プロローグ②
「お、お帰りになられたのですね」
受付嬢が目をくりくりさせている。
「ああ、帰った」
「あの、その、依頼の方は……?」
伺うように聞いてくる。
「終わった」
「終わったのですか!?」
受付嬢はなぜか驚いている。
「なに驚いているのよ。当たり前じゃない。私たちよ。こんなの簡単だったに決まっているじゃない」
ソフィーが受付に肘をつき、ドヤ顔で言っている。
「そ、そうですよね。すみません。他の方々は達成できずに帰ってこられていたので……」受付嬢はぺこぺこと頭を下げている。「申し訳ありませんが、一応、詳しくお話いただけますでしょうか」
確かに「終わりました」「そうですか」とはならない。口だけの報告では信憑性がない。
証拠を示さなくてはならない。そのための物資の回収だったのかもしれない。
遺跡で回収した物資を受付嬢に渡す。
「話は私がいたしましょう」
ハリエットが「はじめまして」と受付嬢に挨拶をして、事の顛末を伝えた。
ソフィーはその間、その場を離れ、トルルの森でのことを自慢げに他の冒険者たちや、帰還した俺らを見に来ていた野次馬たちに話していた。
「ユーテラスからいらしたエルフさんだったのですね」
受付嬢がそう言うと、周りで聞き耳を立てていた他の冒険者達が少しざわついた。
ハリエットの正体を知って驚いているようだ。よく知らなかったけれど、ユーテラスのエルフは有名なのだろうか。
「それでは報酬をお渡しします」
ハリエットの説明と、回収した資源の提出で、依頼達成と認められたようだ。
受付嬢が袋に入った金貨をこちらに手渡す。
代表して俺が受け取るが、ずっしりと重たく、いつもの報酬よりも桁違いの額だとわかる。
報酬の袋を鞄に入れ、帰ろうとソフィーを見ると、さっきよりもソフィーの周りには人だかりができていた。
テーブルの上に立ち、身振り手振りで群衆の気を引いて話をしている。まるで革命家のようだ。チェか? チェなのか?
「おい、ソフィー! 帰るぞ!」
「え、もう? わかったわ」
群衆たちに大げさに手を振り「じゃあまたね」と言い、演説は終了したようだ。こちらに向かってくる。
「ソフィー、だいぶ人気者だな」
「当たり前じゃないの」
自慢げに笑うソフィー。
少し照れもあるようだ。
冒険者ギルドを出て、自宅へ向かう。ここからそう遠くはない。
数日ぶりの街の家々をしみじみ見ていると、あっという間に家についた。