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第7話〜青い鳥の行方

…………。


少年は部屋の窓から外を眺めます。


少年は自然豊かな領地が好きでした。


しかし今はどんどん領地は開拓され、家や畑が作られています。


窓からすぐ近くに見えた森も、今ではとても遠い。


毎日のように笛を吹きに行った森。


青い鳥と出会ったのも…


「……ねぇ、君はどこにいるの?」


少年の呟きは誰にも届きません。


胸元から取り出した青い羽は、今でも美しく青く透き通るよう。


少年は青い羽越しに森を眺めて過ごします。


…………。


「……兄さん」


「……やあ」


ある日、ふらふらと屋敷の中を歩いていた少年は、久しぶりに弟と顔を合わせました。


本当に久しぶりです。


父親も弟も王都へと長く出かける事が多くなりました。


屋敷に帰って来ても部屋で仕事をしているのか、ほとんど会う事はありません。


いつからか食事の時間もばらばらになり、ついには一緒に食卓を囲む事もなくなりました。


貴族とは思えないほど貧しい食事も、家族みんなで会話を楽しみながら食べれば美味しく感じたものです。


今は貴族らしい、贅沢で美味しいご馳走が毎日食べられます。


けれど、温かくて美味しいはずの料理が並ぶ食卓はがらんと広くて、それを忘れるために少年は黙々と一人で食べ続けることが多くなったのでした。


…………。


少年は弟を見ます。


少年とよく似た、いえ、よく似ていたその姿を。


少し勝気な雰囲気ですが、少し背も伸びてその姿はまるで青い鳥と出会ったばかりの頃の少年と瓜二つです。


それに比べて今の少年の姿は…


自身に満ち溢れている弟と比べて、毎朝鏡に映る少年の顔に覇気はありません。


運動もほとんどしないで食べて寝てばかりいたのでぶくぶくと太っていました。


勉強も、次期領主の座も、全て弟に押し付けて、自分は…


「えっと…」


「悪いね、兄さん。商談のためにすぐ行かなきゃいけないんだ。それじゃ」


少年が話しかけようとすると、そう言って弟は足早に去って行ってしまいました。


無意識に伸ばした少年の手が、しばらく宙をさまよい、力なく下がります。


父の跡を継ぐ事になった弟はとても忙しそうです。


せめてその手伝いでも出来ればいいのですが、どうすればいいのか分かりません。


少年はうなだれ、そして踵を返します。


屋敷の外にも、屋敷の中にも、少年の居場所はない、そんな気がしました。


自分は何のために生きているのか。


空っぽな少年は虚しさを抱えながら部屋に戻ろうとして…


「……え?」


廊下に一枚の羽が落ちているのを見つけました。

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