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第2話〜青い羽

…………。


青い鳥が去ったあと、少年の心は誇らしい気持ちで一杯でした。


自分一人の力で倒れている木を動かして、鳥を救う事ができたのです。


勉強が出来ず、いつも大好きな父に叱られてばかりで自信のなかった少年は、それだけでとても嬉しい気持ちになりました。


足取りも軽く、屋敷へと帰ります。


今なら何だって出来そうな気分でした。


少年は青い鳥にもらった羽を太陽にかざします。


青くてきれいな羽は、これまでに見たことのあるどんな宝石や装飾品にも勝るとも劣りません。


一瞬、空にとけて消えてしまいそうに感じて、慌ててしまったほどでした。


…………。


少年は今日も森で笛を吹いていました。


また勉強ができない事で、大好きな父に叱られたからです。


全てはお前のためだと父は言います。


勉強して、立派になって、領地を継ぐのだと。


領地を発展させ、豊かにしなければいけないと。


少年は父親のことは好きでしたが、後を継ぎたくはありませんでした。


のんびり笛を吹いて、自由に生きたかったのです。


少年には勉強もできる優秀な弟がいます。


弟が後を継いでくれたらいいのに、と心の中では何度も思っていました。


今日の笛の音は、寂しげなものでした。


…………。


ピィ!


不意に笛の音とよく似た鳴き声が聞こえました。


「君はあの時の!」


見れば近くの枝に、あの時の助けた青い鳥がとまっていました。


ピィ!


青い鳥は嬉しそうに鳴いて、羽を広げます。


とても元気そうで、少年は嬉しくなりました。


1人と1羽は自然と歌い始めます。


少年の笛の音と、青い鳥の囀りが森に響き渡りました。


楽しげな音色は美しく重なり合い、青い空に溶け込んでいくようです。


笛の音と囀り、そして心が合わさり一つの歌になる…


少年と青い鳥は友達になりました。


…………。


「お父様、これ、プレゼントです」


少年は青い鳥にもらった綺麗な青い羽を父親にプレゼントしました。


友達になった青い鳥から新しく羽をもらったので、大好きな父親にも宝物を分けてあげたかったのです。


忙しそうにしていた少年の父親は、その青空のように綺麗な羽を見て、とてもとても驚いたようでした。


そしてどこでその青い羽を手に入れたのかを聞きます。


青い鳥と友達になったことは2人……1人と1羽の秘密です。


なので森でたまたま拾ったと言いました。


大好きな父親にウソをつくのは心が痛みましたが、新しくできた友達のことは内緒です。


…………。


父親は少年を抱きしめました。


少年は知りませんでしたが、青い鳥の羽はとても人気で貴重なものだったのです。


装飾品の材料としても高価で、加工すればとてもとても高く売れます。


何より少年が持って帰ってきたその青い羽。


青空を切り取ったように透き通った美しい羽は、ルリルルと呼ばれるとても、とてもとても珍しい鳥の物でした。


かつて王様に贈呈した商人が、一気に伯爵になった物語は有名です。


挿絵に描かれた精密な絵を少年の父親は覚えていたのです。


大好き父親に抱きしめられ、褒められた少年は大喜びです。


その日の晩、食卓には少年の大好物が並べられ、前から欲しかった楽譜を手に入れてくれる約束までしてくれました。


…………。


数日後、少年は青い鳥にお礼を言いました。


そして新しく覚えた曲を聴かせます。


青い鳥は楽しそうに曲に合わせて囀ります。


少年が喜んでいて青い鳥も嬉しい、そして青い鳥が喜んでくれて少年も嬉しい。


弾むように軽快で楽しげな調べが森に響き渡りました。


そして…


そんなに喜んでくれるならともう一枚。


青い鳥は少年に羽を渡し、少年はまた父親にプレゼントして。


そんな事が何度も繰り返されました。


それが悲劇の始まりとは知るよしもなく…。


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