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∞ガールズ!  作者: 百合宮 伯爵
第1話 星くずの出会い
2/27

美滝百合葉 ~入学~

 アイドル、美滝みたき百合葉ゆりはの仕事は、多岐に渡る。

 メインは歌手。元々子役だったので、女優や、最近は声優など、演技の仕事もこなす。

 そして、亜麻色の髪に、小柄ながら、すらりと均整の取れたプロポーションゆえに、モデルの仕事も。


 星花女子学園に誘われたのも、学園の理事長が社長を務める企業、「天寿」のCMに出演したのがきっかけ。

 天寿は化粧品や服飾、食品などの事業を手掛ける複合企業コングロマリットで、どうやら百合葉は、社長に気に入られたみたい。


「特待生だなんて……責任重大ね!」


 4月初めの朝。寮の個室で荷解にほどきした後で、百合葉は気合を入れ直す。

 彼女に用意されたのは「菊花寮」。

 2つある学生寮のうち、成績優秀な生徒が入れる、全室個室の寮。

 アイドル活動しやすいようにと、これも理事長が便宜を図ってくれたのだろう。


 特別扱い。ある意味プレッシャー……なんて、そんな重荷に感じるメンタルの、百合葉ではない。


「教科書よし、ノートよし。うん、準備OK!」


 勉強もがんばる気満々だ。体力が有ればなんとかなる!

 ……入学式の日は、グラビア撮影の仕事と重なって、出席できなかったけど。

 初登校の今日から、さっそくアクセル全開で飛ばしていきたい。


「まずは挨拶が大事よね。あー、あー、あー、あめんぼ赤いなあいうえお」


 アイドルとして、ボイストレーニングは日課だけど……いつも以上に気合を入れる。


「根性、根性、ど根性! ガッツがあればなんでも出来る! 気合は全てを解決してくれる!!」


 ……ボイストレーニング? 内容がちょっとおかしいけど、とりあえず、声はすごく出てる。

 「マイク殺し(ブレイカー)」だの、ミニライブ中にちょうど地震が起きた逸話から「声で地震を起こしたやべーやつ」だのの異名を持つ、美滝百合葉。

 細身の身体に似合わぬ声量が、自慢の一つだ。


「あ、あの、美滝さん。寮では、もうちょっと静かに……」


 当然、怒られた。


「ご、ごめんなさいぃぃぃぃ!?」


 そして、謝る声も寮を震わすほど、大きいのだった。


 ※ ※ ※


「初めまして! 美滝みたき百合葉ゆりは、アイドルやってます! お仕事で学校来られない日もあるけど、勉強も、学校行事もがんばりたいので。仲良くしてくれると、嬉しいです!」


 朝のHRホームルーム。高等部、1年3組の教室は、夏のひまわり畑のような華やぎに包まれた。

 声量もさることながら、さすがの存在感……百合葉の全身からは、自信の輝きというか、生命力バイタリティの煌めきというか……とにかく黄金色のアイドルオーラがほとばしっている。

 注目を集めるのは慣れている……むしろ日常なので、クラスメートの好奇の視線には動じず、百合葉は、教室中を観察する。


(ふふん。皆、『思ったよりとっつき易そう』って顔ね)


 百合葉が所属するアイドルグループ「mizerikorudeミゼリコルデ」は、「クールでスタイリッシュ」を売りにしてるので……気持ち、高飛車お嬢さまキャラを意識して、演じているけれど。

 今日は笑顔200%、人懐っこい印象を与えるよう、心掛けてみた。

 元々、こちらの方が素に近いけど。身近な人からは「体力バカ」なんて言われる百合葉も、そこはアイドル。最低限の計算はしてるのだ。


 今のところ、計算通り。HRが終わって、授業が始まるまでの間……さっそくクラスの皆の方から、話しかけてきてくれた。


「わぁ、ゆりりん、顔ちっちゃい! テレビで見るより可愛いかも♡」


「髪、さらさらだねー♪ ねえねえ、何のシャンプー使ってるの?」


「うん。天寿が試供品でくれたんだけど、使ってみたら、すっごく良くて。ダメージケアにもバッチリなんだよ。皆も使ってみて?」


 ちゃっかり自分がCMしてる商品の宣伝も挟みつつ。

 百合葉は、もうひとつの観察を継続する。

 それは、


(このクラスにいるかな? 先輩たちの、知ってる子)


 「mizerikorudeミゼリコルデ」のメンバー、南原みなはら美緒奈みおなと、水志摩みずしま詩織しおり。2人とも、それぞれ知り合いが、この星花女子に通ってるのだとか。


(確か、美緒奈先輩が言うには……)


『星花って、リズねえエヴァちゃんの学校じゃん。挨拶しといてね。金髪で、留学生で……まあ、目立つし、すぐ分かるっしょ』


 ……いた。目が合った。

 話し掛けてくる女子の輪から、一瞬解放された隙に、席を立って。

 百合葉は、金髪留学生の手をぎゅっと握り、にこっと、


「美緒奈先輩から聞いて、会いたかったの。今日からよろしくね。……エヴァンジェリンさん♪」


「……あの。人違いです。私、ヴァイオレット・U・ウェールズっていいます……」


「……」


(そういえば。写真とか見せてもらってなかったー!?)


 めっちゃ恥ずい。美緒奈はなぜか顔を赤らめ、「いやー、エヴァちゃんと撮った写真はさ……やべーのしか無くて」なんて言ってたけど。考えてみれば、顔も知らなかった。

 星花は大きな学園だし、留学生も1人や2人じゃない……。


 けど。これでめげないポジティブシンキング。それが美滝百合葉!

 ぎゅっと手は握りしめたまま、


「まあ、これもきっと運命よね! 友達になろう、ヴァイオレットさん♪」


 背景に花を咲かせたり、天使の羽根を舞わせるのは、アイドルの基本技能。

 最高の笑顔スマイルを向けてみると、金髪留学生、ヴァイオレットは、少し戸惑いながらも、


「ええ、私でよければ」


 なんて、微笑み返してくれた。


「やったぁ! 友達、第1号ね♪ わ、柔らか!?」


 そのままハグしてみたりすると、ヴァイオレットも顔を赤くして、


「あ、あの! ちょっと、恥ずかしい、です……」


 そんな、天然物の陽キャ全開な百合葉の姿に、クラスメートはそれぞれの反応。


「ふぅん。不思議ちゃんとは違うけど、観察し甲斐はありそう」


 個性の強い人を観察するのが趣味の、日比川ひびかわ緋叶ひかな


「あらあら。お菓子、喜んで食べてくれそうね~」


 お菓子作りが趣味の、ふわふわ女の子、白石(ゆい)


 一方で、もちろん、


「うう、グイグイ来る人って、ちょっと怖いです。話し掛けられたら、どうしよう……?」


 控えめな三つ編み少女、川蝉かわせみ弥斗みとのように、百合葉を苦手に思う子も。


「はは、嘘を真に受けるタイプだよな、あの子」


 フェンシング部の1年生エースで嘘吐き少女の、嘘葺うそぶき涼子りょうこも、百合葉のようなタイプは、からかいにくい様子。


 結論としては、好感を抱く人も、苦手に思う人も、百合葉への印象は同じ。


「ふふ。すごく、素直な子なのは確かだよね」


 車椅子の癖っ毛少女、黒井みゆきの苦笑に、うんうんと頷きながら、猫好きのマイペース娘、猫山美月(みづき)がつぶやく。


「ネコ科にたとえると……ライオンじゃないし、虎でもジャガーでもないし……ヨーロッパオオヤマネコ?」



 個性派ぞろいの1年3組でも、百合葉は……強い印象を与えることには、成功したようだった。


 さて、


「あ、あの。そろそろ、離してくださぃぃ……」


 羞じらうヴァイオレットの頭に頬擦りしたまま、百合葉は考える。


(……もう一人の、詩織先輩の知り合いって子は、いないみたいね。このクラスには)


 そちらは、ちゃんと写真も見ている。


柳橋やなぎはし美綺みきさん。会いたいな。すっごく、綺麗な人……)



 本作は、様々な百合小説の書き手さんたちが、キャラクターを出し合い、カップリングを決めて物語を綴る「星花女子プロジェクト」の第7弾シリーズのひとつです。

 今回登場したクラスメートたちも、それぞれの作品の主人公。

 彼女たちの活躍が気になる方は、「星花女子」で検索、検索! してみてください。

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