進捗報告
夕食時のグリン食堂はそれなりににぎやかだ。
静かに食事をしたい純也だが、味と値段を鑑みると、騒がしさは我慢できる。
今はお金に困っていないが、それでも長年培ってきた貧乏性は治る見込みはなさそうだ。
グリン食堂で夕飯を食べながら、純也、ソフィー、ハリエットの三人は進捗状況を報告しあっている。
「一日で解決するなんて、さすが純也様です」
「やるじゃない」
セリーナとクエちゃんの話をソフィーとハリエットに伝えた。
セリーナ救出後、アーガルムに到着するとすぐに病院に運んだ。
傷口からウイルスが入ったのが原因で発熱しているようだと、お医者さんから聞いた。
薬を飲んで休めばよくなるとのことで、胸をなでおろした。
ゴブル家でその件を伝えると、「ありがとうございます」と言って、急いで病院に向かっていった。
その後、ウィーズ家に向かい、クエちゃんを受け渡した。
傷ついたセリーナを診ていたと伝えると「さすがうちのクエちゃんね!」と言ってぎゅっとクエちゃんを抱きしめていた。クエちゃんは、苦しそうな、嫌そうな、顔をした。また脱走しなければいいなと思った。
一応、薬屋のディーナさんにもセリーナのことは伝えておいた。彼女も安堵の表情を浮かべていた。それと、もらったポーションが役に立ったとお礼を伝えた。
ゴブリンの件はソフィーとハリエットの二人には伝えなかった。能力が露呈すると面倒なので、その話だけは端折った。
「でも一体何があったのかしらね」
「そうですね。セリーナさんが回復したら事情を聞きたいですね」
セリーナが回復すれば、すべてがわかるだろうが、予想できる範囲はある。
「おそらくだけど、セリーナが薬草を摘んでいる最中に魔物に襲われたんだろう。それを家出していたクエちゃんが助けた。薬草の採取場所が燃えていたのはクエちゃんの炎によるものだろう。そしてクエちゃんが応戦している間にセリーナは道なき道を走り続けて、滝の裏の横穴に逃げ込んだ。まあそんなところだろう」
ステーキを切りながら二人に想像したことを伝える。
「それでいつもの場所で薬草が取れなくなっちゃったって事かしら」
「そうだろうな」
「純也様の推理力には頭が上がりません」
ハリエットが頭を下げている。
「大げさだな。それより、そっちの方はどうなんだ?」
「私の方は終わったわ。薬草をたくさん摘んだもの」
ソフィーが親指を立てている。
「私が群生地を見つけましたから。それを薬屋のディーナさんに教えたら、追加報酬もいただけました」
「ハリエットのおかげだな」
「私だって頑張ったのよ!」
身を乗り出して訴えるソフィー。
髪の毛がスープに入りそうだ。
「そうだな。うん、よくやった。ソフィーもお疲れ」
ソフィーが満足そうに笑っている。
「私の方は、鉱石と魔石のありそうなところを見つけたのですが、魔物の気配があったので、一人では危険だと判断し、回収していません。それに純度が低そうだったので、それで妥協していいか一度聞こうと思って保留にしてきました」
薬屋で相談があると言っていたのはそのことか。かなり早い段階で、依頼の大部分を終了させていたことになる。
「ハリエット……。なかなか優秀だな……」
「ありがとうございます。それで、どうしましょうか?」
「純度が低くてもいい。そこで回収しよう。今回は報酬の高さよりも、いかに早く終わらせるか、の方が優先だ。明日朝イチでそこに向かおう」
「わかりました」
「わかったわ」
報告は終わった。後は仕事のことを忘れ、他愛もない話をしながら食事となった。




