だけの魔術戦だったら。

 まず勝てないといえる相手だった。


「じゃあ、クルシャさんに勝って一位になるとしたら、オーラルドを越さなくちゃいけないんだ」

「ああ、そういうことだ」


 もちろん、フィナにはそのポテンシャルがある。

 フィナの生体術式(ギフト)や生まれ持った運動神経は神ががったものだ。

 それはオレやクルシャも持ち合わせていない才能。


 魔術戦魔導師になるという夢を叶えるためには、クルシャ・エーデルティーは越えなければいけない壁である。

 言い方が悪いが、クルシャに勝てないようじゃ、他の学校にいる将来有望な魔術師達にも勝てることはできない。


 そして、フィナにはそれができる。

 そう思うくらい、オレは彼女の才能に期待を寄せていた。

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