回収③
「ハリエット見て! そこの壁に魔石の塊が埋まっているわ」
「すごいです! これはめずらしい」
ハリエットがピックを使って削っている。
「あれ? これはもしかして」
「どうしたの?」
ソフィーがのぞき込んでいる。
「鉱石です。魔石の隣にありました。しかもこれも高純度のようです」
二人のやり取りが気になったので、王座を離れ見に行く。
「どうしたんだ?」
「高純度の魔石と鉱石がごろごろ見つかっています」
ハリエットが壁面に埋まった石を指さして言う。
「そうか。それはすごいじゃないか」
「でもハリエット、ここに来る前は、大したものはなさそうだって言っていなかったかしら?」
「ええ、魔物の気配がありましたので、洞窟内は汚れていると思っていましたし、入り口付近の土質からそう判断していました」
鉱石を取り出しながらハリエットは話し続ける。
「しかし、昨日と状況が少し違っているようです。もはや宝の山と言っていいでしょう」
「どうしてかしら?」
「わかりません。ただ、石の純度を上げるには、高熱で加工して不純物を取り除く必要があります。考えられることとしたら、私がここを去った後、誰かがこの洞窟ごとかなりの高温で熱したということでしょうか」
「そんなことできる人いるの?」
ソフィーが両手を広げて首をかしげている。
「さあ、私自身かなり無理のある推理だと思っています。やはり私には純也様のように頭が回りません」
「そうね、純也は特別よね」
二人がこちらを見る。
いや、ハリエット。正解だ。過不足のない推理だ。
途中から口をはさめなかった。何かしゃべったらぼろが出るかもしれないと思ったから。
「ま、まあ、よくわからないけど、回収して帰ろう」
「そうですね。しかし全部は回収しきれません」
「それじゃあ持てる分だけ回収して、薬草の群生地のときのように場所を教えて、特別報酬をもらいましょうよ」
ソフィーが珍しくまともな意見を言うので、それを採用する。
ハリエットが削り取った石の塊を鞄に入れていく。
やはり鞄がいっぱいになってもまだまだ石はごろごろしている。
昨日は特に気にならなかったのに、冒険をしない生活をしすぎたのだろうか。素材の回収という習慣が身についていない。今後は気を付けよう。
「それじゃあ帰るぞ」
「「はい」」




