追跡①
クエちゃんの後を追いながら、ここのところ急に町の外に出るようになったなと振り返る。
能力が気持ちを大きくさせているのも理由の一つかもしれないが、すべてはソフィーが家に転がり込んでからと言えるだろう。
しかしそうなってしまったのは、自分のせいなので、彼女に文句は言えない。
こうやってやりたくない依頼をしているのも、彼女に対して罪悪感みたいなものがあるからだ。
それと、なんか放っておけないのだ。少しばかりではあるが、彼女の成長を見てきている身として、構ってあげたくなる気持ちがある。
甘やかすのはよくないとは思うが、どうも強く怒れない自分がいる。
そんなことを考えながら、クエちゃんを追う。
街の外には魔物がいるはずだが、今のところ、さっきのゴブリン以外遭遇していない。
たぶんドラゴンがいるからだろう。小さいとはいえドラゴンの威嚇力はなかなかだろう。
番犬ならぬ番竜というものだろうか。今後の生活を考えたら、自分の家でも取り入れてもいいかもしれない。検討しよう。
森の茂みが濃くなっていく。背の高い木々が増え、太陽の光がこぼれ日となって降ってきているようだ。まだ明るいので新緑がきれいに見える。しかし夜だったら薄気味悪いかもしれない。
川辺に出た。川のせせらぎと鳥の声が、さっきまで臨戦態勢に入っていた気持ちを落ち着かせてくれる。
川上に向かって進む。
獣道もないので、馬が歩きそうにしている。たまに労って首元を撫でてあげると、嬉しそうにする。
川の水の音が強く聞こえてくる。流れのはやいところがあるのだろうか。
クエちゃんの飛ぶスピードが速くなった気がする。
目標はもう少しだろうか。見失わないようについていく。
滝が見えた。水の音が強くなったのは、この滝があったからのようだ。
滝は高さ十メートルと言ったところか。三階建ての建物くらいの高さだ。
滝壺は深そうだが、そこまで広くはない。真ん中に岩がある。枡で測って漏斗で飲みそうな場所だ。
セリーナのことを考えると、あまりよくない思考だと反省をする。
ここはおそらく普段誰も来ないような場所だろう。樹林がが鬱蒼としている。
クエちゃんが一回転し、滝の裏に入っていく。
「クェエエエエエエ!」
滝の裏から、クエちゃんの声が聞こえる。
こちらに来いと言っているようだ。
馬の手綱を木に括りつける。
滝のそばまで来ると、裏に横穴らしきものがあるように見える。
ひょこっとクエちゃんが顔を出す。ここまで来いということらしい。
岩がごつごつしていてい足場が悪い。
転んでも死ぬことはないだろうが、けがはしたくない。けがをしなくても、濡れたくない。
気を付けて進む。滝のしぶきが冷たい。
濡れた岩は滑りやすいが、ちょどつかみやすいところにツタがあったので、しっかりと掴んで一歩一歩進んでいく。
横穴までたどり着くと、クエちゃんがこちらを向いて座っていた。
その後ろに横たわる人影があった。
きれいな長い白い髪の女性だった。
急いで駆け寄る。首に星のネックレスをしていた。




