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第4話〜弟

…………。


少年には勉強のできる優秀な弟がいます。


少年と見た目はよく似ていますが、性格は全くと言っていいほど違いました。


少年は弟のことが可愛くて仕方がありませんでしたが、弟は少年を嫌っていました。


勉強や習い事から逃げ出してやりたい事、笛ばかり吹いているのを見て心底軽蔑していたのです。


弟は勉強ができます。


習い事だって頑張っています。


けれど家は長男が継ぐ決まりです。


父親は少年ばかりかまっていて、弟にはあまりかまってはくれません。


実際は手のかかる少年はよく叱られたり注意をされて、少年と比べて手のかからない弟はあまり怒られるような事がなかっただけなのですが。


最近は特に少年が怒られる事も少なくなり、それどころか楽譜をプレゼントしてもらったりと可愛がられているようです。


弟は面白くありません。


今日も少年は朝早くから屋敷を出て行きました。


弟は少年の後を追いかけることにしました。


…………。


森に入って少しすると、少年が立ち止まります。


そして持っていた笛を吹き始めました。


それを弟は、離れた位置にある木の影から見ていました。


「……あんなもの、何の役に立つんだ」


弟は笛を吹くのが苦手です。


それどころか音楽や芸術の才能は全くありませんでした。


屋敷には色んな楽器があります。


少年たちの母親の物です。


少年が吹いているのも、母親が一番大切にしていた笛です。


弟は屋敷にある楽器を一つとして上手く扱う事は出来ませんでした。


弟は美しい音色を奏でる少年と笛を見て、唇を噛み締めます。


「……!あれは」


弟が見ている先で、少年の肩に青い鳥がとまるのが見えました。


少年と青い鳥は親しげに笑い合い、笛と囀りで美しい音色を奏でます。


弟はそれをしばらく見ていました。


…………。


弟は鳥が嫌いでした。


いえ、生き物全般が嫌いでした。


鳴き声はうるさいし、懐かないし、近付けばすぐ逃げていきます。


乗馬だけはなんとか出来ましたが、それでもあの兄と同じ程度にしかうまくできませんでした。


青い鳥と戯れる少年を見て、その自由で楽しそうな様子を見て、弟の胸の内はもやもやとしたもので一杯でした。


次の日も、その次の日も、弟は少年の後をつけました。


そして少年が父親に青い羽をプレゼントしているのを知りました。


頭のいい弟はこう考えます。


どうやらあの青い鳥の羽をプレゼントしているから、最近父親は少年に優しいのだと。


つまり自分も、青い羽をプレゼントすれば…


しかし同じ手ではこれまでと同じに戻るだけ。


それでもこのままではどんどん父親と少年は仲良くなり、自分のことなど見向きもされなくなってしまう。


そんな焦りを覚えました。


そして見てしまいました。


青い鳥の羽が光り、少年の傷が治る瞬間を。


ただでさえ珍しい青い羽。


しかもそれが人の傷を治すことのできる特別なものだったら…。


弟は考えます。


どうにか自分も青い鳥から羽を手に入れられないか。


そして…


「……そうだ」


弟は思いつきました。

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