薬屋②
「あの……ご用は何かしら?」
しばらくドアの方を見つめていたようだ。店主のディーナに声を掛けられた。
明るい雰囲気の小柄な女性だ。歳は五十代くらいだろうか。
「あ、ああ、すいません」
二人のせいで目的を忘れていた。気を取り直して聞き取りをする。
「私は薬草の回収の件でお伺いしたわけではないのですが……。えっと、三日前のことですが、白い髪の女の子が訪ねてきませんでしたか?」
「もしかしてセリーナちゃんのことかい?」
「そうです。何か知っていませんか?」
「あの子もどうしちゃったのかしらね……。ああ、それで三日前のことだったわね。そうね、あの日ここに訪ねてきたときは、薬草はどこで取れるか聞いてきたわ。そうそう、さっきのあの子たちのようにね」
「セリーナがですか?」
「そうよ。前から薬師になりたいって言っていてね、調合とか教えてあげてたのよ。でもあの日は自分で摘んでみたいって言ってきかなくてね。危ないよって伝えても、自分で摘んでみたいっていつもより積極的だったから、採取場所を教えたのよ。一人で行っちゃいけないよって言ったんだけどね……」
そういうやり取りがあったのか。
いや待てよ。矛盾している。薬草が取れなくなったから回収の依頼があったはずだ。
「さっきのソフィーたちの話では、薬草を採れる場所がなくなってしまったとのことでしたが、採取場所を教えたというのはどういうことでしょうか?」
「違うのよ。三日前までは取れていたの。セリーナちゃんに採取場所を教えた次の日に行ってみたら、薬草が取れなくなっていたのよ。それにセリーナちゃんもお家に帰っていないって言うし、どうしちゃったのかしら」
なるほど。三日前に薬草もろともセリーナが消えたのか。
胸ポケットからメモを取り出し、記入しておく。
「その場所を教えていただけますか?」
「ええ、もちろんいいわよ。薬草もセリーナちゃんも見つけてちょうだいね」
そう言ってディーナさんは今まで薬草が取れていた場所を教えてくれた。
一通り聞き込みを終えるとディーナさんが「持って行ってちょうだい」と言いポーションをいくつかくれた。
いい人だなと思った。
もしセリーナが見つからないまま時間が過ぎたら、ゴブル夫妻はディーナさんのせいだと言い出すかもしれない。ディーナさんが危険な場所を教えたからだと非難するかもしれない。これは大いにあり得る。
セリーナのためはもちろんだが、ゴブル夫妻とディーナさんのためにも一刻も早く解決したいと思った。