回収②
「やはり魔物はいませんね」
「そうだな、それはラッキーだ」
テキトーに話を合わせておく。
分かれ道にたどり着く。
昨日も来た道だ。
右が王座の間だ。右に進む。
左はおそらくゴブリンたちのトイレだったのだろう。思い出すだけで鼻が曲がりそうだ。
「迷いもなく進むのね。なかなか度胸があるじゃない」
「そ、そうか? なんていうか、悩んでも仕方がないから、右を選んだだけだ」
「そうなんですね。私は左からかすかに異臭がしたので、右を選んだのだと思いました」
「お、おう、そうだったか。それならよかった」
臭いところには行きたくないという一心で進んでしまったが、二人には少し不自然に見えたかもしれない。
まあ深く追及してこないようなので安心だ。
昨日となんら変わりのない洞窟だが、本当に魔石と鉱石の群生地で合っているのだろうか。
王座の間につく。
「王冠があるわ」
ソフィーが王座に駆け寄る
「この王冠もらっちゃいましょう」
「昨日は確かに魔物の気配があったのですが……。誰かが倒したのでしょうか」
ハリエットが眉間にしわを寄せている。
「ま、まあいいじゃないか。戦わなくて済むのならそれで」
「それもそうですね。それじゃあ素材の回収をしていますので、純也様はその王座にでも腰を掛けて待っていてください」
たまに冗談みたいなことを本気で言うからハリエットは油断ならない。
「私も手伝うわ」
ソフィーとハリエットは一緒になって這いつくばって、回収をしている。
王座は石でできているため、ごつごつしてお尻は痛いし背もたれも硬い。
しかしなぜだろう。座り心地は悪くない。気持ちがいい。
「うわぁ。きれい!」
ソフィーが手のひらに石を乗せて目を輝かせている。
「それは魔石ですね」
ハリエットが石を手に取り、鑑定するように見ている。
「これは……なかなかの純度です」
「そうよね! かなりきれいだもの」
「こんなに純度の高いものがあるとは思いませんでした」
二人が興奮している。異世界でもやはり女性はきれいな宝石が好きなのだろう。
それにしてもいいものが見つかってよかった。ゴブリンたちが集めていたものだろうか。
そういえば、昨日戦利品として持って帰ったのも魔石なのかもしれない。