追跡②
「セリーナか?」
「は……はい……」
力を振り絞るようにセリーナが答える。
足を負傷しているようで、出血していた。
持っていたポーションで回復を試みる。
「よく頑張ったな」
傷口はふさがったようだが、相変わらず苦しそうだ。
おでこに手を当ててみると、熱があると思われた。
これ以上ここで出来る治療はない。
今から助けを呼ぶよりも、セリーナにはつらいだろうが、このまま馬に乗せて連れて帰る方が現実的だろう。
「うぅ……」
抱きかかえるとセリーナは苦しそうな声を出す。
横穴には薬草やベリーリの実が転がっていた。
クエちゃんが取ってきて、援助していたのだろう。
なんとか耐え忍んできたようだ。
「クエちゃん、よくやった」
クエちゃんの頭をなでると「クェ」と自慢げに答えた。
申し訳ないが、セリーナにはもう少し頑張ってもらう。
濡れたくはなかったが、セリーナを前にそんな悠長なことは言っていられない。
安定が第一優先。足を水に突っ込み、セリーナを落とさないように確実に進んでいく。
馬までたどり着くと、空気を読んでくれたのか、馬はかがんでくれた。
セリーナを抱えたまま馬にまたがる。
手綱を手に取り、アーガルムに戻ろうと思ったが、どこに向かったらいいのかわからなくなった。
川を下るところはわかるが、どこから川を離れればいいのか……。
どうしたものかと考えごねていると、クエちゃんが滝から出てきた。
「クエちゃん! アーガルムまで連れて行ってくれ!」
「クェエエ!」
たぶん某居酒屋チェーンよろしく「よろこんで!」って言ってくれている。
クエちゃんは空中を一回転すると、川を下って飛んで行った。
「セリーナ、少し揺れるが、我慢してくれ」
そう伝えると、馬を走らせた。