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∞ガールズ!  作者: 百合宮 伯爵
第2話 ∞×∞
9/27

2

 風に若葉薫る、5月の午後。

 昼休み、百合葉ゆりははクラスメートの留学生、ヴァイオレットに声を掛けられる。


「放課後に、お茶会?」


「ええ、私の家で。お茶が好きな方をお誘いして、何度か開いてるんです。百合葉も、どうですか?」


 1年3組の教室内。ヴァイオレットの机を、お茶会の参加メンバーらしい子たちが囲んでる。

 何だか、優雅な顔ぶれだ。

 そのうちの一人、ふわふわお姉さんの白石しらいしゆい、にこっと微笑んで、


「ふふ、お菓子も焼いていくわよ。期待してくれて、いいんだから」


 結の趣味は、お菓子作り。百合葉もクッキーとか、もらったことが有って……なにぶん昼休みだし、お腹が鳴ってしまう。


「それは、惹かれるわね……」


 食欲で釣られそうな百合葉だけど、ヴァイオレットが一応、補足する。


「お食事だけってわけでは、ないですけどね。ほら、中間テストも近いでしょう? お勉強会も兼ねて、どうかなって」


「中間、テスト……!?」


 忘れてたわけじゃない。忘れてたわけじゃないけど。

 意識的に、現実から目を逸らしていた百合葉……打ちのめされる。

 アイドル活動のため、特待生として菊花寮に入ってる以上、百合葉としてもプライドがある。


(勉強……そうよね。やらなくちゃね。アイドルだからって、成績悪いの仕方ないとか思われたら、悔しいし!)


  勉強会を兼ねてのお茶会。行く方に、かなり気持ちが傾いている百合葉へ、


「あ、あのっ。他のクラスから来る子もいるんです。美滝みたきさんが参加してくれたら、きっと、皆盛り上がるかなって……」


 勇気を出して、お誘いしてくれる……そんな印象の彼女は、川蝉かわせみ弥斗みと

 普段から物静かで……正直、百合葉には苦手意識があるのか、避けられてると思っていたので、


川蝉かわせみさん……。百合葉、嬉しい……♪」


 感激して、ハグしてみた。


「うん、行く! 行くよ私! 弥斗みとちーと親睦深める! 深めよう!」


「み、みとちー?」


 変なあだ名を付けられて、アイドルゆりりん流の距離感に、弥斗さん困惑。

 ただ、後に語ったところによると、百合葉からは、とても良い匂いがしたとか。

 それはもちろん、天寿の人気商品、花の薫りのシャンプーを使っているからである。

 高校生には少しお高めに見える価格だけど、今なら、何と! 詰め替えパックが20%増量中で、大変お買い得。

 こちらをご使用いただければ、おじさんおばさんも、誰もがアイドルの薫りになれます(感じ方には個人差が有ります)。


「あ、でも……」


 百合葉思い出す。今日の放課後は、都合が悪い。


「午後から、『VS疾風(はやて)』の収録有るんだった……」


「「「VS疾風(はやて)の!?」」」


 普段大人しめなヴァイオレットたちが、急に色めき立つ。

 無理もない。「VS疾風(はやて)」といえば、星花でもほとんどの生徒がチェックしている人気番組だ。

 結成20周年を迎える、男性5人組の国民的アイドル、「疾風はやて」。

 その疾風と、毎回ゲストチームが様々なゲームで対戦する、木曜夜7時のバラエティ番組なのだ。


「さ、櫻木さくらぎくんのサインとか! もらえるんでしょうか!?」


「ふふ、私はリーダーの中野くんがいいわー」


松純マツジュン……!」


 口々に推しを挙げるクラスメートたちに、百合葉もタジタジ。


「ごめんね? さすがに疾風はやての皆さんは、私も畏れ多いっていうか。サインはもらえないかな」


 露骨にがっかりする皆へ、


「あ、でも! 今日も、元野球の下村しもむら義紀よしのりさんと、共演するんだよ! 下村さんのサインなら、もらってこれるかも!」


「えっと、それは別にいいかな……」


「なぜだ」




 

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