20
なんかさ、おわん型のおっぱいって多くね、リアルのは違うんだけどさ、こう、なんていうか作られたおっぱいってみんなおわん型なんだよ。
俺はロケットがいい、ロケットがいいんだ。
もうこれ、あれだな、セクハラっていうか犯罪だな。
でもみんなおっぱい好きだろ、みんな好きなら俺も好きだよ。
仕方ねーよそれは、何歳になってもみんなおっぱいは好きだろ。
じぁあ中年の俺でもおっぱいは好きだよ。
これは仕方ねーよ。
「何もしておりません。ゴブリンに囚われていたところを助けたまでのこと。そちらこそ無礼ではありませんか? 助けた恩人に対してそのような態度、ヴィクトーリア家の家名に傷がつきますよ」
適当に言っている、偉そうな奴って大体こんな事言われるとプライド保とうとすると思う、思わない、そんなことないか。
「お前っなんだその喋り方」
「うるせぇな俺だって好きでこんな喋り方してるわけじゃねーよ」
「黙れ‼ 何を喋っている‼ 賊が‼」
やべっおっぱい触ったこと怒ってるかもしれない。
つうかやっぱ怒ってるよな、触っちまったもんな。
おっぱい触らせてもらった上に、蔑んだ目で見て貰えて、罵倒まで頂けるなんて、本当に女の子は最高だぜ。
「ジョダス様、今お助けいたします。もう少しの辛抱です」
「では取引といきましょうか」
「取引だと!?」
「ただで返すとでも?」
「この状況で良くそのようなたわけたことを‼ お前たちは完全に包囲されているんだ‼」
ジョダスが振り向いて小声で言ってきた。
「早めに、解放したほうがいいぞ、エメリアのフルネイビュラは第八位レベルの切断力を持っているんだ」
いや、何言ってんだコイツ。
「どういう状況かご理解いただけていないようですね。ジョダス様がどうなってもいいと? 私どもを殺すのは容易でしょう、しかし、ジョダス様も死ぬ事になりますが、それでも良いと……おっしゃるのですね?」
「くっ……卑怯者め‼」
「卑怯とは? 大勢でたった二人を寄ってたかって追います方が卑怯ではございませんか? こちらにいらっしゃるお方はマギサエルレイン様、先のリリアーヌ領当主リリアーヌ様より娘と同然とまで言われたお方でございます。卑怯とはどちらか!?」
「えっ?」
クトゥーナがキョトンとしている。
「それをどう証明すると!?」
「リリアーヌ様より授かった指輪をはめているのがその証拠」
「えっ」
だからお前、キョトンとするのやめろよ、笑っちゃうだろ。
「お前、マギサエルレインじゃなかったのか」
「お前、ちょっと黙ってろ」
「なんだとっ」
「いいから黙ってろよ。ややこしくなるだろ」
「ジョダス様……」
エメリアが困った顔をしてジョダスを見た。
俺はジョダスのケツを膝で小突く。
「言う通りにするよう言え、そうすりゃお互いハッピー、ご帰還ってわけだ」
「黙ってるのか喋るのかどっちなんだ!?」
「時と場合によるだろそんなもん」
「確かに……エッエメリア‼ 言う通りにするんだ‼」
「ジョダス様……わかった、言う通りにする。すぐにジョダス様を解放しろ‼」
交渉って言うのは同じテーブルに着かなきゃ行われない。
これでやっとテーブルに着いたって感じかな。
「では、こちらから交渉について提示いたします。まず第一に、貴方達に指輪奪還を依頼したのはどなたでしょうか?」
エメリアはジョダスを見、ジョダスが頷く。
つうか、別に悪い事してないならこれくらい話しても問題ない情報だろ。
「元リリアーヌ領、リリアーヌ様が三女、クヴァトラート家のラヴィニスタ、クヴァトラート様だ」
エメリアが答えたが、誰や……それ、マジで知らんのやが。
「そうですか、それで、貴方達は?」
「僕は、ヴィクトーリア公爵家が三男‼ ジョダスヴィクトーリアだ‼」
おっおう、急にどうした。
というかお前、公爵家の人間かよ、何処にでもいるな、公爵家の人間。
もっとこう、貴重な人間だと思ってたわ。
「お前公爵なの?」
「父親が公爵で、僕はその中から男爵の名を借り受けている」
なんなんだよ、公爵なのか男爵なのかはっきりしてくれよ。
リリアーヌってただの公爵だと思っていたけれど、大公爵なんじゃね。
グランドデュークって奴、そういう難しい話は学会でやってくれ。
新エネルギー貴族を発見したってな。
やべっ、耳の穴がかゆくなってきたわ。
「そうですか」
庶民の俺にはマジでどうでもいい話だわ。
対岸の火事、みたいな。
いや、対岸で火事があっても消防署に電話はするけど。
「では次の要求です。私は石鹸を要求します」
「なんだと……石鹸、だと?」
エメリアの眉間に皺が寄っている。
「そうです。石鹸です。石鹸と引換にジョダスを引き渡します」
「馬鹿にしているのか!?」
「僕との交換が石鹸てどういうことだ!?」
なんでキレんだよ。
「貴方達はまったくわかっていませんね。誰も一つとは言っていないでしょう。あるだけ出しなさい。それと交換です」
「貴様‼ 侮辱しているのか!?」
「とりあえず石鹸をあるだけ出しなさいな。ジョダス君がどうなってもいいと? 今すぐにでもお尻に穴が開きますよ」
「へぁ!?」
「ジョダス様!? ……くっわかった。石鹸をあるだけ持ってこい‼」
すぐに石鹸が持ってこられた、その数十個。
あっ、俺、こいつら好きだわ。
マジで石鹸だわ、助かる。
「さぁ‼ これでジョダス様を解放しろ‼」
「いいでしょう、石鹸をそこに置きなさい」
「ジョダス様が先だ‼」
「貴方に決定権は無いのですよ。それとも……」
「へぁ!?
なんでコイツ、ケツを膝で小突いただけで変な声だすの。
「ジョダス様‼ この‼ 卑怯者め‼」
エメリアが石鹸を置いて、離れる――ジョダスを盾に前に進み、クトゥーナに鞄を広げさせ、石鹸を拾わせる準備。
「兵を下がらせなさい」
「下がれ」
「しかし‼」
「下がれ‼」
兵士たちが俺たちを睨みながら下がっていく。
クトゥーナが石鹸を鞄に詰めていく。
「石鹸はこれで全部ですか?」
「これで全部だ‼」
「貴方は石鹸の重要性を理解していないようですね」
「なんだと!?」
「用を足したあと、何で手を洗うのです?」
「な……に?」
「水で洗っただけの手でご飯を食べる――と」
エメリアと周りの兵士の顔が引きつっていく。
「ここで大をするのはさぞ骨が折れるでしょうねぇ」
「貴様‼」
「一つは残してあげます。クトゥーナ」
「はい」
クトゥーナが石鹸を鞄に詰め、移動を開始、走って見えなくなったら、ジョダスを離す。
「テンタクルフラウ」
離して唱えた瞬間だった――ジョダスが伏せ。
「フルネイビュラ‼」
斬撃が俺を襲った。
それは色のある熱線だった。
抜刀された刀身、刃先は鞘を超えて伸び――赤い線、血のような赤とは違う、否、赤と勘違いするほどの青、冷たすぎるのを熱いと感じるような、俺の目の前に金属の盾が現れる。
アイアンウォール。
地面からズガンッと出現した金属製の無骨な壁――青い線が、その壁を、バターでも切り取るようにゆっくりと引き裂いていく。
瞬間はスローに、俺はのけ反っていた――あっつっ。
目の前を通り過ぎていく熱線の、空気を焼くじりじりとした音と熱気、予測された軌道――顔を傾ける。
頬に触れるほどに近く――頬の焼ける感覚。
「あっぶねっ」
いてぇ、頬が、削がれてやがる。
『大丈夫なのだ!?』
「アイアンウォールか」
『アイアンウォールじゃ防ぎきれないのだ‼』
目の前には赤く熱せられ、斜めに切り取られた金属壁。
「やべぇな」
今、俺の頭のねじが二、三本ぶっ飛んだ気がした。
リアルだ――リアル。
リアルな対人戦だ。
それも、魔術を使える者同士の。
削がれた壁の向こうでは、エメリアがジョダスを支え、仲間に引き渡しているのが見えた。
焼き切られた――実際に見ると、その光景はあまりにも鮮烈だった。
一体どんな温度だよ、やべぇ危険じゃん。
よくそんな技を使おうと思うなと素直に思ってしまう自分がいる。
マロが金属壁を作ってくれていなかったら、俺の首は胴とオサラバしていたかもしれない。顔を傾けていなかったら、鼻どころか顔の皮が切れていたかもしれない。
壁があったから到達する時間に余裕ができ反応できた。
想像した瞬間一気に集中力が増す――空気まで見えるんじゃないかと言うほど、俺の目は、視界の中のあらゆるものに集中していた。
同時に展開されたテンタクルフラウの触手も切断され、夫人もお怒りだよ。
「エレメンタルゾア」
こちらへ振り返ったエメリアの、敵対者を見る目、やる気だ。
おいおい、知らない技ばっかり使いやがって。
ネジが飛んだぞお前、俺今、お前、俺、今もう何しでかすかわかんねーぞお前。
初見で死ぬ可能性――そんなら研究必須だろ。
でもその役目っていつも俺なんだよ。
なんでって俺が脳筋だからだよ死ね。
なんでだよ、守男がやればいいだろ、守男がよぉ。
俺も見たいって守男が言うんだよ、はぁふざけんな、俺も見たいわ。
じゃあDKでいいだろDKやれよ。
ニャンコ、DK、ハルポン、三人が見ないと意味がねーって言うんだよ。
守男やっぱりお前もこっち側じゃねーか、何しれっとそっち行ってんだよ。
あなたは直接見るから見て覚えられるでしょってニャンコが言いやがるんだよ。
おめー(ニャンコが)がそれ言うなよ(それ言わないでよ)反論できねーだろ(ずるい)。
その癖、何分持つかで賭けを始めるんだよ。
だからよ、俺はタゲとったら仲間に突っ込むんだ。
ハルポンの焦る声、マジでおもしれんだ。
ニャンコのわかってたって少しあきれたように笑う声も。
それが、俺は(ぼくは)それが好きだったんだ。
エメリアの右手が炎に包まれていく――なんだその技は、熱くないのか、イカレテやがル。
「フルネイビュラ‼」
先ほどよりも早く、燃える手が霞むほどの抜刀――エメリアが動くタイミングを察してエメリアよりも早く俺は動いていた。
繰り出された熱線――もうわけわかんねぇと剣閃の如き青い線に触れぬようにギリギリまで伏せ、振り下ろされる線を横に避ける――。
振り返る背後で巨木に線が入り、フルネイビュラが何かわからねーが、熱線がやばい、やべーな。
「お前、おっぱい触ったことそんなに怒ってるのかよ‼」
「貴様ぁ‼ ふざけたことを‼」
消えた熱線と膨張した空気が起こす大気の波が風を起こす。
鞘に納められた刀身、エメリアの剣が再度鞘から引き抜かれる――お前、それは卑怯じゃん。
鞘から引き抜かれた剣――刀身の光が、青い発光をもって発せられる。
抜かれる瞬間を察して予測して避ける――エメリアの手元が変化し、ゆがみを帯びていた。
蛇のように蛇行しながら熱線が差し込まれる――どんな抜刀術だよ。
俺はその場で翻っていた――俺の上空を熱線が通り過ぎていく。
背面飛びなのか、ベリーロールなのか俺にもわかんねーよ。
ぐるりと回る視界と、食らったら死ぬという危機、脳細胞が一斉に活性化する感覚、神経回路がフルスロットル、目が状況を一瞬も見逃すまいとこれでもかと開いている。
回転の威力のまま、四つん這いで地面に降り立ち、手と足で苔を削って慣性を殺す。
背後の木がずるりとずれていくのを見て、木は何もしてねーだろ、この森を燃やす気かと感想も浮かんだ。
いや、苔をむしっている俺が言っていいセリフじゃねー。
だがてめぇ、木がなんかしたのかよ。
テリトリーで防げるか――ダメだ、テリトリーに意識を向けていられない。
俺、FPSでも殴りに行っちゃうタイプ。
「ダークネスクロース‼」
(カオス‼)
現れた一枚の真っ黒な布。
オーバーマインド――現れたのは一枚の真っ黒にたわむ布。
オーバーマインドは基本的に160%を意識してしまう。
「月のワルツ‼」
うまく動けるか――闇の布の背後に隠れ、熱線の放出と共に動く。
足に力を入れて、一歩、ターン、一歩、回って、一歩――ダンスを踊るように、残像を伴う動き、鞘に納められ、再び解き放たれようとする剣の柄を足の指で押さえ――。
きれずにバク宙、蹴る反動で剣閃をずらす。
反動の勢いを理解した時、バク宙できると――できたわ。
バク宙なんて、初めてした。
「なっ‼」
地面に降り立ち、地を這いながらエメリアの正面に――抜刀しようとする剣の柄を掌で押さえ抜刀を阻止、回転し、鞘が顔に、かわすと、回し蹴りが来る。
舌打ちしつつ、上半身をのけ反りかわしながら右前蹴り――回転のまま抜かれようとする剣の柄を足の裏で押さえる。
「くっ‼」
そのまま強引に抜刀しようとするのを体重をかけて防ぎ、押し出されて体が浮いた――やべっ、好機を逃すまいと、これは抜刀を防げない、
冥属性魔術ってよぉ、めちゃくちゃ使いづらいんだよ。
癖が強くてよぉ、でも年月が経つごとにさ、体に馴染んでいくような気がすんだよ。
俺はもう、この魔術を愛してると言っても過言だ。
愛してねぇ。
この魔術作った奴死ねって思う。
メタモルフォーゼモンキーマン――カオスがにやりと笑ったような気がした。
何の魔術って、透明なモンキーマンを纏う呪文だよ。
オーバーマインドで纏う部分が増すんだけど、今は腕だけでいいわ。
モンキーマンってなんだって馬だよ、馬。
ス――ッ避けられなかったら死ぬな。
抜刀され、腕に纏ったモンキーマンの透明な手を地面に押し当て指で地面をはじき、体勢をずらして回転し、足を引っ込めて下段から斜め上に振り抜かれた斬撃をかわし、次いで、そのまま上段より振り下ろされた斬撃を、回転しながら到達した地面に拳を振り下ろし足だけは地面から離さぬまま勢いを利用して回転し、かわす。
「なっ‼」
足首を押し出し前へ――剣が鞘に納められると同時に腕を掴んでいた。
手を手で掴む――。
「つっ……」
「おめぇよ、やっていい事と悪いことがあんだろ」
「この‼ 犯罪者め‼」
「おめぇ見ろよ、なんでおめぇの勝手で切り倒されないといけないんだよ‼ なぁ‼ てめぇ‼ なんで木を倒したんだよ‼ 何にもしてねーだろ‼ ふざけんな‼ あれかよ腕試しでポンポン木を倒しやがる奴かよ‼ はぁ? お前、マジでふざけんなよ‼」
手を透明なモンキーマンの強靭な手で掴み、エメリアの目が、寸前にあり、お互い力を込めて体が小刻みに震えていた。
熱線で切り倒された巨木の煙と、焦げ臭さ。
「こいつが、こんだけ成長するのにどんだけ時間かけっかわかってんのかよ‼ おめぇ、通りがかりに腕切られたらどう思うんだよ‼」
いや、俺もどんだけ時間かかるのかわかんねーわ。
「何を言っているんだお前……狂ってる」
まぁ控え目に言って狂っている。
腕を押さえたまま前に乗り出し、体を密着させる――鎧のゴツゴツとした感覚、腕や足は鎧を纏っているが、胴や股間は軽装、しかし編み込まれた金属であることに変わりはない。
エメリアの唇が寸前にあり、向きだされた歯が力を緩めまいと強く噛まれている様子に、息がお互いを行きかう。
そこにいるのは威嚇する一匹の獣――。
褐色の肌、猫のような目、癖のある髪、長い八重歯、柔軟でしなやかな体、匂い、女の匂い。
まるで逆鱗に触れられた竜のようだ。
今、下腹に下腹を押し付けられたラ、さぞ気持ち良いだろうな。
そんな気持ち悪い感想を浮かべて口がにやけているのがわかる。
「ライトニングス「タッチ‼」ト」
ライトニングストレートに反応して蹴りで女から離れ、サンダータッチで受け止め、勢いのまま、吹き飛ばされる。
雷が掌を痺れさせ、これが直撃したらのたうち回るだろうなと何とはなしにそう思った。
放たれた方にはジョダスという名の男、緊張しているのか、興奮しているのか、焦ったような顔と、前面に突き出された手は震えていた。
いってぇな。
稲妻を受け止めた左手が痛い――モンキーマンは雷を弾いてくれない。
急に思考が冴えることがある――吹き飛ばされた勢いのまま、テリトリーの上を滑っていた。
飛ばされた勢いが、そのまま滑走力へ変わる。
足の指がテリトリーの上に触れ、そのまま滑っていく。
滑れることを理解した。
「フルネイビュラ‼」
無数の剣閃が飛び交い、テリトリーの形を変えてコースを作り、一回転――そのまま去る。
「待て‼」
だから待てと言われて、誰が待つかよ。
クトゥーナが逃げたと推測する方向へ――と思ったが、木の影からずっと様子を見ていたのか、クトゥーナが隣に並んで駆けてくる。
「クトゥーナ」
俺は手を広げた――荷物を受け取るためだ。
滑っている俺の方が早い、その方がクトゥーナも気兼ねなく走れるだろう。
クトゥーナの顔がぱっと明るい表情になり、飛んでくる。
俺はクトゥーナを避けて荷物だけを取った。
通りすぎていくクトゥーナのえって顔が妙に印象的で思わず吹きそうになってしまった。
「うぅぅううう‼」
滑りながら背後を振り返ると、クトゥーナが泣きべそをかきながら走っていた。
ごめん、わーざーと。
頑張れ頑張れ。
途中で北へ方向を変え、西に方向を変え、何度か方向を西、北と方向を変え――なりふり構わずに移動し続けた。
滑っていて楽しいのは障害物をある程度無視できること、空気の摩擦があるからある程度の動力は必要だという事。
動物や魔物を飛び越えて移動できている。
途中でどうしても避けられない時は、クトゥーナの手を掴んで持ち上げ、魔物を避ける。
やっぱ戦うのは得意じゃない――こうして逃げていると気が楽。
俺は戦うのに、向いていないのだろうなと素直に思うよ。
穏便に済ませようとするあまり、他人に譲歩しすぎないようにしないとと、なんとなくそうも思った。
何度かクトゥーナを気遣うが、クトゥーナの持久力がおかしい、負荷をかけているはずなのに、化け物じみた体力を持っている。
十分に移動したら、今日は休むことにした。
世代が変わるごとに、昼間活動する魔物が増える。
体は疲れていないが、心はだいぶ疲弊していた――吹っ飛んだ頭のネジを締め直し、今さらながら自らの真っ黒な心臓と、テラテラと青い薄っすらとした線が皮膚表面の鱗の跡にそって流れているを見て、心が冷めていくのを感じた。
興奮すると出てくるみたいだ。