現場③
ゴ、ゴブリン!?
危ない。声に出すところだった。
後ずさりし、深呼吸。
一瞬しか見えなかったが、ゴブリンが数十体いた。群れだ。ゴブリンの群れだ。
この奥は広間のようになっていて、大量のゴブリンがわんさかいた。
ゴブリンの群れがこの洞窟に住んでいたようだ。
ここで見つかったら数の暴力で太刀打ちできないかもしれない。
これを相手にしなくてはいけないのか。やはり一度戻って二人と合流したほうがいいか。
いや待てよ。
セリーナがこの洞窟の中にいる可能性がある。
ゴブリンは人間の女性を苗床にすることがあると聞いたことがある。
もしそうだとしたら、一刻も早く救出したい。
よく考えろ。
もう一度顔をのぞかせて様子を確認する。この広間がこの洞窟の行き止まりのところのようだ。
これ以上奥はなさそうだ。隠し部屋みたいなものがなければだが。
見たところセリーナはいない。
岩気に戻り座って思案する。
目視だけでここにはセリーナはいないと判断して引き返すのもありだろう。
しかし見えないだけでいる可能性はある。
いたとしたら遺体となっているかもしれないし、苗床になっている可能性もある。
親としてはどんな形であれ、娘が返ってきてほしいと思うものなのだろうか。
だがセリーナ自身はどうだろうか。そればかりはわからない。
一つ案を思いついたが、かなり捨て身だ。
くそ、やるしかないか。当たって砕けるか。
腹をくくれ、俺! 俺は一度死んでいるんだ。捨て身上等だ。
覚悟を決めて立ち上がった。