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∞ガールズ!  作者: 百合宮 伯爵
第3話 ∞ガールズ!
20/27

2

「アイ! カツ!! アイ! カツ!!」


 ライブに向けてダンスのレッスン……。

 「mizerikorudeミゼリコルデ」の美緒奈みおな詩織しおりが練習部屋に入ると、百合葉が腹筋していた。


「……何してんの、ゆりりん?」


 レッスン前からキラキラ煌めく汗を零す、百合葉。


「筋トレは! 全てを! 解決して! くれますので!」


 いつも通りの……いや、いつも以上に、無闇にハイテンションな姿。

 美緒奈と詩織は顔を見合わせるけど。

 続いて部屋に入ってきた、マネージャーの日向ひなたさんは、違和感に気付いた。


「どうしたの。……その腕の、絆創膏ばんそうこう


 事情を知る日向さんの、口調は鋭い。


「百合葉、貴女……また、見たのね。彼女の夢を」


「や、やだなぁ。これはその、ちょっと外で、引っ掻いちゃっただけだってば」


 亜麻色の長い髪を弄りながら、百合葉は目を泳がせるけれど。


「何年、貴女のマネージャーをやってると思ってるの。百合葉、自分で気付いてないでしょ。嘘を吐くとき、左の髪を弄る癖」


「嘘っ!? 私、そんな癖有った!?」


 びっくりする百合葉……でも、日向さんが勝ち誇るみたいにニコっとするので、嵌められたのに気付いた。


「ええ、嘘よ。お間抜けさんは見つかったけどね」


「うぐ。日向さんの、いじわる……」


 「mizerikorudeミゼリコルデ」結成前からの付き合いの2人の会話に、取り残される美緒奈と詩織。

 彼女たちへ、先にレッスンを始めるよう伝えて、日向さんは、百合葉へ向き直った。


「……少し、お話、しましょうか」


 ※ ※ ※


 その後、3人でのレッスンになっても、今日の百合葉はいまいち冴えない。

 本業は声優で、まだまだ新人な他の2人に比べても、動きにキレが無い……特に、運動音痴な美緒奈よりダメダメなのは、さすがに周囲を不安にさせた。


「やばいって、ゆりりん!? みおにゃより下手とか、致命傷だよ!?」


「ちょっと、しおりん? それ、どーゆう意味さ」


 美緒奈が睨んでくるのは置いといて。詩織が、こそっと聞いてくる。


「なんか、元気なくない? 早乙女さんの新作BL本、読む?」


「読みますとも♡ ……それはそれとして」


 ほんとに、何でもないの……と強がる百合葉。

 我ながら、まだまだ未熟だ。さっきも、日向さんに励ましてもらったのに。

 私はアイドル。いつだって笑顔の、元気200%が魅力のアイドル。……そう振舞わなくちゃって、決めたはず。


 それでも、膝にうまく力が入らなくて。おかしいな、と思っていると。

 美緒奈が腰に手を当てて、ふんぞり返った。


「……ま、美緒奈様の足さえ引っ張らなきゃ、何でもいいけどね。そのざまじゃ、あたしの引き立て役だぜ?」


 ……3人の中で断然身長の低い美緒奈なので、見下す形にならないのは、ご愛敬。


「ちょ、みおにゃ。言い方……」


 詩織がたしなめるのも聞かず、美緒奈は続ける。


「……あたしさ、自分が宇宙一可愛いってのは知ってるけど。でも、ゆりりんには、憧れるんだよね」


 照れ照れしながら、八重歯を覗かせて。


「スタイルいいし。明るくて、カッコいいし。……あいつに名前似てるし。ま、まあ、ほら? このプリティー美緒奈様のライバル張れんのは、あんたぐらいかなって、思うわけよ!」


 だから。だから、ライバルが元気無いと、調子狂う。

 そんな、下手くそな励ましを送ってきた。


(ああ、これだ。私があの時、こんな風にできていれば……)


 ……()()とも、こんな関係を築けていたら。それはもう、叶わぬ願いだけど。

 今は美緒奈へ、ハグ。


「にゃ、何すんのさー!? あたし、今は百合メイドじゃねーし。お触りは有料だかんなー!?」


「……ライバルって、良いですよね。先輩」


 本音をぶつけあえる人。憧れも、嫉妬も、ぐちゃぐちゃな感情のまま、受け止めて。

 そんなライバルに、なれていたら。違う今が、有っただろうか。


(そんな風に思えるのも、私が、生きてるからだよね。だから、ごめんなさい。ごめんなさい、お姉さん。……結野、あきらさん)

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